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第12話「弟の告白」 - 3

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

トーマスはソフィアの隣に移動して積極的に話しかけていた。

「ソフィアさん、歌はどうやって作るんですか? 天から降ってくるような感覚なんですか?」


「歌はね、そこに居るんだ。いや、そこかしこに居るんだよ。その中の一つが強くこう、私に歌わせるんだ。でもその歌はね、私は最初から知っていたんだ。あ、トーマス。ごめんね、すごく嬉しかったよ」


「今のも難しいね~、天から降ってくるわけじゃないことは分かったね。なんで謝ってるんだろう? もう訳わかんないよね~、でも楽しいからいいじゃん!」

ファエリエは少し酔いが回って上機嫌だ。


トーマスはくじけずに話を続ける。

「それにソフィアさんの使っているあの楽器、見たことないものですけど、どこの楽器なんですか?」


「あれはバンドネオンだよ。うーん、いつどこで手に入れたんだっけ」


ファエリエが割って入る。

「ソフィアはさ、生きてる世界が違うから『これだ!』と思ったらそれ持ってっちゃうのよ。どういうことかわかる? 盗みよ盗み! 無意識で無邪気な窃盗常習犯。私がそばに着くようになってからは店主にバレる前にお金をそっと置いたり、高すぎるものはソフィアから取り返してバレる前に戻してるんだけどね。もう吟遊詩人ソフィア様を支えるのは大変なのよ! わかるか少年!」


なんとファエリエは、ソフィアが意識せず盗んでしまったものを気づかれることなく元に戻す為にその盗賊スキルを駆使しているという。


「ファエリエに会えて私は生きているよ。ありがとう」


「なに言ってるんだソフィア! お前がいなかったら私はとっくにこの世にいないさ。命の恩人! 友よ~」

酔っ払ったファエリエがソフィアに抱きつく。


ソフィアのあまりの浮世離れ具合に圧倒されていたが、それさえも魅力に感じてますますトーマスは彼女に惚れ込んでいた。


◇ ◇ ◇


夕食が終わり、町の灯りがぼんやりと周囲を照らす中、トーマスはついに勇気を振り絞る。

彼はソフィアに向かって、彼女の歌とその魅力に心を奪われ恋に落ちたことを伝えた。


「なんと言ったらいいのか・・・一目みた時からソフィアさんに夢中でした! その・・・良かったら僕と・・・」

突然のことに全員驚いて見守っている。


ソフィアは優しい微笑みを浮かべながら答えた。

「ありがとう。ごめんね。すごく嬉しかったよ。トーマスとは一緒だよ」


「え…」

トーマスはなんと返事をもらったのかがわからなかった。

ファエリエがそばに来る。


「少年、つらいだろうがあたいの話を聞きなさい。たぶん君はフラれた。さっき一度同じことをソフィアに言われただろ? あの時にソフィアはこの場面が見えていたんだ。あの時既に君はフラれていたんだ」


「『一緒だよ』の意味はあたいもわからん。あんた達2人は何かが共通してるのかもしれないし、この後またあたい達はもう一度出会うのかもしれない。でもともかく見ろ、ソフィアはもうあんな遠くまで歩いてっちゃった。もう他のことを考えてるよ。そういうことだ」


挿絵(By みてみん)


トーマスの初恋は意味もわからないまま終わってしまった。

ターニャとアンナはそっとトーマスの肩に手を置いた。

エレサルたちは勇気を振り絞った少年に、音を立てずに拍手を送っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

この物語初の恋愛エピソードでした。

ソフィアを口説くのは大変そう。いやそれ以前にまともに話するのも厳しそう。

トーマスは若いんだから挫けずに生きていって欲しいです。


ここまでで第一部前半は終了です。

次話、間奏という意味の「インタールード」というエピソードを挟みます。

インタールードは本日11:40更新します。

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