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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
36/61

第36話 4校

的場先生の思惑が錯綜する一方、

それを阻止しようとする佐々木先生。

学園内での一致団結は難しいか…

その頃、他学園も行動に移している状況だった。


ーサンジュ学園サイドー


「レイリー。どこにいるの?」


ここは西の代表、サンジュ学園内。

声の主は水色の短髪少女、水炎寺 派流渦。

従者であるレイリーを探している様子だ。


「はっ、ここに」


白髪の青年、レイリーは主の声に反応し頭を下げる。


「そこにいたのね。学園の掲示板を見た?」


「もちろん、拝見いたしました」


「私も貴方もメンバーに選ばれていたわよ」


「さようですか。お嬢様の実力なら、当然かと」


「あっちはどうだったかしらね?」


「あっち、とは公家院家のご令嬢のことですか?」


「それと黒崎君もね」


「…あいつは知りません」


「いつまで毛嫌いしてるのよ」


「そんなことはありません」


「意固地なんだから」


「あれ?2人ともなにしてんの?」


そんな2人の会話に入ってきたのは、頭にバンダナを巻いた青年、風間 風助だ。


「あら、風間君じゃない」


「…何の用だ?」


「用も何も通りかかっただけでそんな邪険にしないでも良くね?」


「そうよレイリー。ごめんね、今機嫌が悪いみたいなの」


「それっていつもじゃね?」


「それもそうね」


「せっかくメンバーに選ばれたのに、なーんでそんななんかねえ」


「別に私は」


レイリーの話を覆いかぶせるように、


「どーせ、お嬢様が迅達のことでも話してたからでしょ」


風間はため息をつきながら答える。


「よく分かったわね。それも風を見て分かったのかしら?」


「そんなの見なくても分かるよ」


「…」


レイリーは黙ったまま、風間を見る。


「嫉妬はほどほどにね」


「し、嫉妬など…」


完全に否定することができずにいるレイリー。


「メンバーと言えば、貴方も名前が挙がっていたわね」


「光栄なことにね」


「…お前に務まるのか?」


「それは時の運に任せますよ~」


「なんでこんな奴が選ばれるんだ」


「我がサンジュは実力主義よ。ということは、そうゆうことなんでしょ」


「そうゆうことなんでしょ」


水炎寺の真似をするように繰り返す風間。


「…足を引っ張るなよ」


「善処しますよ、従者さん」


「試合が楽しみね」


「ニコニコしちゃって」


「世間にお嬢様の実力をお見せしましょう」


サンジュ学園は順当に水炎寺・レイリー・風間が選抜に選ばれる。

補欠メンバーはいまだ不明だが、上記の3人だけでも相当な実力があると思われる。

お嬢たちが苦戦するのは、間違いないのかもしれない。









ー老游院サイドー


「李様」


赤いチャンパオを身に纏った李様と呼ばれるその人は声を掛けられ振り返る。


「どうした?」


「はっ。直に行われる統合新人戦に向けての選抜メンバーはどうなったのかと、思いまして」


「…それで?」


「そ、それで、と言いますと…?」


「それを何の権限もない君が聞いてどうする?」


「そ、それは…」


「僕に指図にしてるの?」


「い、いや、そのようなことは…」


「ふぅん」


李様と呼ばれる人物は、指図した相手に対し殺気とも呼べるくらいの圧で睨む。


「も、申し訳ありません!」


男は息をする暇もなく、ただただ謝ることしかできない。


「その辺で許していただけないでしょうか?」


2人の間に入ってきたのは、黒いチャンパオを着た新たな青年。


「…真魚(マオ)


「ほら、貴方はもう行きなさい」


「は、はい。失礼します」


男は足早にその場を去る。


「ダメですよ、生徒に怒ったりしたら」


「別に怒ってなどいないが?あんな弱者がこの院にいると考えると虫唾が走るだけだ」


「そんな変わりませんよ」


「それで、どうした?僕に用か?」


「用というほどではありませんが…。先ほどの話は院内でも話題になっていますよ」


「…統合のか」


「そうです」


青年は深く頭を下げ、


「そろそろお決めになってもよろしいかと」


「君も僕に指図するのか?」


「違いますよ。早めにメンバーを決めておかないと、即席のチームでは不甲斐ない結果に終わるかもしれないという懸念ですよ」


「なるほど。…真魚」


「はい」


(リン)姉妹と(リャン)を呼べ」


「承知しました」


再び深くお辞儀すると、真魚と呼ばれる青年はその場を後にする。


「…統合新人戦、か」


李様はポツリとつぶやく。


「あの時の主席も出るとなれば、こちらもうかうかしてられないな」


呼び出しから数分後、呼ばれた3名と真魚が李様の前に現れる。


「やあ老游院の子供たちよ」


李様の言葉に4人は深くお辞儀する。


「近々、統合新人戦が開幕する。そのことは知ってるだろう?君たち3人をそのメンバーに入れようと思ってね」


「はっ。ありがたき幸せっ」


3人中唯一の男性、梁が声をあげる。


「梁。君には期待しているよ。新入生2番手の君がこの院を引っ張っておくれ」


「はっ。おまかせを」


梁は再度声をあげる。


「林姉妹。君らもだよ」


「「はいな」」


小柄の姉妹は李様の言葉に反応する。


美蘭(メイラン)におまかせください!」


「わ、私も頑張ります」


姉の美蘭、妹の玉蘭(ユーラン)も李様の期待に応えようと奮起する。


「じゃ僕は行くね」


そういって李様はあっさりと去っていくのだった。


(ホン)先輩、李様は怒ってしまったのでしょうか?」


梁は洪先輩、真魚に問いかける。


「いや、李様は気まぐれだからね。忙しかっただけでしょう」


「それなら良かったです」


梁はホッと胸をなでおろす。


「私たちは敵を倒せばいいのよねっ!」


「わ、私も頑張りますっ」


「お2人なら大丈夫ですよ。…さて、私もこれから忙しくなりそうですし頑張りますか」


真魚は統合新人戦に向けての準備を始めるのであった。

老游院の選抜メンバーは梁・我酸(リャン・ウォスァン)、林・美蘭、林・玉蘭の3名になった。

李様とやらが言っていた2番手、というのが気がかりだが今の情報じゃこれが限界。

もっと上がいるという事実だけが分かっている状態だ。

未知の実力を持つ3名に加え、控えメンバーも不明。

不気味さでいえば、4校随一といっても過言。

今度の大会で、その全容が明らかになるのだろうか?










ーマリウス学院サイドー


「君たちに集まってもらったのは他でもない」


学院内の部屋にて、年老いた男性が目の前にいる3人に声をかける。


「君たちは今度開催される統合新人戦のメンバーに選ばれた。この意味が分かるか?」


年老いた男性は問う。


「はい、理解しております」


3人のうちの1人が返事をする。


「我が院は去年、ここにいるロイド・テリオスが圧倒的な実力差を見せ優勝した。今年もそうであるべきだ」


年老いた男性の左横には前回優勝の立役者、ロイド・テリオスがいる。


「今回はレイン・ザガン、パーラ・ライオネル、陽樹 沙花又。君たちが選ばれたということだ」


ロイド・テリオスは3名に声をかける。


「「はい」」


「ふぁい」


沙花又以外はしっかりとした返事。

当の本人は覇気のない返事をする。


「沙花又、なんだその返事は」


年老いた男性の右横にいる青年は沙花又の発言に物申す。


「なんすか?モルドレッドさん」


モルドレッドと呼ばれた青年は沙花又を指さし続ける。


「マリウスの名を背負うのなら、しっかりとせえ」


ドスの利いた声で沙花又を脅す。


「そんな脅さないでくださいよ~」


「なら、しっかり誠意みせえ」


「誠意も何も、マリウスの看板なんて背負ってる気ないんすけどねえ」


「…なんだと?」


「モルドレッド。その辺にしなさい」


「ですが学院長!」


「いい。そやつはそうゆう奴だと元々分かっている」


「それを踏まえて、ここに呼んでいるわけだからな」


ロイドも続けて発言する。


「試合出て、相手倒せばいんでしょ?ここでやってることと変わんないじゃないですか」


「簡単にできるならな」


「ここの生徒は、試合に出るやつよりも弱いの?」


煽るように先輩方に尋ねる沙花又。


「こっのクソガキ…」


「そうゆう問題ではないぞ陽樹 沙花又」


学院長は沙花又を諭す。


「油断をするな、ということだ」


「はいはーい」


「ほんとうに分かっとるんだろうな」


注意喚起するロイド。

モルドレッドは心配そうだ。


「では、この話はここまでにする。各自大会に備え、さらなる邁進を期待している」


「「はい」」


レイン、パーラの2人は学院長の言葉に返事をする。

話し合いを終え、選抜メンバーはその場を後にする。

学院長・モルドレッド・ロイドの3人未だ残り話しをしていた。


「学院長、アイツを参加させていいんですかい?」


モルドレッドは尋ねる。


「良い。奴はきっとカンフル剤になってくれよう」


「場の空気を乱すと、ワシは思うとるんですけどねえ」


「それは賭けだな」


ロイドは言う。


「沙花又は諸刃の剣だ。正直どちらにも可能性があるのは否めない」


「もう決めたことだ。…それよりロイドよ。この間のイリーナルの試合はどうだった?」


学院長は視察にいったロイドに内容を聞く。


「…特に目立った点はありませんでしたよ」


「あそこにゃお前さんの弟がいたはずだが?」


「大した脅威ではない」


「それはお前さんの実力なら大抵の奴はそうだろうよ」


「我らの新入生が相手となるとどうだ?」


「…少々手こずるかと」


「そりゃあそうじゃろう」


「愚弟の話はここまででいいでしょう」


話を途中で遮りその場を離れていくロイド。

その様子を黙って見届ける学院長とモルドレッド。

やがてロイドの姿が見えなくなってようやく学院長は口を開く。


「…奴は自身の家族をあまり話さん」


「知ってますよ。だからなにかきっかけがあればと思い視察に出したんですがねえ」


「結果は変わらんようだな」


「業が深いんじゃ…」


「わしらが手を出す問題じゃないのかもしれんな」


「…歯がゆいのう」


「ロイド自身も分かっているだろうからの。見守ることにしよう。してモルドレッドよ」


学院長はモルドレッドに言葉を続ける。


「選抜メンバーはあの3人に決めたが、控えの候補はおるか?」


「控えですか?うーん、1人いますがねえ…」


「ほう、誰かね?」


「ノルヴァック公爵」


「おお、ノルヴァック家の娘か。実力はどうだ?」


「剣術はさすが公爵家というところですが、魔術は戦闘向きとは言えんのう」


「ノルヴァック家の魔術系統は、治癒だったか」


「それに本人もあまり乗り気ではなかった様子じゃからのう」


「そうか。再度出場の有無を問い、断るようなら別の者を探すか」


「そうしますかのう」


最後の聖マリウス学院にはレイン・ザガン、パーラ・ライオネル、沙花又 陽樹の3名が選ばれた。

正直、実力で言えば4校一番と言ってもいい。

それくらいの実績と生徒を輩出している学院だからだ。

それにしても、控えの候補として話題に上がったノルヴァック公爵。

果たしてその実力はいかに…



4校それぞれの想いが錯綜する。

1つは自身の未来を

1つは大いなる期待を。

1つは確固たる地位を。

もう1つは…

4つの想いは進み、やがて交差したときにぶつかることになるだろう。

ノルヴァック公爵家。

お嬢と同じ公爵家ですが、果たしてお嬢との関係性はいかに?

少しではありますが3校の雰囲気を味わえたでしょうか?

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