第2話「道化師の姉」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
今日と明日の晩、ここエルミナル港町でお祭りが行われ、俺ら「月明かり団」は他の一座とともに舞台で様々な芸を披露する。
ステファン座長は長年この辺りを回っている旅芸人で、各地に知り合いがいて大抵の祭りに出演できる。
あちこちの祭りに出してもらいながら、月明かり団は知名度を上げてきている。ステファン曰くは俺ら、いや姉が加わってから大きく潮目が変わったそうだ。
2年前、俺らが住んでいた町フェイルノスに月明かり団がやって来た時が出会い。
その時、彼らの看板道化師が突如失踪し、さらには護衛を頼んでた冒険者たちも報酬のいい仕事に飛びついて居なくなってしまっていて、ステファン座長は途方に暮れていた。
そんなところに道化師志望の姉弟が現れ、しかもこの姉弟たちが一座の護衛も担った。
座長は「今でもあの奇跡の日が忘れられねぇ」と酔いが回ってくると必ずこの話をする。そんな偶然普通あるわけないよなぁ。
道化師というのは、ジャグリングのような曲芸や歌や踊り、演劇や謎かけ、漫談などで観衆を笑わせる芸人だ。
踊り子や吟遊詩人とは違って、道化師は時には社会や政治を風刺したパフォーマンスを行う。
それは王や貴族などの領主を批判するものだったりするけども、風刺は道化師の特権として許されている。
領主たちとしては道化師によって民衆の不満をガス抜きできるならありがたいし、批判される内容は民衆の声なので、まずは真摯に聞くのが統治者のあるべき姿だと考えられている。
中には王や貴族に仕える「宮廷道化師」という者も存在する。
彼らは宮廷の人々を笑わせるのとともに、統治者の側近として個人的な話し相手を務めたり、率直な意見を言う助言者の役割を果たしている。
この封建社会には珍しく自由な立場なのが道化師なのだ。
とはいっても度が過ぎれば、反感を買って命を落としかねない低い身分であることは忘れちゃいけないし、旅芸人を胡散臭い存在と見ている人たちも少なからずいる。
(続く)
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★あとがき★
この物語、特に第1部で重要な要素になる「道化師」の説明が登場しました。
ファンタジー世界といったら中世ヨーロッパ。この時代の芸人って身分も扱いも低いけど、人々を楽しませてる。さらには宮廷仕えの道化師は政治家っぽいこともしてたみたい。そんな不思議な存在を知ってこの物語は膨らんでいきました。