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第1話「無双剣士の姉」- 2

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

座長は馬にムチを入れた。

再出発した馬車は、背の高い木々で覆われた薄暗い森の中を2台連なって進んだ。


馬車の中、曲芸師のピーターが俺とアンナに小声で聞いてきた。


「なぁなぁ、ターニャってなんであんなに強いんだ? 道化師より戦士とか騎士になった方がいいんじゃないかね。俺ぁ、あんなに強いヤツ見たことないぞ」


ピーターは好奇心旺盛で話好き。陽気な黒人キャラを意図的に演じているのか、それはもう馬車では常に喋っている。


「姉さんは冒険者をやってたんだ。俺らもそれについて行っていたけど、姉さんは昔からとっても強かったよ」


「私たちはお姉様のような才能がないから…」


「いやいやお前らも十分すごいって。今年ようやっと12歳だろ? 信じらんねぇよ。…じゃなくておかしいだろっての。そんな強い冒険者がなんで踊ったり歌ったりしてるんだよ」


姉はこの話が聞こえているのかいないのか、腕を組んで俯いている。大きな帽子とベールに顔が隠れ表情が見えない。大概、姉はこうした雑談に混ざってくることはない。


挿絵(By みてみん)


「ピーターさん、お姉様に自分で聞いてみれば?」

アンナが突き放した。


「いや・・・なんか事情があるのかなと思ってさ。お袋さんが亡くなったばかりでウチに入ったのも、なんか悲壮感を感じるというか・・・」


「それ、私たちに聞くのと何が違うのよ」


「お母さんが亡くなった後、姉さんが『これからは笑顔を届けよう』って道化師になることを決めたんだ。俺らはお父さんも居ないからね。それで旅に出たんだ」


「そうか、親父さんも居ないのか」


「うん、会ったことない。どんな人だったかも知らない」


俺ら双子が生まれた時には、もう父親はこの世にいなかった。どんないきさつだったのかは母親も姉もこれまで話してくれていない。


そして母親も2年前、俺らが10歳の時に病気が悪化して亡くなった。その後姉弟はこの一座に加わって故郷フェイルノスを出た。


「お父様はけっこう名の知れた戦士だったのよ。剣でお父様に敵う人はいなかったらしいわ。『お前には才能がある』って言われて小さい頃から鍛えられたけど、私がやりたかったのはみんなを笑顔にすること。冒険者もやってみたけど、今の道化師のほうが楽しい」


姉は腕を組んで俯いたまま話した。


俺の目はまんまるになっていただろう。初めて姉から父親の話を聞いた。アンナもそうだったみたいでやはり目を丸くして驚いている。


「そういうけど親父さんが亡くなった後っていったらターニャは13歳とかそんなもんだろ? そんな少女が冒険者やって腕を磨いてたとはやっぱり凄え、只者じゃないな! 俺も剣の修行しようかな〜。そうだ、ターニャ教えてくれよ! 舞台でも使えるかもしれねぇし」


残念ながらピーターは話の前半しか聞いてないようだ。


修行するのは止めないが、姉の指導は本当に厳しいぞ。まだ小さい弟たちにそこまで求めるかって何度思ったことか。お陰で冒険者としてなんとかやれたし、この一座を護衛することもできているけど、二度とあんな辛い訓練はごめんだ。


あれを味わったらピーターは先ほどの軽口を撤回するだろう。


(続く)

読了ありがとうございます。

☆☆☆☆☆の評価をぜひお願いします。

星1個でもいいんで♪


★あとがき★

三人の姉弟は23歳、12歳、12歳という年齢構成。父親に才能を認められていた姉が、年が離れた弟たちを連れて冒険に出る計画を立てたらどうするかな、と考えた時、スパルタ教育しか思いつきませんでした(笑)

後々、妹もこのスパルタ教育を思い出す描写がありますが、詳細は触れられないもののすごく厳しかったようです。

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