第13話「復讐の連鎖」 - 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
◇タリーサ・セルヴィオラ編
クロワ家の館での事件から1ヶ月後。
聖騎士団本部の廊下には、朝の光が差し込んでいた。淡い陽光に照らされ、長い影が揺れている。その中を歩く一人の女性がいた。聖騎士団員の鎧に身を包んだ彼女の手には、山のように積まれた書類が抱えられている。
「重たっ……この廊下がいつもより長く感じるわ」と呟く声が廊下に響く。
その女性、シェリルは腕に抱えた書類の束を持ち直しながら、一つの扉の前で立ち止まった。そして、足で軽くドアを蹴って開ける。
「ちょっと、タリーサ!これ、めちゃくちゃ重たいんだけど!一体何なの?」
部屋の中では、黒髪を一つに束ねた女性がテーブルの上で資料を整理している。タリーサだ。彼女は少し申し訳なさそうな表情を浮かべながら、近づいてきたシェリルを手伝った。
「ありがとうございます、シェリル先輩。でも、どうしても調べたくて……」
シェリルはタリーサに視線をやると、手元の資料に目をやりながら尋ねる。
「何を?」
「クロワ家のこれまでの歴史です。アビゲイルが聖典を売却していた理由が、まだ全然見えてこないんです」
タリーサの手は資料を整理しながらも止まらない。その目は鋭く何かを探し求めている。分厚い記録の一枚一枚をめくる彼女の動作には迷いがなかった。
シェリルは溜息をつきながら椅子に腰を下ろした。
「確かに、売られた聖典もまだ見つかってないものね。でもさ、あんた、先輩をこき使って物を運ばせるなんていい度胸よね?」
タリーサは焦った顔になり、慌てて口を開く。
「え、だってシェリル先輩が……」
「冗談よ、それでいいの」
シェリルは微笑んで肩をすくめた。その様子にタリーサも一瞬肩の力を抜いて笑みを見せるが、すぐにまた資料へと目を落とす。
そのやり取りに笑いが零れた瞬間、廊下から足音が響いてきた。やがて、ノックもなく扉が開かれる。
「タリーサ、次の遠征が決まった。作戦室に来てくれ」
逞しい声の主は、かつての一番隊隊長バーニーだった。日差しを背にして立つその姿は、厳格な表情と相まって威厳を感じさせる。タリーサは即座に背筋を正し、声を張り上げた。
「承知しました、隊長!」
その言葉に、バーニーの眉がわずかに動いた。だが彼は無言のまま見つめている。
「違うでしょ、『団長』でしょ?」
シェリルが片手を振りながら笑う。
「あ……そうでした……」
その反応に、バーニーは静かに頷き言葉を続けた。
「アイバン副団長はもう先に来ている。お前も早く来るんだ」
アイバンは二番隊隊長から副団長に昇格していた。
バーニーの言葉に、タリーサは慌てて部屋を出ようとするが、振り返ってシェリルに申し訳なさそうに声を掛ける。
「あの、シェリル先輩。すみません、ここを……」
「いいからいいから! あんたはもう副団長なんだから堂々と指示して!」
シェリルは大きく手を振り、あしらうように答えたが、ふと何かを思い出したようにタリーサを呼び止めた。
「あのさ…」
タリーサが立ち止まり、振り返る。その視線に少し迷いを見せたシェリルは、軽く頭を掻きながら目をそらした。
「やっぱいいや。今度話すわ。行っといで」
タリーサは不思議そうな顔を浮かべたが、軽く頭を下げて部屋を出ていった。
扉が閉じると、静寂が戻った部屋でシェリルはひとり、椅子にもたれかかりながら軽く息を吐いた。その目は一瞬だけどこか遠くを見ているようだったが、すぐに意識を切り替えるように背筋を伸ばす。
「さっ、副団長様が戻ってくるまでに片付けなきゃ!」
そう呟くと、シェリルは椅子を軽く蹴って勢いよく立ち上がり、タリーサが広げたままの資料を手早く整理し始めた。
窓の外では朝の光が、本部の石造りの建物に反射して輝いていた。新たな聖騎士団は、確かにここから歩みを進めている。
(続く)
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★あとがき★
あと2話でおしまいと考えていたのですが1日2話を2日間行ってエピローグとすることにしました。
事件の後、ベレンニア王国の聖騎士団は代替わりしていました。第15代団長はバーニー、副団長はアイバンとタリーサの2人です。
では団長だったあの人はどうなったのでしょうか。次回、グレース・オーリンダール編です。
1/4 9:10に掲載します。




