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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第2章 学内新人戦編
26/61

第26話 新人戦決勝③

長く続いた学内新人戦。

その長き戦いに今、決着がつかれる。


「さぁ、ここから最後のあがきをしようか」


俺は鞘付き剣をレオナルドに向けながら言い放つ。


「もう君の身体も限界なんじゃないかい?」


「お前こそ、あんな魔法撃ったら魔力なんて空っぽじゃないのか?」


「まさか。僕はここからだよ」


「強がりを」


レオナルドに強がりと言った俺だが、左腕以外は全身ボロボロだ。

歩くことさえ、厳しい状況。

そもそも、前回同様にこの力も使いすぎると意識が飛ぶ。

強気に息巻いたものの、危機的状況は圧倒的に俺の方。

俺の言葉に騙されてあいつから突っ込んでくれたら御の字ではある。

…だが、まったく勝算がないわけでもない。


「いつの間にか身体強化も解けてるぞ?降参した方が身のためだぞ」


「魔力を残すために解いたんだよ」


レオナルドは剣を構え、攻撃の態勢を整える。


「では、続きと行こうか」


そう言いながら、レオナルドが突貫してくる。

突っ込んでくるのは好都合。

あとは身体がうまく動けば…だが。


「しゃらくせぇ!」


レオナルドの攻撃を鞘付き剣を持った左腕一本ではじく。


「その手以外は動かないみたいだね」


「どうだかな」



ギイィィィン。



剣で剣をはじこうとするが、レオナルドが押さえつけてくる。


「この距離での魔法は耐えられるかい?」


「余裕だな」


「ふふっ。君こそ強がりじゃないことを祈るよ」


レオナルドの剣に魔力が集まりだす。


「『王剣風圧エィペ・ロイ・プレッション』」


至近距離での魔法の発動。

レオナルドもまだ魔法を出す力を残していた様子。

剣から放たれる風圧に全身が傷だらけになる。

だが、なんとか左腕の邪悪なオーラで致命傷は避け続ける。


「こんな至近距離で魔法とか…お前もただではすまねーぞ!」


「僕は必ず勝つっ!そのための犠牲にっ!躊躇いはないっ!」


思っている以上の気迫に少し押される。


「ちっ…くそっ…。力貸すってんなら…もっと踏ん張れよ!」


左腕の力を出し惜しみせず、早めの決着を図る。


「はあぁぁぁぁ」


「うおぉぉぉぉ」


互いに譲らないぶつかり合いが繰り広げられる。



ドォォォン。



ぶつかり合った力は相反し、爆発する。

爆風に吹き飛ばされる2人。

2人はステージ端で倒れ込む。


「くっ…」


「…」


俺は身体を動かそうにも指1つ動かない状況にあった。

おまけに声も出せない。

力の代償が来たにしては早すぎる。

体力のなさが悔やまれる。


「ふーっ」


深く深呼吸しながらレオナルドは剣を支えにし、ゆっくり立ち上がる。

…くそっ。

まだ動けるのかよ。


「…もう、力尽きたみたいだね」


レオナルドは不敵に笑う。


「レオナルド選手起き上がりました!対する黒崎選手は立ち上がれない様子!」


「しぶとかったけど、これでようやく終わりだ」



ズルズルズル。



レオナルドは剣を引きずりながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


「決着をつけようか」


レオナルドにも疲労が見える。

ゆっくり、ゆっくりとこっちに近づき、とうとう俺の所までたどり着く。

そして俺の勲章に向けて剣を突きつける。

…ここまでか。


「………ん!」


ふと、どこからか声が聞こえてくる。

幻聴か。

俺も焼きが回ったみたいだな。


『……して、迅!』


いるはずのない人の声が聞こえてくる。


『しっかりして、迅!』


俺はあわてて視界に入る限りに辺りを見渡す。

だが、その声の主はどこにもいない。

それでもこの耳には、はっきりと俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


辺りを気にしている俺に気づいたのか、レオナルドが一瞬止まる。


「…なにを探している?」


『迅!なにしてるの!私の代わりに決勝戦に立っているんでしょ?それなら勝ってきなさい!』


フッ。

あまりの無理難題に笑ってしまう。


「…何がおかしいんだい?」


レオナルドも困惑している。

そりゃそうだ。声も出せない奴が負ける寸前で笑いだすなんて、一種の頭の可笑しいやつだ。


『私の声が聞こえているなら立ちなさい!』


お嬢の声が鮮明に聞こえてくる。

なぜか俺の頭の中だけ。

ほんとに幻聴なんじゃないだろうか。


主人(あるじぃ)。華の嬢が目を覚ましたみたいじゃからぁ、一方的な通信を飛ばしておるぞぉ』


メメからの伝達に状況を把握する。

幻聴じゃなかったのか。

…まぁ、お嬢が目を覚ましてよかった。


「…まだ立てたのかい?」


なにいってんだ。

声も出ない俺が立つなん…て…?

いつの間にか無意識に立っている自分に気づく。


「…あ?」


思わず変な声が出てしまう。


「まだそんな力が残ってたなんてね」


自分でも驚いている。

…お嬢の言葉で元気になるなんて、現金な奴なんだなって再認識する。


「俺もびっくりだよ」


邪悪なオーラを纏っている左腕を構え、レオナルドに向かって態勢を整える。


「次が最後の最後だ」


「そうであってほしいね」


レオナルドも再度剣を構える。


「そういえばさっき、俺の戦う理由を自己満足だとかなんとか言ったお礼をしなきゃな」


「…?あぁ、さっきの言葉かい?事実を述べたまでだが?」


「俺はお嬢の護衛をすることに何の躊躇いもない。むしろ幸運なことだと思ってる」


「それは暗に自分のお嬢様が誰かの支えがないといけないくらい弱いと言ってることと同義ではないのかい?」


レオナルドも自論で返す。


「…たしかにな。でもそれでいんだ。人間は弱い。なんでも1人で背負えるほど強くねーんだよ。それにお嬢が弱いのは事実だ。だから俺がいる」


「それも君が強ければの話だけどね」


「お前の言う強さは力しかないのか?精神とか、感情とか、そんなのはお前の中にはないのか?」


「僕の中にそれがあるかと聞かれたら、確かにある。でもそれは虚像だ。本物の強さじゃない」


「…なるほど。それがお前が生きてきた答えってわけだ。可哀そうなもんだな」


「…僕は可哀そうとは思わないが?」


少し不機嫌そうになるレオナルド。


「ちげーよ、お前じゃない。…お前のことを慕っている、お前の周りの連中が可哀そうなんだよ」


「僕を慕う…?僕の周り…?僕の家族はそんなに優しくないよ」


「お前の家族なんて知らねーよ。少なくとも俺は美登や吉田なんかはその類だと思っていたがな」


「美登くん…圭吾…」


レオナルドは考えるような仕草をする。


「お前がそんなんだから、周りが可哀そうだって言ってんだよ」


「…君には関係ない」


「そうかよ」


互いに武器を構えなおす。


「最後に1つ、お前の問いに答えといてやるよ」


俺は言葉を続ける。


「さっきの自己満足っていうの対しての答えだ。はっきり言ってお前の言うとーりだ。俺はお前の言う自己満足でお嬢のことを護衛として支え続けるんだよ!それが!その結果が!お嬢の最高の未来になることだと信じてな!」


「…まるで自分ならできるという慢心。呆れを通り越して感心するよ」


「ありがとよっ!」



ギイィィィン。



レオナルドの剣と俺の鞘付き剣がぶつかり合う。

俺の邪悪なオーラが放出している分、有利に働いている。


「このっまま!」


左腕+邪悪なオーラの腕力でじりじりとレオナルドを押していく。


「僕はっ負けるわけには…いかないんだっ!」


レオナルドも負けじと対抗するが、身体強化の乗っていない状況だとどちらが優勢か明らかだ。


「迅が押してる!」


「そんな奴に負けるな!」


「…黒崎くん!頑張ってください!」


観客席からの応援と、主席が負けるかもしれないという貴族たちの焦りと一部の番狂わせの期待が入り乱れる。


「これでっ終わりだぁ!」


レオナルドの勲章に届く。

俺の勝ち…になるはずだった。



バタッ。



…あれ?視界が横向いてやがる。

地面が真横に…?

何がどうなってる?

レオナルドの新しい魔法か?


「…っ。はぁっはぁっはぁっ」


レオナルドは息を荒くし俺を見ている。

魔法を使う暇すらないギリギリの状態であったことが見てわかる。

…じゃあなんで。

俺の疑問は外部の声で明らかになる。


「そ、そこまで!両者止まってください!救護班は早く黒崎選手を!」


音無2年の焦り声が聞こえる。

…あぁ、そうゆうことか。

俺はその焦り声で実感する。


「ん~。ほんとのほんとにあと1歩~だったんですけどね~」


…負けたのか、俺は。


「くっそ…」


「…」


「…くろ…さきくん…」


あいつらにも無駄に期待させちまったな。

あとで謝らねーと…。

…やべぇ、()()()の影響で…意識が…。

意識が遠のく中で、横にいるレオナルドは俺を見て、


「…君の強さ、その源…侮れないものがあったのは事実。…理解しがたいが、少し考えさせてもらうことにするよ」


…なに…いってんだ…お…まえ…。

俺の意識はそこで途絶えるのであった。

とうとう今大会の終了です(´・ω・`)

皆様は開催当時に誰が優勝するか分かりましたか?

よければぜひコメントなど残して、考えを教えてくだされば幸いです。

では、次の話で会いましょう!

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