第2話「道化師の姉」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
地元エルミナルの一座が一通り披露した後に月明かり団が舞台に上がった。輝く月を背に、まさに月明かりの舞台が始まる。
ステファン座長が名乗りを上げ、観客の期待が高まる。
最初は曲芸師ピーターのジャグリングだ。彼は色とりどりのボールを空に舞い上げる。リズミカルな動きで、次々とボールを加え、遂には7つのボールが空に舞った。観衆からは驚嘆の声が上がった。
続いて俺とアンナによるマジック、いや本当に魔法を使ってるインチキマジック。
あまり知られていない珍しい魔法を使ってコミカルな舞台を作る。
アンナが「遠くから猫の鳴き声を出す魔法」で舞台のあちこちから鳴き声を出して、俺がそれを追いかけては転んで笑いを取る。
今度は交代して俺がアンナに「声色が変わる魔法」を掛けた。
そうするとアンナが話すたびに、彼女の声はまるで違うものに変わった。
アンナの声が小さな妖精のようになると、俺は妖精の友達として振る舞い、極端に高い声で「おお、アンナさん、今日もキラキラしてるね!」と大げさに言いながら、くるくると踊りを披露する。
観衆は俺のおどけた動きに大爆笑だ。
次にアンナが力強い戦士の声を出すと、俺は盾と剣を手に「わ、わたしは勇敢な戦士です...怖くなんかないぞ!」と声を震わせてみせる。
戦闘の構えを取るも、足を滑らせたり、盾で自分の顔をぶつけたりする。
このおかしな展開に喜び、再び観衆は大笑いをしている。
この楽しい掛け合いが終わって、魔法を解除するとアンナの本来の声が戻る。
俺らは照れつつ笑顔を見せ、2人で観衆に向かってお辞儀をした。
場が温まってきたところで、姉と座長の妻子ラミナ、ダニエラの3人による踊りと歌。
色鮮やかな衣装を身にまとい、優雅な踊りを披露する。姉の透き通った歌声が母と娘のダイナミックなダンスと調和し、観衆を魅了する。
ミハイルとペトルは様々な楽器を奏でて舞台を演出する。
最後に姉が舞台に残ってこの町を風刺する。風刺は月明かり団のメインイベントだ。
やってみたら姉は剣士だけでなく道化師としてもズバ抜けた才能の持ち主だった。
踊れば全員の目を惹き、歌えば全員の心を震わせる。
両肩幅のつばが広い帽子に顔を覆うフェイスベールをつけていて、どんな表情なのか分からないにも関わらず、見ている人聴いている人の心を奪う。誰にも真似できない魅力を放っていた。
風刺も得意で、笑いを取りながらその町の政治や社会を痛快に批判する。批判されている領主も最初は自分のこととは気づかずに大爆笑しているくらいだ。
この日はエルミナルの治安をチクリとつついた。
(続く)
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★あとがき★
旅芸人ってどんな風にショーを行ってたのかなって考えていったら、一座という劇団みたいな単位があってその一座の中で団員が様々な芸を披露してショーを行うことになりました。サーカスみたいな。
あまり登場人物増やしたくないんですが一座を考えたら主人公たち含めて9人になっちゃいました。覚えてもらえるよう特徴つけないと・・・汗
ステファン、ラミナ、ダニエラ、ミハイル、ペトル、ピーター、ターニャ、トーマス、アンナです。頑張ります!頑張らせます!