表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
38/61

第38話 4人の会長

無事中央都市に向かったお嬢たち。

何もないことを祈る迅だが、なにやら不穏な動きがある様子…


「統合新人戦の会場はこちらになりまーす」


案内人さんが入り口で大きな声をあげる。

観客の方々はその声に引っ張られるように流れ込んでいく。


「…いよいよね」


私、公家院 華はこの大会に出るために来た。

公家院家としての誇りを持って。

バスの乗っているときは緊張を紛らせていたけど、いざ本番を前にすると緊張する。

隣にいるかのんちゃんもとっても緊張している様子だった。


「大丈夫ですよ~。始まってすぐ試合とかじゃないですから~」


佐々木先生は私たちを案じてか、優しい言葉をかけてくれる。


「はい、リラックスできるように頑張ります」


「緊張をほぐすために頑張るのは筋違いかと」


後方から的場先生の刺さる言葉をいただく。


「…善処します」


「まあ、あなたはほどほどに頑張ってください。ここはレオナルド君と美登君が頑張ってくれますから」


…主席と次席で充分ってわけね。

まあ、仕方ないことだけど。


「まあまあそう言わずに~」


佐々木先生が間に割って入ってくれる。


「気にすることなんてありませんよ~。彼はあれが通常運転ですから~」


「ありがとうございます。佐々木先生」


「いえいえ~。では、参加者の我々は別の入り口から行きますか~」


そういって先頭を切って誘導し始める。


私達はそれについて行くのであった。










「…広い」


ここ、中央都市で開催される会場は学内の時と違い、桁外れの大きさで行われる。


「広いだけですよ~」


「…その広いのが問題なんですよ…」


かのんちゃんは怯えるように返す。


「早く席につけ。もうすぐ開会式が始まる」


的場先生の声に反応する様に生徒は椅子に座り始める。

ふと、他の席が目に入る。

そこには見覚えのある水髪の短髪少女の姿が。


「…波流渦」


視界の向こうにはサンジュ学園の生徒が席に座っている。

他の所にも老游院・マリウス学院と出場者が揃っている。


「…華」


「おや、お嬢様。公家院様がいらっしゃったのですか?」


「ええ、まあね」


「もっと喜べばいいのに」


風間が隣でボソッと呟く。


「そう簡単なものではないんだ」


「なんであんたが答えるんだよ」


風間はげんなりした様子。


「いいのよ、どうせ今日か明日に顔を合わせるでしょう」


「お嬢様がそれでよろしいのなら」


レイリーはこれ以上何も言わない。


「はいはい主従関係美しいことですね」


とっくに興味を失い、適当に返事をする風間だった。


「公家院さんちょっといいかい?」


突然の声かけに戸惑う私。


「どうしたの?レオナルドさん」


「この大会、君の護衛くんは出ないんだよね?」


「迅…?ええ、出ないわよ。前から分かってたことじゃない」


「そうか…。いや、すまない」


そう言って話を終えるレオナルドさん。


「…どうしたのかな?レオナルドくん」


かのんも気になる様子。


「少しでも戦力は欲しいんじゃないかな?」


そんな中、横から声をかけるのは美登さんだった。


「迅を…戦力として見てくれているの?」


「決勝戦であれだけの激闘をすればね。俺も負けてるし」


「そうなんだ…」


なんだかとっても嬉しい気分。

迅が評価されてるなんて夢にも思わなかった。


「てっきり的場先生みたいな感じだと思っていたわ」


「…わ、私もです」


「いや、アイツはあの決勝戦から違う雰囲気を感じるんだ。それが何か分からないけど、きっといいことなんだと思う」


「そうあってほしいわね」


「…悪い意見に流されないでほしいですね」


かのんちゃんが言うことはごもっともだ。


「あ、いよいよ始まりますよ~」


佐々木先生をきっかけに会場がざわつき始める。

そして、今回の大会を指揮してくれる男性が声をあげる。


「さぁー皆さん!現在の時刻、12時を回りましたところ!これより、統合新人戦の開幕とさせていただきます!」



ヒュー…ドォォォン。



大きな花火が上がり、開会式が幕を開ける。

とうとう…始まるのね。

見ていてね迅。

私、頑張るから。


「まず、今大会の指揮を任されることになりました自分の自己紹介から!防衛軍のオペレーターを務めております念動 勝と申します。よろしくお願いします!」


防衛軍!

前線に敵と戦うために設立された組織。

圧倒的な戦力で中央都市を始めとした本土を守ってくれる人たち。

前線を希望する学生にとって、手の届かない主力の一員が目の前にいる。


「毎年防衛軍の方々は大変ですね~」


佐々木先生は独り言のように呟く。


「…去年は誰が指揮をされたんですか?」


「去年は~」


佐々木先生が発言する前に的場先生が遮る。


「ジャックス・ダニエルだ」


「…その方って、防衛軍近衛隊の人ですよね?」


かのんちゃんが的場先生に疑問系で返す。

それを佐々木先生が答える。


「そうですよ~。的場先生の教え子です~」


「先生はそんなすごい方を教えていたんですね」


「彼は優秀だった。当然のことだ」


いつもどーりの回答を話すけど少し誇らしそうな的場先生。


「ジャックスくんは的場先生のお気に入りですもんね~」


「教え子に優劣をつけた覚えはない」


「そういうことにしておきます~」


私達が会話をしている中、念動さんの司会は進行している。

いつの間にか大会理事長などの挨拶は済んでいる様子だった。


「それでは、さっそく今大会のルールを発表いたします!今回の大会に備えまして各生徒には選抜選手メンバー3人、控え選手2人を選んでいただきました!このメンバー選考に伴ってのルールはこちらになります!」


司会者の頭上にある大きな掲示板に概要が記される。


『3対3のガチンコバトル!


ルールは簡単、先鋒・中堅・大将の3人を決めてもらい、タイマンでの真剣勝負


会場はタイル一面30M×30M

勝敗は会場からの場外や自己申告による降参

殺傷などの行為は反則負け


※戦う選手は試合開始直前決めてもらって可

※また試合直前に控えとの選手交代も可』


「以下の内容がルールとなります!今回のコンセプトとして、次世代の戦力の増加・育成を理念に掲げておりますのでご了承ください!生徒の皆様のご健闘を!」


「ガチンコ…」


「…バトル」


私とかのんちゃんは顔を見合わせる。

続けてレオナルドさんと美登さんが発言する。


「意外とシンプルなものになりましたね」


「ちなみに去年は…?」


「去年は建物や障害物ありでの旗取り合戦でしたね~」


「自分の戦う地形を理解し、戦闘を行わないという選択も1つの戦略だ。より多くの情報を得たほうが地の利を得るいい試合だったな」


的場先生は語ってくれる。


「前回は速水くんが出場してましたね~」


「今井先輩や本城先輩は出てなかったんですか?」


「…あ、あと戸坂先輩も」


私とかのんちゃんは先生に問う。


「戸坂くんは出ましたね~。彼の魔法は()()()()()において本領発揮すると言ってもおかしくはないですからね~」


「それじゃあ前者の2人は出ていないのですね?」


美登さんが言及されない2人について話す。


「…彼らは実力不足だ」


「本城くんはそう言われても致し方ないところがありましたが~。今井くんは違うでしょ~」


「じゃあ、今井先輩は…?」


「彼はそもそも辞退ですね~。ちょうど時期も被ってましたし~」


…時期?

なんのことだろう?


「まあ前回は戦略も何もかもを粉砕した化け物がいたわけだが」


「…ロイド・テリオス」


レオナルドさんの言葉には殺気ともとれる圧を感じる。

やっぱり、テリオスってことは…そうゆうことなんだろうか。


「私怨はよくないぞ、レオナルド1年生」


「…決してそうゆうわけ…いえ、すみません」


「彼は規格外ですね~参考になりません~」


「そんなにすごいんだ…」


改めて、前回優勝立役者の実力を思い知る私。


「さぁ、ルールの説明はこのくらいにして、さっそく試合を始めていきたいと…思いますが!ここで余興のお知らせです!」


余興…?


「では、皆さん!ご登場ください!」


念動さんの声かけに会場の視線は指を差した方向を見る。

その方向から4人の人物が入場してくる。


「…えっ?あれって…?」


かのんちゃんが驚くのも無理はない。

なんと4人の中にはビートレイ会長がいたのだ。


「イリーナル学園長は他の学園長さんと上にいたことは知ってたけど…」


「確かに会長の姿はどこにもなかったな」


私と美登さんもびっくりしている。

先生方は知ってた様子であまり驚いていない。


「…各生徒会長同士での試合」


「これが余興ですね~」


「…壮大すぎませんかね?」


「こんなもんですよ~」


「さあさあ、ここに現れたのは各出場校の現生徒会長さん達です!彼らにはこれから試合をしてもらいます!」



うぉぉぉぉぉぉぉ。



観客達は大盛り上がりだ。


「まずは1人目!前回優勝校の聖マリウス学院生徒会長!モルドレッド・ギャング選手!」


あの人、大樹さんより体格がいい。

とても剣を振るう人には見えないけれど…あの背中にあるのは紛れもなく剣。

マリウスは剣士がほとんどだから、やっぱりあの人も剣士なのよね…?


「お次は2人目!イリーナル学園生徒会長!アルサッド・ビートレイ選手!」


我らがトップ、ビートレイ会長だ。

その大きな大剣は実に迫力がある。

なんでもあの大剣は人工魔装なんだとか。


「さらにサンジュ学園の生徒会長!剛毛 茂野(ごうけ しげの)選手!」

サンジュ…。

波流渦のいる学園の生徒会長さん。

あそこは実力主義の学園。

そこで会長をしているのなら、その力は言うまでもない。

猛々しい黄土色の長髪に目がいってしまう。


「さらに最後は…ん?すみません少々変更があるみたいです。えーと何々?えっまじ!?」


イヤホンからの内容に念動さんが戸惑った様子で言葉を返している。


「なにかあったのかしら?」


「…そういえば老游院の参加者さんも少しざわついていますね」


ふと老游院側の席を見ると確かに落ち着きのない様子が目に見える。


「えーっと、老游院の選手なのですが、現生徒会長が諸事情で出れないとのことです。そのための代役として老游院統括理事長が参加となります」


…え?今なんて言ったの?

生徒会長が出れないから、その代わりに統括理事長?

イリーナル学園でいうと、学園長が代理で出るってこと?

そんなのありなの?


「と、いうことで不本意ながら僕が参戦することになった。よろしく」


何事もなかったかのように挨拶をする統括理事長さん。


「ん~、何考えているんですかね~」


「さあな」


先生方もその本質を理解するまでは難しいみたい。


「き、気を取り直して!以上4名で親善試合を行ってもらいます!よろしくお願いします!」


「かの有名な李一族が参戦とは驚いた」


聖マリウス学院の生徒会長、モルドレッド会長は統括理事に話しかける。


「そうか、驚かせて済まない。…で、君が僕の相手してくれるの?」


「それもいいかもしれんのう」


双方やる気満々だ。


「では、僕のお相手は茂野君になるのかな?」


ビートレイ会長はサンジュ学園の剛毛会長に声をかける。


「ほどほどに頑張りますか」


「えーそれでは各対戦相手も決まったところで!各自ステージへ移動してください!」


「僕達は隣のステージへ移動しますか」


「そうしましょうかね」


そう言ってビートレイ会長と剛毛会長は隣のステージへ移動していく。


「強者の戦い方っていうをよく見ておいてくださいね~」


「「はい」」


佐々木先生の言葉にレオナルドさんと美登さんは強く返事をする。





いよいよ始まった統合新人戦。

本選の前に会長同士(1名を除く)親善試合が行われる。

この試合もとても貴重な経験になると思う。

きっと今の私に足りないものが見えてくるはず。

いや、見つけて見せる!

始まりました統合新人戦!

まずは親善試合ですね(´・ω・`)

まさか老游院は長が試合に出るとは…

何を考えているのかわかりませんね(・・?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ