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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第2章 学内新人戦編
25/61

第25話 新人戦決勝②

レオナルドの大規模は魔法によって直撃を食らう迅。

圧倒的な実力差を前に、ここからの逆転劇はあるのか。。


ー観客席①ー


「…迅の奴、勝算なしで戦ってるわけじゃないよな」


東郷 大樹は不安そうに問いかける。


「さぁ、そんなこと分からないわよ」


隣にいる宇佐 美鈴、通称うさみは髪を払いながら返事をする。


「…何か策があると思いたいですね」


うさみの横にいる天縫糸 花音は心配そうに両手を握る。


「あの人工魔装とかは使えねえのかよ」


「…あれほどの魔力、何度も使える方が奇跡ですよね…」


「だよな」


「それがなくても、充分強いけどね、あの男は」


うさみが淡々と告げる。


「…そうですよね!黒崎くんは勝ちますよね」


「勝つとは言ってないわ、かのん」


かのんはしょぼんとする。


「まあまあそんな落ち込むなって。どうにかなるだろ」


大樹は楽観的だ。


「…なによ、あれ」


うさみはステージを指さす。


「…あれは、魔法?規模が大きいですね…」


「あんなの食らったら、ひとたまりもないわよ」



ドオオォォォン。



「…黒崎くんっ!」


かのんが叫ぶ。


「こりゃぁ…」


「言葉も出ないわね…」


魔法発動後の衝撃に言葉に出ない3人だった。






ー観客席②ー


「防戦一方ですね」


レイリーは試合の状況を一言で表す。


「こりゃ迅も勝ち目ないか?」


横に寝そべりながら風間 風助は続ける。


「…主席君の実力が想定以上だわ」


水炎寺 波流渦は予想の範疇を超えたレオナルドの実力に困った様子。


「たしかに。あれほどの実力がイリーナルに在籍するのは惜しいですね。他学園がなんのマークをしていないなんて」


「うちは取らねえだろうなあ。取るとしたら聖マリか?」


「たしかに。聖マリウス学院なら充分入学に値するわね」


「取らなかったのは、理由があると思われますが…」


「そうね。単純に実力を測れなかった、または本人が断ったか」


水炎寺は考えながら理由を探す。


「思ったより、もっと単純かもしれないですよーお嬢様」


風間が水炎寺に話しかける。


「どうゆうこと?」


「あの主席には、欠陥がある。とか」


水炎寺とレイリーは落胆する。


「そんなわけないだろ。あの実力で欠陥がある方がおかしい」


「こればっかりはレイリーの言うことが正しいわ。何か根拠があるの?」


「うーん、レイリーに怒られるから言わなーい」


「おっまえっ…」


レイリーはふるふると身体を震わせる。


「怒らないから言ってみてちょーだい」


「…風」


風間は急に真面目そうな顔して言う。

さらに言葉を続ける。


「最初は遠いから見えなかったけど、何度もステージに立って見てみたんだけど。あいつの風、変なんだよね」


「変って?」


「強いやつってのはいろんな風の形がある、強そうな感じとかね。…でもあの主席にはそんな風は感じないし見えない」


「それは可笑しい話だ。現に奴はあの強さを誇っている」


「その代わり、人では耐えられないくらいの風を抱えている」


「人では耐えられない…魔力量のことかしら?」


「そんな感じの考えでいいと思う。あの主席…なんかやってるね」


「なにか、とはなんなんだ?」


「それが分かったら苦労しないよ。…まあそれが俺の言う欠陥たる根拠かな」


「強すぎる魔力が欠陥…」


水炎寺はまた独りでに考え事をし始めた。


「うおっ、そんな話している間に見てよ。あの魔法規模。あれも根拠の信用性を増すよねぇ」


目の前にはレオナルドの魔法により光に包まれる光景が見える。


「…ほんとなのか?」


レイリーは完全に疑いを晴らすことは出来ずにいたのであった。










ー実況解説席ー


「さぁ、始まりました決勝戦。この戦いをどう見ますか?先生」


音無2年が佐々木先生に尋ねる。


「う~ん。難しいところですよね~」


「と、言いますと?」


「確かにレオナルドくんに軍配が上がるのはそうなんですが~、黒崎くんがそう簡単に負けるとも思えず~」


「実際に黒崎選手は格上の次席、美登選手に勝ってここに立ってますからね」


「世間は早く負けろ~とか、思ってそうですけどね~」


「はたして2度目のジャイアントキリングがなされるかどーか、楽しみですね」


「さっそくレオナルドくんは魔法を使い、身体強化を図りましたね~」


「レオナルド選手からの攻撃は珍しい光景ですね」


「人工魔装を警戒しての行動ですかね~」


「あれを警戒するのは当然の判断ですね」


「でも黒崎くんが使えればの話ですけどね~」


「出し惜しみをしている、というわけではないと?」


「あれだけの力、何回も使えば苦労しないですね~」


「たしかに」


「んん~、防戦一方ですね~」


「あっ、でも一撃返しましたよ?」


「距離が取れたのはいいですね~」


「何か話している様子ですが…?」


「ふふっ。何を話しているんでしょうね~」


「み、見てください!あの魔力!次の一撃が勝敗を分けそうですよ!」


「あそこまでの魔力~。見事としか言えないですね~」



ドオオォォォン。



「…こ、これは…さすがにひとたまりも…」


「どうなりますかね~」


音無2年は唖然とする態度に対し、終始嬉々としている佐々木先生であった。






ー???ー


「…ここは?」


ステージにいたはずの俺は、見知らぬところに来ていた。

真っ暗は景色。

辺りには何もない。

ただの虚無空間とでも言おうか。

…いや、俺の正面にある()()を見つけ、言葉が詰まる。


「…心臓」


そう。

目の前にあるのは、鎖につながれた心臓。

お嬢が攫われたときに出てきた心臓だ。


「…なんだってこれがここに」


驚きを隠せずにいる俺。

あまり見たくないものではあるが、それから目を背けることができない俺もいる。



ドクンッドクンッ。



脈打つ心臓は邪悪なオーラを纏いながらゆっくり動いている。

すると鎖に繋がれているはずの心臓から、滲み出たオーラが少しずつ近づいてくる。

離れようと身体を動かそうとするがピクリとも動かない。

次第に邪悪なオーラは俺の左腕を巻きついていく。


「力を貸すってのかよ…」


にわかに信じられない光景だが、この力は俺に手を貸す気があるようだ。


「…信じられるかよ。こんな力なんていらねー。さっさと離れろ」


俺の言葉とは裏腹に左腕が見えないくらいに巻き付いている。


「…ちっ」


この心臓を見ていると、昔のことを思い出す。



『俺が代わりに受ける』


小さな少年は強い意志を持って声に出す。


『お前が?冗談を言うのも大概にしろ』


『そうよ!あなたがそんなことする意味はないわ』


小さな少女は声を大にして否定する。


『意味はある』


『…本気なのか?』


『冗談で言うと思ってんのか!?自分の娘をないがしろにするような奴は黙ってろ』


少年の声がだんだんと怒りを含んでいく。


『これは私が受ける義務なの。お願いだから危ないことはしないで…』


少女は泣き出し、説得を試みる。

が、少年の決意は固い。


『お前の血族が受けるはずの()()、さっさともらってやるよ』


『ふっ。私の尻拭いを、私のことを一番と言っていいほど憎んでいるお前が受けるというのか?』


『黙れよ。お前のためじゃねえ』


そういって泣いている少女を見る。


『そんなに(出来損ない)が大事か?』


『…殺すぞ?』


『出来ぬことを言うな。箔が知れるぞ』


『語れるほどの箔なんて持ち合わせてねーよ』


『そうか』


『だが、もらう代わりの交渉材料を出す』


『勝手に引き受けといて、交渉とは片腹痛い』


『…これ以上、彼女に被害を加えるな』


『私の(もの)をどうしようが私の勝手だが』


『お前が()()を受けて死んでくれても構わないんだぞ?』


『私はそれを受ける気はない。そのための(出来損ない)だ』


『いいから約束しろよ』


『その年で愛を語るのか。未熟の分際で』


『…どうすんだよ』


『私には何の得もないのだが…。まぁ、いいだろう。さっそくお前には()()を受けてもらう』


『嫌っ!やめてっ!』


少女は少年に駆け寄ろうとするが、近くにいる側近に抑えられそばによることができない。


『大丈夫。こんなのもらったところで、大したことねーよ』


少年は笑顔で少女に語りかける。


『それでは、譲渡の議を始めさせていただきます。こちらに』


側近の1人が少年を魔法陣の上に誘導する。


『さらばだ。愚かな少年』


『いつまでも余裕そうな顔しやがって。その顔、いつか歪ませてやるからな、覚悟しておけよ』


『期待しているよ』


魔法陣が光り、少年を包み始める。


『嫌っ…いやぁー!』


『…幸せになってくれよ』


その言葉を最後に魔法陣が発動し、少年を包んでいくのであった。




昔のことを思い出し、ある人物に対する憎悪が増す。


「あいつを殺すまでは、絶対に死ねねえ」


その決意とともに真っ暗は世界は徐々に晴れていく。


「…ひとまず、レオナルドだな」


まずは目の前の敵を倒す。

お嬢のために。

深く深呼吸をする。


「…最後に足搔くか」


真っ暗は世界は完全に晴れ、光に包まれていくのであった。






ー現在ー


「爆発の衝撃により、現在の状況は目視できないですね」


「黒崎くんもさすがに~て感じですかね~」


実況解説席も現状を理解するのに時間がかかっている。


「…これを食らって動けるなら大したもんだ」


徐々に土煙が晴れていく。


「…これで終わりにしてほしかったか?」


するはずのない声にレオナルドは驚く。


「…驚いた。まさかまだやる気かい?」


「往生際の悪さには定評あるからな」


そこにはやられた…はずの男がいた。


「迅!」


「なによ、ピンピンしてるじゃない」


「…黒崎くんっ」


3人が喜びの声を上げる。


「おぉーっと!黒崎選手、まさかあの状況で持ちこたえていた!?」


「期待を裏切りませんね~」


「…それは何だい?」


レオナルドは俺の左腕を見ながら問いかける。


「なんだろうな?俺も早く取りたいんだが、離れてくれねーんだよ」


「それが最後の奥の手ってわけだ」


「俺の限界を勝手に決めないでほしいね」


「あれは…」


決勝戦を観戦していた学長が俺の左腕に巻き付いている邪悪なオーラを見て考え込む。


「美登少年は理解していたが…まさか君もなのか…?」


独りでにぶつぶつと語る。


「だとすれば、初戦の『呪い』への対応・そしてその理解度。何もかも分かっていたかのように行動できたのにも頷ける…」


学長は俺を見ながら言葉を続ける。


「黒崎少年…君はどこまで…」


「見るに堪えないくらい邪悪な感じがするんだけど、それは大丈夫なのかい?」


レオナルドが目を細めながら問いかける。


「俺の心配でもしてくれるのか?」


「いや…君も大変なんだね」


「…?」


「いいよ。今後こそ君を倒して、この試合の勝者になろうか」


「ほんとの決着をつけようぜ」


俺の新人戦決勝戦、最後のあがきが今、始まる。

主人公の過去が少し明るみになりましたね(´・ω・`)

今後少しずつ出していけたらいいと考えてます!

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