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第12話 抗争の始まり

 クラス内でのやり取りを見ていた工藤珠希と工藤太郎はサキュバスとレジスタンスも上手くやっていけてるのだと思っていた。お互いに好きなことを認め合ういい関係だと思っていたのだが、SRクラスとは違いSクラスとRクラスはちょっとした小競り合いが頻発していた。

 その小競り合いは毎日どこかしこで起きていて、日常の一コマになっていたはずなのだが、この日に起こった小競り合いは少しずつ規模を拡大していき、昼休みの時点では一年生全てを巻き込んだ抗争に発展していた。


 それを伝えに来たのはイザーだったのだが、それを伝えられたのもイザーであった。

 工藤珠希は教室に入ってきたイザーの姿を見ていつの間に教室から出ていたのだろうと思っていたのだが、教室に入ってきたイザーが話をしているのはさっきまで一緒に勉強をしていたイザーなのだ。

 実は双子だったのかなと思って見ていたのだが、教室に入ってきたイザーが話し終えると同時にその姿は消えていたのだ。

 クラスのみんなはその事を全く不思議に思っていないようなので驚いたが、工藤太郎もイザーがやってきてイザーと話をして消えたことについて疑問を感じていないようだった。サキュバスの件でも感じていたのだが、工藤太郎は何か隠し事をしているのではないかと考えてしまう工藤珠希であった。

 

「きっかけは一年生のサキュバスの子がレジスタンスの子に惚れちゃったって事だったんだよ。好きになるってのは誰にも止められないし責められるようなことでもないと思うんだ。この学校にいるサキュバス達だって珠希ちゃんに惚れて学校に来るように仕向けたんだし、サキュバスの一年生を責めることなんて誰も出来ないよな。で、そこで問題が起きたんだよ」

「問題って、何が起こったんだよ。と言うよりも、なんでお前がそんな事を知ってるんだよ。ずっと一緒に教室にいたはずだし、誰かがこの教室に入ってきたことも無かったはずだぞ。それなのに、なんでお前はそんな事を知ってるんだよ?」

「そんな細かいことは気にするなよ。太郎君らしくないな。俺の知っている太郎君はもっとどっしりと構えてる男なはずだぜ」


 サキュバスの事やイザーが二人いたことについて何も驚いていなかった工藤太郎が野城の知っている情報には驚いているようだ。

 驚く基準がまったく分からない工藤珠希は何も考えられなくなってしまった。何も考えることが出来なくなってもお腹は空いているのでここはいったん落ち着くためにもお弁当を食べようと鞄に手を伸ばしたのだ。


「珠希ちゃんてさ、太郎君と血は繋がってないんだよね?」

「うん、そうだよ。ボクたち血は繋がってないけど小さい時からずっと一緒にいるし、弟みたいなもんかな」

「へえ、そういう感じなんだね。私はてっきり太郎君の方がお兄さんなのかと思ってた」

「私も愛華と同じこと考えてたかも」


 栗鳥院柘榴も鈴木愛華も人を見る目が無いと思ってしまった工藤珠希ではあったが、今まであってきた人達も工藤太郎の事をお兄ちゃんだと思い込んでいる人ばかりだったという事を思い出してしまった。その事はすぐに忘れようと思ったのだけど、他のクラスメイト達も工藤太郎の方がお兄ちゃんっぽいと感じているようで忘れることは出来なかった。


「そう言えば、さっきイザーちゃんがイザーちゃんと話をしてたように見えたんだけど、イザーちゃんって双子なの?」

「イザーちゃんは双子ではないよ。なんて説明したらいいのかわからないんだけど、イザーちゃんはサキュバスでもあるんだけど量産型のアンドロイドでもあって一流の魔法使いでもあるんだよ。珠希ちゃんの顔は何を言っているのかわからないって感じになってるけど、イザーちゃんはそういう人だから気にしないでね」

「人ではなくてサキュバスだけどね」


 そのツッコミが必要なのかと思ってはいたものの、何となく栗鳥院柘榴に対してツッコムのは良くないような気がして黙って見守っていた工藤珠希であった。


「珠希ちゃんのお弁当って自分で作ってるの?」

「違うよ。私はギリギリまで寝ていたいタイプだからお弁当とか作れないんだ。でも、時々晩御飯は私が作ってるよ」

「という事は、それってお母さんが作ってるって事なのかな?」

「たぶんそうだと思うけど、時々太郎がお弁当を作ってたんじゃないかって思う時があるんだよね。別にそれはそれでいいんだけど、早起きしてお弁当造りを手伝うことくらいなんでもありませんよ。みたいな顔で見てくるのは少しイラっとしちゃうんだよね」

「気持ちはわかるけど、そんな事でイライラするのは良くないよ」


 お昼休みなので仲の良いグループに分かれてお弁当を食べているのだが、レジスタンスグループは3つに分かれて楽しそうに食事をとっていた。

 その他のサキュバス達はいくつかのグループが出来ているものの、何かを食べているという姿は見られなかった。サキュバスの食生活が気になっていた工藤珠希だったが、何も食べていない彼女たちを見て少しだけガッカリしてしまっていた。


「さっきイザーさんが教えてくれたんだけど、一年生のサキュバスと一年生のレジスタンスが抗争を始めちゃったんだって。一年生同士だから仕方ない部分もあるんだけど、去年よりは死人が少ないといいわよね」

「そうですね。今年は珠希ちゃんと太郎君がいることだし、死者は出来るだけ少ない方がいいですよね」


 抗争に死者。

 今まで実際に聞いたことが無い言葉ではあったが、思わず箸を止めてしまうくらいには衝撃的な言葉であった。

 抗争があるのは知っていたが、死者が出ても当然という二人が少しだけ信じられなくなった工藤珠希であった。

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