第3話「神童たちの目覚め」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
お姉様が剣だけでなく、歌や踊りの練習も始めた日を覚えている。
今朝みたいに天気が良い日だった。
柔らかい日差しを浴びながら木陰で涼むお母様に、お姉様は「前みたいに歌や踊りをやりたい。教えてほしい」とお願いしていた。お母様はとても喜んでお姉様に手取り足取り教えた。
あの頃はまだお母様は元気だった。
お姉様の踊りは蝶のように軽やかで優雅で見惚れるほど美しかった。花々が風に揺れるようにお姉様の身体が踊る。いつまでも見ていられた。
私も踊りたくなって「私も私も」と参加してみたけど全く思うように踊れなくてすぐに辞めてしまった。足はもつれ、体が思うように動かなかった。
お姉様はまさに神童。
歌、踊り、剣はもちろん、料理、裁縫、何をやらせても完璧。
さらに女の私がときめくほど色っぽい。この私が少女に恋に落ちるって一体どういうことなの?
小鳥たちのさえずりに混じって剣を振る音が聞こえる。お姉様に違いない。
鳥たちもお姉様の素振りに合わせて歌っているかのようだわ、なんて。
お姉様はたぶん毎日欠かさず訓練を続けている。
寝たきりだったお母様がいよいよ長くないとなってから、お姉様は急に私たちに剣や踊り、歌などを厳しく教えるようになった。
この先子供たちだけで生きるための備えだったんだろうと思うけども、あの時のお姉様の鬼気迫った顔は忘れられない。本当に毎日泣かされた。
お母様が亡くなった後、月明かり団に参加してからはそんな訓練もなくなって私たちには求めないけども、お姉様は変わらず鍛え続けている。
神童が毎日努力してしまったら私たち凡人の立場はどうなるのよ?
「あなたたち2人こそ神童よ。1歳には言葉を話して読み書きができるようになったでしょう? それにお母様の教える魔法は全て習得していた。一緒に旅するようになってさらに凄い才能を発揮して。私にはできない芸当よ」
そう言われて嬉しかったのを思い出したわ。うふふ。
私が読み書きできるのは当然として、あの小僧もすぐに読み書きできるようになったのは驚いたわ。さすが双子ということなのかしら。
そういえば、お姉様が魔法を唱えているのを見たことがない。練習している姿も見たことない。何でも完璧だと思っていたけれどもお姉様にも苦手なものがあるのかしらね。なんだかちょっと安心しました。
小鳥たちが集まってきてだいぶ賑やかになってきたわね。「鳥をちょっと静かにさせる魔法」ってあったかしら…
私たち双子が使う魔法は「生活魔法」と呼ばれるもので、ちゃんと訓練すれば誰でも簡単なものなら唱えられる、生活に密着した魔法群。
お母様は生活魔法をたくさん知っていて私たちはそれを教えてもらった。
「固い結び目を緩める魔法」とか「足の小指をタンスから守る魔法」のように使う場面が限られているものから「水を温める魔法」「探し物から音を出して場所を知らせる魔法」のようにけっこう便利な魔法もあって侮れませんのよ。
変な魔法ばっかりと思ってたけども、お母様にたくさん教えてもらっておいて本当に良かった。昨日も盗賊を転ばせることができたし。
(続く)
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★あとがき★
第1,2話は弟の視点で書きましたが、第3話は妹の視点で書いてます。謎の多い姉を弟妹があれこれ考えながら語っている形で読者とともに作者も姉がどういう人なのか探ってます(笑)
妹アンナは妄想強め、暴走がちなのでどんどん文量が増えていく。今回も妄想だけで1.5回分になってる。。
「生活魔法」は完全に葬送のフリーレンから拝借しました。ゆるい感じが大好きな設定。