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第31話 合同

合同授業の一環として、多くの2年生が登場する。

これからさらなる成長に向けて、1年生達は先輩たちに教えを乞う形となるのであった。


「てことでよろしく1年坊」


俺らに向かって挨拶をしたのは相変わらずアクセサリーをこれ見よがしに付けている先輩、今井 翔先輩だ。

なぜそこまでつける必要があるのか知らんが、目立つことこの上ない。


「皆ごめんね。こいつ悪いやつじゃないんだけど、ちょっと変な奴でさ」


隣にいた本城は必死にフォローする。


「あ、楓さん」


「あら、華ちゃん。今回はよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします!」


「…華ちゃん、知りあいの先輩?」


「ええ、前にちょっとね」


「みなさ~ん、それぞれ挨拶は済んだでしょうか~?」


佐々木先生が全体に向けて声をかける。


「今回は1・2年合同での授業となりま~す。サプラ~イズ」


「黙ってる必要あったか?」


「いや、分かんね」


俺と大樹は不思議そうに話す。


「そこ~空気を読んで~」


先生からのお達しがくる。


「…黒崎」


背後から小さな声が聞こえる。


「うおっ。美登かよ、びっくりさせんな」


美登が俺の後ろに隠れるように話しかけてきた。


「今井先輩…だよな、あの人」


「そうだぞ、俺らの知ってる、()()今井先輩だ」


「昨日の知ってる先輩にはとても見えないんだが」


「奇遇だな、俺もだ。でも昨日とは違うみたいだからそんな気にすんな」


「そうはいったものの、警戒するのは当然のこと」


「それもそう」


2人でひそひそ話をしていると、


「どした?美登」


横にいた大樹も美登に気づいたようだ。


「なんもない、気にするな」


そういってレオナルドの方へ戻っていった。


「なんなんだあいつ?昨日からおかしいぞ?」


「じゃあ、いつもおかしいんじゃないか?」


「…今年の新入生は好き勝手しすぎてはいないかね?」


少し緊張感のある声。

俺ら1年生がその声のする方を振り向く。

そこには銀色長髪の男が椅子に座っていた。

男はモノクルを拭きながら話を続ける。


「我がイリーナル学園の生徒でありながら品位もないとは、残念な」


「的場先生、それは言い過ぎでは」


本城先輩が的場先生?を注意する。

しかし、口調は変わらない。


「事実を述べたまでだが?品性があるのは主席だけだ」


「へえ、そうかい」


別に俺らに品性なんてもんはないからな、突っかかる理由はなかった…が。

主席だけ、つまりこの男の中ではレオナルド以外はダメだということだ。

は?ふざけるなよ。


「ぜひともその小さなお眼鏡にかなってみたいものだな」


先生の拭いているモノクルを指さしながら噛みつく俺。


「あっちゃー…迅の悪い癖がまた…」


「いつものことよ」


「…黒崎くん」


「先生にまで突っかかるのかよあいつ」


いつものメンツは呆れている様子だ。


「ぶっははは」


「あいつ…先生に向かってなんて口を」


2年生側では今井先輩が腹を抱えながら爆笑、速水先輩は俺の態度に苦言を呈していた。


「ふん、お前が黒崎か。学内新人戦で成績を残したからといって調子に乗ってるんじゃないのか?」


「あ?俺は元々こんなんだが?」


「そうか、普段から品性のかけらもなかったか。…護衛がその程度なら主人も底が知れるな」



スッ。



俺は腰に携えていた鞘付き剣を的場先生に振り下ろそう…とした瞬間、


「そこまでですよ~」


佐々木先生が間に入り、両者を牽制する。


「な~に熱くなってんですか~的場先生~」


「お前の指導がなっていない結果じゃないのか?」


「それはそれは大変失礼しました~」


「今年は豊作と学長から聞いてはいたが、実力だけ伴っていても意味がない。今年の合同は無しにするよう進言せねば」


「えっ、俺はしますよ合同」


率先して的場先生に意見するのは今井先輩だ。


「去年もひどいもんだったでしょう?新人戦で勝ったからって突っかかってくる生徒、自分勝手に暴れて停学処分を受けた生徒、そしてのちに問題児のレッテルが張られた生徒」


最後の生徒を説明している際には自身に親指を向ける今井先輩。


「だから何だというのだ?」


「そんな連中に比べれば、ただ1人が先公に歯向かっただけ。それで全体を指摘するなんて、残念でならないね」


「今井…」


「てことで俺はやるんだけど、みんなやんないの?」


「私は参加するわよ」


真っ先に手を挙げたのは本城先輩。


「後輩を指導するのも、先輩の務め」


前へと歩き出すのは速水先輩、とその後ろには女性の姿も。


「んじゃそうゆうことで」


今度は今井先輩が的場先生に牽制を入れる。


「ふん、勝手にしろ」


そういって先生は手に持っていた本を見始めた。


「んじゃ指揮よろしく、優等生さん」


今井先輩は役目を終えたように下がっていく。

代わりに速水先輩が話を進めていく。


「改めて、新入生。大半が今日のことを知らされていなかったわけだが、今回から1・2年での合同授業を始めていく」


「「「「「合同授業!?」」」」」


1年生達は驚いた様子だ。


「自己紹介が遅れたな。私は2年、速水 ひかるだ。生徒会書記を任されており、2年の統括をしているものだ。早速だが具体的な内容を説明していこうと思う」


「はい、よろしくお願いします」


レオナルドが自分が1年代表だと言わんばかりに前に出てコミュニケーションを取り始める。

まあべつに構わないが。


「この授業では自分たちの魔法特徴を生かして、先輩からアドバイスなどをもらおうという企画だ。それぞれの色に合わせた先輩方に行って教えてもらう、個人間でのワンツーマンスタイルも可能だ。だが後者は互いの了承があってこそだがな」


なるほど。

俺らの色に合わせて基礎能力を挙げようってわけ。

個人間での授業…だがら成績上位には今回だれを選ぶかも兼ねて事前に説明があったわけね。

前もって先輩を話を通しておくのも手、断られた時を考えて何も言えず緊張してる奴もいるってわけか。

この時期から始めるってことは…


「学内新人戦などを観戦し、先の統合新人戦への出場がありそうな面子には事前にこのことを伝えている。手の内が明かされている以上、この短期間でのレベルアップを図るにはこの方法が一番効率がいい」


統合新人戦に向けて…ね。

実質、次のメンバーは決まってますよって言ってるようなもんだ。


「こんなん次はあんたらが出ますよー期待してますからねーて言ってるようなもんだよなあ?」


俺と似たような考えを持ってる人が話しかけてきた。


「い、今井先輩」


「よお黒崎。ナンパしに来たぜ」


ナ、ナンパ…?

俺が驚いていると、


「さっそくだが初めて行こうと思う。各自それぞれ自分に合っていると思う先輩の所に行ってほしい。分からない場合は先生に意見をもらうなどしてほしい。…レオナルド、お前はこっちだ」


「はい」


レオナルドは直々の指名が入り、速水先輩と個人で行う予定らしい。

優等生同士ってわけだ。


「お嬢はどうするんですか?」


「え、私!?私は…」


そういってとある先輩の方に目線を送る。

…ほう。

その先輩に教えを請いたいわけね。


「まあ、俺らはてきとーにグループの所に行くか」


「そうね」


大樹とうさみは同じ色同士、黄色組のグループに行こうとしている。


「…わ、私は…」


かのんはまだ迷っている様子。


「こんにちわ、公家院さん」


そんな中、お嬢に近づいてきたのはさっき速水先輩の横にいた、髪が逆立つようにロールになっている女性だ。


「あ、須藤先輩。こんにちわ」


お嬢も挨拶を返す。


「以前お話ししたことなのだけど、考えはまとまったかしら?」


以前話した…?あの先輩、俺のいない間にお嬢に何か話してたらしい。

どーせ、個人間でのペア契約でも提案したんだろう。

なんせあの人は2年生の次席にして、生徒会の庶務だからな。

次席の美登ではなく、お嬢に行くあたり完全に狙ってんな。


「この間のお話ですよね…?とてもいいお話だったんですけど、他の先輩にお願いしようかなあと考えてまして…」


申し訳なさそうに須藤先輩に断りを入れるお嬢。


「そう、せっかくのお誘いなんですけどね。…これを断るってことは、今後にも影響があるということがお分かりですよね?」


須藤先輩はお嬢に詰め寄る。


「…たしかに須藤先輩からご指導を受けることによって生徒会への入会は近づくと思います」


「でしたら」


「それでも、私は他の先輩に教えを乞いたいと思ってしまったんです…。間違った選択かもしれません。愚かな選択かもしれません。ですが、自分が思う道を進みたいと、思っちゃったんです。すみません」


「おいおい、あんまり後輩をいじめるんじゃないよ?須藤」


そんな2人のやり取りを聞いていたのか、第3者が間に入ってくる。


「…本城」


「本城先輩?」


「どの先輩を選ぶかなんて、後輩の自由。自分が1番成長できると思う選択をするのが良いと私は思うけどねえ」


「ですから、それが私を選ぶことだと言ってるんです」


「でもそれはあなたの押し付けでしょ?あんま良くないと思うんだけどね」


「生徒会にも属してないくせに…」


須藤先輩は明らかに本城先輩を敵視する様な対応をみせる。

2年は2年で色々あるんだろう。


「お嬢のやりたいことをすればいんですよ。俺はそれを応援します」


「迅…。須藤先輩っ」


お嬢は須藤先輩と向かい立って自身の気持ちを伝える。


「やっぱり、須藤先輩とのご指導はまたの機会にお願いします。私は、ここにいる本城先輩から教わります」


「なっ…。よりにもよって、本城に教わる気なの!?」


「はい」


お嬢の意思は固い。


「本城は周りに取り入るのが上手いだけ。他に突出すべきところなんて…」


須藤先輩が意見を言い切る前に、


「おいおい、それはないんじゃねえの?」


「…今井」


横から今度は今井先輩が割り込みを入れる。


「自分の能力の低さを、他者を下げるような言い方で話すのはいかがかと思いますがねえ?そうは思いませんか?生徒会の下っ端」


あからさまに挑発するような、攻撃的な口調で須藤先輩に詰め寄る。


「くっ…。今井、問題児の分際でっ…」


「私のことはどう言おうが構わないけど、今井のことを問題児って呼ぶのはやめてほしいわ」


本城先輩も前に出て応戦する。


「…わかったわ。公家院さん、その決断後悔しないようにね」


最後にそう言うと、足早にその場を去っていった。


「ごめんなさいね。須藤も悪い人じゃないんだけど」


「いいえ、私が断ったのが最初の原因ですので、気にしないでください。…それで、ペアの件なんですけど…」


お嬢は少し話しずらそうに本城先輩に問う。

本城先輩は、


「個人のやつ?もちろんいいわ。私は黄色担当のグループもお願いされているから、完全な個人契約とはいかないけれど」


申し訳なさそうにお嬢に話す本城先輩。


「構いません!よろしくお願いします!」


これでお嬢の相手も出来たわけだ。

…さて、無色の俺はどうしますかね。

そんな事を考えていると、


「黒崎、お前行くアテがあるのか?」


今井先輩は心配そうに俺に尋ねてくる。


「2年生とのパイプがあれば別でしたが…。今の俺にはそんなものはありません」


「んじゃあちょうどよかった。お前、俺と個人でどうよ?」


「え」


思わぬ提案。

唐突の出来事に生返事をしてしまう。

ナンパとはこのことだったのか。


「嫌か?」


「嫌ということは。ただ、俺は無色なので出来ることは少ないかと」


「学内新人戦であれだけ戦える奴がなに言ってんだ。それに無色?関係ないね、なんせ俺は問題児だ」


そう言って腕章の✕を見せる。


「先輩が大丈夫でしたら、問題ないです」


「よっし。ここに無色と問題児タッグの形成だ」


今井先輩は嬉しそうに話す。

こうして俺の相手は決まり、他の皆もそれぞれの相手を見つけ、授業がスタートしていった。

唐突に始まった1・2年合同授業。

どうなるかと思ったが、皆いい感じにまとまった…はずだった。




ドンッッッ。




突然、部屋の扉が破壊され土煙が舞う。

皆何事とかと思い、音がした方を注視する。


「ここかぁ、1・2年の合同やってる場所は」


土煙から声が聞こえてくる。

次第に煙は晴れ、その姿は少しずつ露わになっていく。

その姿は気高く、今にも手を出してきそうな凶暴性を窺わせる風貌。

白い髪をなびかせ、その男はこう叫んだ。


「どいつだぁ!?レオナルドってのはぁ!?」

落ち着いたと思いきや、知らない人が乱入してきました(´・ω・`)

…誰だ君は?( ゜Д゜)

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