第1話「無双剣士の姉」- 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「話し中すまん、何かがいる気配がする。見てくれないか」
座長が馬車の中に声を掛ける。後ろの馬車にも合図を送って2台は森の中で停まった。
姉は座長の隣に行き、周囲を見回す。
「トーマス、後ろの馬車を隠せ」
「アンナ、座長と馬を守れ」
と指示し、自分は馬車を降りて2台の間に立つ。
後ろの馬車ではミハイルとペトルが武器を構えて周囲を警戒している。
彼らは楽器担当だが一座の中では戦えるほうだ。特にミハイルのナイフ捌きは見事なもので頭の上のリンゴをナイフで射抜くくらいのことは朝飯前にできる。
俺も姉の横に降りた。魔法で森の風景をコピーし、後ろの馬車全体にそれを掛ける。背景コピペだ。準備はできた。
森はこれから始まる戦いの開始を宣言するように静まり返った。
剣を抜く音。姉とアンナ。
俺も抜いて構える。どこから来る・・・
同じような形の樹木がいくつも。葉が音を立てる。風。
後ろから呼吸。振り返る。
何もいない。ミハイル、ペトルか。視線を戻す。
木陰でなにか動いた?
突如真っ黒な虎に似た魔物が飛び出し、馬に襲いかかってきた。
ギィン!
アンナがとっさに飛び出して剣で牙を受け止めた。
しかしその小さい体では受けきれず、後ろに飛ばされ馬車から落ちた。馬も驚いて暴れ始める。
アンナに駆け寄ろうと踏み出したら肩を押さえられた。「索敵続けろ」と小さく言い、姉は弾丸のようなスピードで黒虎の方へ走っていった。
と、こちらにも別の黒虎が現れた。
かなり大きい。剣を構えて距離を保つ。
ザン!ザン!ザン!
前の馬車のほうで太刀の音がした。
こちらの黒虎が一歩二歩と近づいてきた。
剣を大きく振って威嚇し、追い払う。倒せなくても近づけなければいい。
時間を稼いでいれば・・・
ザン!
戻ってきた姉が黒虎の首を薙ぎ払った。
命を失った魔物は黒い砂のように形が崩れ、やがて消えた。
「終わりだ。他が来ないうちに早く森を抜けよう」
姉が全て片付けてくれる。
一座と旅に出て2年、何度も魔物や盗賊などに襲われたけども絶体絶命の危機に陥ったことはない。姉が強すぎるのだ。
「早くしないと祭りが始まっちゃうよ!」
もう姉の声は戦士から道化師のそれに戻っていた。出番が気になっているようだ。
「ターニャたちが居なけりゃ今日だけで2回死んでたよ。この辺も物騒になったもんだまったく。さぁ今度こそ町だ。なんとか祭りには間に合うだろう」
旅芸人一座は森を抜けてエルミナル港に繋がる町に入っていった。
(第1話 完)
読了ありがとうございます。
☆☆☆☆☆の評価をぜひお願いします。
星1個でもいいんで♪
★あとがき★
この物語はたぶんジャンルはミステリーなんですが、何が事件なのかに辿り着くまでしばらく掛かるし、ファンタジー世界なんだからやっぱり戦闘シーンも欲しいよなと思って書いてみたら、姉ターニャが強すぎた、からそのままタイトルにした。というお粗末な話です。
★この世界・物語の設定★
「魔物」
自然界のものではなさそうな種族。どこから現れているのかは不明。
動物型、人間型など様々存在。言葉を話す魔物はまだ確認できていない。命を失うと黒い砂のように崩れて消える。
図鑑もないのに魔物の名前をみんなが知ってるのはなんか不自然だなと思い、固有名称は登場しない予定。
次話、道化師としての彼らを描きます。