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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
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第35話 会議

統合新人戦に向けてのメンバー発表が掲示された。

これはそれよりも前のお話。


時は少し遡り…


「では会議を始めていきましょうか」


イリーナル学園の長、ジェフ・イリーナル学園長の一言で会議が始まる。


「今回の議題は何ですか~?」


1年生担任の佐々木 歪はいつも通りの口調で問う。


「残り1か月に迫った統合新人戦のことに決まっているだろう?」


2年生担任で生徒会も兼任している的場 入先生は佐々木先生に食って掛かる。


「分かってますよ~」


「相変わらず君たちは馬が合わないのね」


保健室の先生、梅野 琴美先生は2人の会話に呆れている。


「…話を進めてもいいかい?」


イリーナル学長は双方に確認をとる。


「いいですよ~」


「お願いします」


「では、今回は統合新人戦に起用する選抜メンバーを決めていこうと思っている。佐々木先生、何か意見はあるかね?」


「意見ですか~?ん~、順当にいけば成績順になりますけどね~」


「それが当たり前だろう」


「あの学内新人戦で活躍した少年は選外なのか?」


別の方向から問いかけてくる人物が1人。

3年生担任の田山 武先生だ。


「田山先生、彼は魔力0ですよ?」


「その能力で学内新人戦準優勝したが?」


「あれはまぐれですよ」


「まぐれであの成績になるくらい、うちのレベルは落ちたんか?」


「…何が言いたい?」


的場先生と田山先生はバチバチにやりあっている。

その視線で火花が出そうだ。


「ま~ま~、双方落ち着いてくださいよ~」


「元を辿れば、佐々木先生の生徒だろう?」


「私が発言すると自分の生徒だからって揚げ足取るのは分かりきってるじゃないですか~」


「そうねえ」


梅野先生もその意見に賛同する。


「今回の議題の本文は、黒崎 迅1年を選抜に入れるかどーか」


「私は賛成ですよ~」


イリーナル学長の意見に佐々木先生・梅野先生・田山先生は賛同する。


「…私は反対です」


逆に的場先生・伊藤 麻麻先生・セルリ ソル先生・千堂 春道先生が反対意見に手を挙げる。


「4:3ですか、反対派が多いですね。的場先生は反対と思っていましたが、残りの先生方はなぜ反対に票を?」


イリーナル学長が尋ねる。

開口一番に口を開いたのは、学長の横にいる千堂 春道先生だ。


「学園長、失礼ながら私から説明します。確かに黒崎1年生は類まれなる実力を発揮したかもしれません。ですが、試合を見た方なら分かる通り、彼の力はあまりにも負の因子が強すぎます。我が学園のイメージダウンに繋がるかと」


千堂先生はこのイリーナル学園の副学園長だ。

確かなる実力と実績、そして的確に物事を判断することに長けている。

そんな副学園長が言う言葉には、やはり説得力がある。


「伊藤先生は、どう思われますか?」


自身に質問を向けられ、身体をビクッと震わせる伊藤先生。


「え、えっとぉ、私は」


「せ、千堂先生の言う通り…危ない橋は渡るべきではないと思います…」


気弱な性格が由来してか、オドオドしながら話すこの方は伊藤 麻麻(まあさ)先生。

イリーナル学園の薬剤科を担当する薬物に精通している先生だ。


「なるほど…」


イリーナル学園長は伊藤先生の意見に納得する。

と同時に最後の1人に目を向ける。


「…あら?最後は私かしら?」


わざとらしく、とぼけたように振る舞うのはセルリ ソル先生。

この学園随一の実力を誇る魔法科担当の先生。

いつも何を考えているか分からず、不敵な笑みを浮かべている。


「セルリ先生はなぜ反対票に~?」


佐々木先生はセルリ先生へと尋ねる。


「んーなんとなく」


セルリ先生は具体的な理由を明かさずはぐらかす。


「そうですか。相変わらずセルリ先生は何を考えているか分かりませんね」


「私はいつでもこの学園のことを想っていますよ」


「そう言われるとこれ以上は何も言えなくなりますね」


イリーナル学園長も少し困った様子だ。


「他の先生はこの場にいないですが~、学園長を外してこの多数決の結果なら仕方ありませんね~」


「そのようですね」


「今回の件で、あの生徒がどうゆう認識をされているかがよく分かったかと思います。今後は不用意に表に出さない方針がよろしいかと」


的場先生は話の主導権を握り、進行を進めようとする。


「それは将来の卵をないがしろにする、ということですか~?」


「彼1人を優遇はしない、ということです」


「ゆう~ぐう~ね~?」


佐々木先生は的場先生から視線を外さず見続ける。


「結果として出ているではないか」


「…今回は、そうゆうことにしておきますかね~」


「双方問題ないということであれば、選抜メンバーはレオナルド・テリオスくん、美登・H・紫翁くん、公家院 華くんに決定ということでよろしいかな?」


イリーナル学園長の言葉に皆賛同する。


「では、この度の会議は終了にしましょうかね」


「それでは、失礼します」


的場先生を始めとする、反対派+田山先生はその場を後にする。


「…おや?佐々木先生は退出しないので?」


未だ席を外そうとしない佐々木先生を見て、イリーナル学園長は尋ねる。


「…こんな出来レースに誰が納得するとでも~?」


佐々木先生の背後には以前、学内新人戦で観客席を沈めたオーラを放ちながら静かに怒っていた。


「…ですが、それを立証することはできませんよ」


「…わかっていますよ~」


佐々木先生はすぐさま感情をコントロールし、いつもの調子に戻る。


「くっくっくっ。ずいぶんあの生徒にドップリじゃないか」


第3者の声が聞こえ驚く2人。

その声の主は、先ほども聞いた声だった。


「セルリ先生~」


「やあ」


とっくに帰ったと思われていたセルリ先生は、扉の前で話を聞いていた。


「どうしましたか?セルリ先生」


「私に聞きたいことでもあるかなと思ってね」


「…分かってるじゃないですか~」


「ふふっ。これでも勘は良いほうでね」


「それで、勘のいいセルリ先生は今回の件、どのような見解を示しているのでしょうか?」


「んっ?私としては特にどうもないぞ」


「はい~?」


「こうなるようにできていた。そう思うならそれ以上いうことないだろ」


「つまり、裏工作を認める。ということですね?」


「私はやましいことなんてしてないからな。別に隠す必要もない」


「口止めもされなかったんですか~?」


「私の条件は反対票に入れること。口止めは別料金だ」


「料金ってことは~、お金で動いたということですか~?」


「そうだが、なにか?」


「お金1つで生徒の将来が左右されるなんて~あんまりじゃ~ないですか~?」


沸々とだが少しずつ、佐々木先生の怒りがこみあがってくる。


「たとえ私が断ったところで他の策を講じられ、結果としては変わらんよ。それにこの世は金がすべてだ」


「相変わらずの価値観ですねセルリ先生」


「これを罰するならどうぞご勝手に」


「…言葉まかせの証言で罰するも何もあるわけないじゃないですか~」


「それが分かっているからこうして話しているんだが?」


「さすがセルリ先生。ところでもう1つ、いいですか?」


「どうぞ、学園長」


「どうしてこの話を我々に?」


「…勘だよ」


「またそれですか~」


「セルリ先生の勘はとっても当てになりますので、悪い話ではないのでしょう」


「買いかぶりすぎですよ」


「そうですよ~」


「先生本人としては、彼をどう見ますか?」


「…良くも悪くも注目の的。そうゆう星にでも生まれたんじゃない?主人公…とかね」


冗談交じりに鼻で笑うセルリ先生。

イリーナル学園長は手で顎を触りながら考える。


「主人公ですか…面白い発想をしますね」


「現に本人の予想内なのかは知りませんが、少なくとも1年生の中では中心人物ですよ。ちなみに2年生でも話題に上がってました」


「なるほど~それくらい眼に入る、ということですね~」


()()佐々木先生が目を付けているのですから、そうなるのは必然かと」


「それこそ買いかぶりすぎですね~」


「…と、まぁ世間話はこれくらいにして。私は行きますね」


「貴重な話をありがとうございました。セルリ先生」


「お礼よりお金が欲しいですかね」


「はやく行ってくださ~い」


「それじゃあ」


最後までお金への執着を見せながら、セルリ先生は帰っていった。


「決まったものは仕方ありませんね~」


「セルリ先生から面白い話も聞けたので、とりあえずは静観してみましょうかね」


「まさかこんなに早く暴露されているとは、的場先生も思ってないでしょうね~」


佐々木先生のニヤつきが止まらないのであった。






「会議の結果は反対。これであの生徒は出ず、イリーナル学園の体裁は守られますね」


的場先生は電話先の相手に会議内容を報告する。


「………」


「そうですね。なぜかイリーナル学園長はあの生徒を推しているみたいですが、我が学園は正統なる生徒を輩出する由緒正しい学園。異端や問題児は学園の中で自由にさせている方がこちらとしても安心します」


「………」


「はい、今後も不備がないように気を付けていきます。では」


的場先生は電話を切る。


「…この学園は我が生徒会こそが頂点。厳選に厳選を重ね、実力・品性ともに優れた最高のメンツを集めている。それなのになぜ分からない。彼らがどんなに努力しているか」


握っていた携帯電話をさらに強く握りしめる。


「…まあいい。今回はおおむね成功。今後またイレギュラーが起きようと適切に対処していけばいい。次に障害になりそうなのは…あの2年の2人か」


誰もいない廊下をゆっくり歩いていく。

コツッコツッコツッと歩く足音だけが聞こえてくるのであった。

今回は教師陣営の話でした。

的場先生は問題のある生徒を敵視しているようですね(´・ω・`)

悪い方向に逸れなければいいのですが…

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