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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第2章 学内新人戦編
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第27話 学内新人戦 閉幕

戦いの中、意識が遠のく迅。

それと同時に新人戦決勝の幕が閉じていくのであった。


ー観客席①ー


「主席君の実力はもちろんのことだけど…」


言葉を詰まらせ、ちらっと隣の男性、今井 翔を見る。

これまで通りなら、軽口を叩きながらヘラヘラとしている今井だが…。


「…」


真面目な顔してステージを見つめる。

途中から無口になり、集中して試合を見ていた。


「…翔?」


心配になり、声をかける。

と、声をかけられていることに気づいた今井。


「おぉ、すまんすまん。なんだって?」


「あんた大丈夫?そんな真剣に見て」


「大丈夫だよ。…あの1年生に興味がわいてね」


「あの1年生って…主席君?」


本城が聞き返すと、


「んにゃ。俺が気になったのは相手の方」


「相手って…急遽参加したあの子?」


「そう」


「あの子もすごかったけど…」


確かにあの主席と一番渡り合えたのは彼だったかもしれない。

だが、今井が注視するほどのものがあったかと聞かれると、うんとは言えない。


「俺はあいつに決めた」


「…なにを?」


変なことを言い出すときはロクでもない時が多いため、あんまり聞きたくはない様子の本城。


「今度あいつに会って話すわ」


「だから何をよっ!」


本城の話を聞かずに1人で話を進める今井だった。









ー観客席②ー


「あの絶望的状況からあれほどの胆力を見せるか…」


レイリーは絶句していた。

はたして、自分にあれほどの試合ができるかどうかを自問自答している。


「いい風していると思ったが…さすがだねぇ」


「彼をあそこまでの実力と見抜いていたの?」


水炎寺は風間に問う。


「あそこまでは予想外ですけど…俺は迅が勝ってもおかしくはないと思ってましたよ」


「それは…風が関係しているの?」


「もちろん」


「ふーん」


水炎寺はこれ以上聞かずに話し終える。


「じゃあ、私達もお暇しましょうか」


「お嬢様。公家院様にはお会いにならないので?」


「いいのよ。どうせ今度嫌でも会うもの」


「今度というと…統合新人大会か」


「さすがにあの子も出てくるでしょう」


「それでいいのでしたら。では、参りましょうか」


レイリーのリードにより水炎寺は帰っていく。


「じゃあね~」


「あら、貴方は帰らないの?」


水炎寺は歩みを止め、風間に話しかける。


「俺はもうちょっと見ていくよ。また学園でね~」


「そう。じゃあね」


水炎寺とレイリーはその場を離れる。


「最後に皆さんの風でも見て帰りますかね」


風間はニコニコしながら歩き始めるのであった。










「救護班!急いでください!」


音無2年は倒れている生徒のため、救護班を急かす。


「負けちまったか」


「元々、分が悪い勝負なのは分かってたじゃない」


俺のクラスメイト、大樹とうさみがそれぞれ感想を述べる。


「…それでも、勝ってほしかったです…」


横にいるかのんは涙を流しながら話す。


「そりゃあ、俺だって…」


大樹は言葉を濁す。


「…負けたのね」


するとその場に第4者の声が聞こえてきた。


「…えっ」


かのんは思わず振り返る。

振り返った先には、救護室で休んでいたはずの公家院 華の姿が。


「…はな…ちゃん…」


かのんはさらに泣き崩れ、お嬢の胸に飛び込む。


「華ちゃんっ!ごめんなさいっ!黒崎くんもっ!…わぁぁぁん」


そのままお嬢に抱き着きながら泣き崩れる。


「えぇ。大丈夫よ、かのんちゃん。心配かけてごめんね。…2人も」


そういって大樹とうさみを見る。


「俺は大丈夫だぜ」


「気にすることは無いわ」


2人は気にしないようにお嬢を気遣う。


「…それにしても、迅は負けたのね。…勝ちなさいって言ったのに」


最後のセリフは小さい声でボソッと言う。


「今なんか言った?華」


うさみはお嬢の小さな声が聞き取れず問いかける。


「ううん、なんでもないわ」


「それにしても迅の雄姿が見れなかったのは残念だな」


「救護室のモニターで見ていたのだけれど、画面がちっちゃくて細かくは見えなかったわね」


「…そうでしたか」


「華はギリギリで目を覚ましたの?」


「いいえ、私は…」








ー決勝試合中ー


「…ここは?」


私、公家院 華は自分のいる場所が分からず混乱していた。

さっきまでかのんちゃんと戦っていたはず…。

すると部屋の入り口から1人の年老いた女性が入ってきた。


「あら、起きたのね」


「…梅野先生?」


救護班に回っている梅野 琴美先生だ。


「そうよー。…ここまでの記憶はある?」


先生に尋ねられる。


「えーと…かのんちゃんと試合しているところまでは…」


「なるほど。先に結果だけ伝えさせてもらうわ。試合は貴方の勝ち。…とここまではいいのだけれど」


先生の歯切れが悪くなる。


「もう、大会は終わってしまったんですか?」


「いいえ、今は決勝戦の真っ最中よ。貴方の護衛くんが主席のテリオスくんと戦っているところよ」


「えっ…。そ、それなら早く応援に」


私はベッドから立ち上がろうとするが…


ピキッ。


「うっ…」


「まだ動けないわよ。貴方の傷は重症。今起きたのは不思議なくらいよ」


「…そう、なんですね」


肝心な時に大事な人のそばにも入れないなんて…

迅はいつも、私のそばにいて、私を守ってくれるのに…


「モニターに試合の中継がされているから、それでも見て応援しててね」


そういって梅野先生は去っていく。


「…私は…」


モニターに映る迅の戦いを見ながら、何もできない自分に嫌悪する。


「っ!まぶしっ」


突然モニターからまばゆい光が差さる。

レオナルドくんの剣から膨大な魔力が光る。


「なに…あれ…」


その膨大な魔力は魔法となり、迅に襲い掛かる。

剣から放たれる強力な魔法は迅へと直撃する。


「迅!?」


こっからじゃ様子がよく見えない。

…嘘。

迅が…負ける…?

そもそもなんで迅は決勝戦に参加しているの?

あんなに嫌がってたのに。


「…華様のためですよ」


誰もいないはずの部屋に別の声が聞こえる。


「…ハクノさん?」


「流石です。華様」


「ハクノさんがそばにいてくれたんですね」


「私は主人(マイ・マスター)の命を受けただけですよ。それより、メメからお伝えしたいことがあるようです」


そう言うと私の脳内にメメさんの声が流れ込んでくる。


『おぉ、華の嬢ぉ。お久しゅうですなぁ。…あぁ、久方の挨拶はよいんじゃったのぉ。今すぐ我が主人(あるじぃ)の元に行きたいじゃろうと思い、一方的な対話で良いのなら魔法で送るのも手と考えたのじゃが…』


メメが言い切る前に


「迅に送れるなら何でもいいわ!お願い!」


『そういうと思い、準備はすでに済ましておるぅ』


私は一生懸命声をかける。

…迅!しっかりして、迅!







「…結構ギリギリで起きたわ」


「そうだったのか」


「…華ちゃんもまだ怪我人なんですから、無理しないでくださいね」


「えぇ、大丈夫よ」


そう言ってステージの方を見る。

ステージでは両者救護隊に治療を受けている。


「えー、救護班によると黒崎選手は大きな問題はない様子です。意識はない様子ですが」


「それなら良かったです~」


「本来ならこの後表彰式と行きたいところですが…現状が現状ですので、口頭での式とさせていただきます。ご了承ください」


「いろいろと時間も押してますしね~。黒崎くんも救護班に運ばれていきましたので、安心してくださいね~」


「はい。では、改めまして選手の皆さん、ご来場の皆さんお疲れさまでした。選手の皆さんは数々の激闘をありがとうございます!最初にイリーナル学長からの挨拶…と言いたいところですが、現在多忙のため割愛させていただきます!」


「申し訳ございませんね~うちの学長が~」


「では、今回の学内新人戦、第3位から発表していきたいと思います。皆さん心の準備は良いですね?…第3位はクノウ イチカ選手!」


「試合を見ている人達なら~、順位発表にドキドキなんてしないですよね~」


…私は途中でリタイヤだし、3位にのるわけないか。

私が残念そうにしていると、


「と!公家院 華選手です!」


…えっ?

突然名前を呼ばれ驚く私。


「華ちゃんっ!選ばれましたよ!」


かのんちゃんは嬉しそうに私の手を握る。


「よかったじゃねえか」


「3位が2人なんて、粋なことするじゃない」


2人も喜んでくれている。


「あ、ありがとう」


「どうした?嬉しくなさそうだな?」


「私も3位でいいのかなって言う気持ちと頭が処理できてないっていうか…」


「そんなの気にしなくていいのよ。やった!くらいに気持ちで」


うさみさんはさらっと言う。


「第2位は黒崎 迅選手。決勝戦では最後まであきらめない姿勢を見せてくれました!」


「すごかったですね~」


「そして第1位!レオナルド テリオス選手!圧倒的な存在感でした!おめでとうございます!」


「おめでとうございます~」


「これを持ちまして、学内新人戦全日程を終了とします。皆さんありがとうございました!」



わあぁぁぁぁぁ。



観客席も大盛り上がりを見せた。


「…華ちゃん!黒崎さんのところに行きましょう!」


かのんちゃんは私の手を引きながら救護室に誘導する。


「ま、待ってよ、かのんちゃんっ」


「俺らも行くか」


「そうね」


こうして4人は救護室に向かうのであった。

少し遅れましたが、皆様あけましておめでとうございます!

今年も劣弱護衛をよろしくお願いします!

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