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第13話「復讐の連鎖」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

クロワ家からの帰路、夜の冷たい空気が一行を包む中、トーマスはマリア伯爵に歩み寄った。


「マリア様、本当にお見事でした。ロジャー・クロワのあの冷静沈着な態度を崩すとは…」


彼は心から感嘆の声を漏らした。


マリアは微かに笑みを浮かべたが、すぐに鋭い声で返した。


「あれくらい当然だ。それよりも私は忘れてないぞ」


「?」


トーマスにはその意味が分からなかった。

彼女は髪を軽く払いながら、少し間を置いた後に冷ややかに続けた。


「これで私の潔白は証明されたな? 帰ったらお前たちの妹は縛り上げて一週間メシ抜きだ」


「えっ…?」


タリーサとトーマスがぎょっとして目を見開くと、グレースがすかさず乗った。

「あれだけ愚弄したのだから、それくらいの罰は仕方ないかもしれないな」


その口調は冗談めいていたが、どこか真剣味も帯びていた。


「ま、待ってください!」


トーマスが慌てて両手を振りながら謝罪を口にした。


「アンナが軽率だったことは重々反省しています。どうか、お許しください!」


タリーサも懸命に頭を下げる。


「私からもお願いです! 妹の無礼を深くお詫び申し上げます。罰はどうかお控えください!」


マリアは二人の様子を見て満足そうに微笑んだ。


「そう焦るな。折檻はまた今度だ。それより急ぐべきことがある」


その言葉に、一行は緊張を引き締めた。タリーサも、グレースも、トーマスも、表情に決意が宿る。


「ここからはスピード勝負だぞ」


マリアのその言葉に、全員が頷いた。


◇ ◇ ◇


夜が更けた頃、クロワ家の館に激しいノックの音が響いた。

その時、ロジャーは書斎で荷物をまとめている最中だった。


(くそ…こんな夜中に…まさか…)


ロジャーの頭の中で警鐘が鳴る。


挿絵(By みてみん)


「憲兵だ! 扉を開けなさい!!」


外から響いた声に、ロジャーの動きが止まった。彼はゆっくりと深呼吸し、冷静さを装いながら玄関へ向かう。


扉を開けると、鎧を着た男たちが立っていた。その後ろにはマリア伯爵、タリーサ、トーマス、アンナ、そしてグレース聖騎士団長の姿がある。


「夜分遅くに失礼する。通報により、アビゲイル枢機卿隠匿の疑いで家宅捜索を行う」


憲兵の一人が冷静に告げた。


ロジャーは表情を崩さず、眉間にわずかな皺を寄せながら応じた。


「待ちなさい。こんな夜中に来るとは失礼にもほどがある。明朝にされよ」


その冷静な態度に、一行の中にわずかな迷いが生じた。しかし、その場を制したのはマリアだった。彼女は一歩前に出ると、軽やかに挨拶をした。


「やあ、ロジャー卿。先ほどはどうも!」


「ひっ!」


ロジャーはマリアの姿に気づき、思わず声を漏らした。明らかに彼女に対する苦手意識が滲んでいる。


「おや、卿の足元、裾が汚れていますね。何かされていたのですか?」


ロジャーは咄嗟に顔を引き締めたが、裾には土の汚れがくっきりと付いていた。マリアは低く、刺すような声で続ける。


「大方、逃げる準備でもしてたんだろう? だから今来たんだよ」


ロジャーの顔色がみるみる青ざめていく。


「そ、それは庭の手入れをしていたからだ」


「こんな夜中に庭の手入れ、ね…」


マリアは冷ややかな笑みを浮かべ、憲兵たちを促した。


「さあ、始めるとしようか」


ロジャーは必死に止めようとしたが、憲兵たちは次々と館の中へ足を踏み入れた。


その様子を見ていたタリーサは心の中で舌を巻く。

彼らは本物の憲兵ではなく、全てカルメサス伯爵家の兵士たちだ。


(素早く取って返すための奇策とはいえ、リスクが大きすぎる…)


マリアとトーマスが考えた大胆な作戦だったが、内心はヒヤヒヤものだ。ロジャーが冷静さを取り戻し、憲兵本部に問い合わせでもしたら一瞬でバレるだろう。それに、聖騎士団長であるグレースもこの偽装に加担していることが知られれば、大問題になるのは避けられない。


(大丈夫。ロジャーはマリア様に翻弄されている。今の彼に冷静な判断はできない)


トーマスはそう話していたが、タリーサたちの心臓はバクバクと緊張を告げていた。


◇ ◇ ◇


捜索が始まった。タリーサは憲兵たちとともに部屋を一つずつ調べるが、特に目立ったものは見つからない。ロジャーは背後で腕を組み、じっと見つめていたが、その視線にはわずかな焦燥が滲んでいた。


「無駄だ!」

突然、ロジャーが怒鳴るように声を上げた。


「我が家に不審なものなど存在しない! これ以上の捜索は時間の浪費だ!」


タリーサは焦りを隠せなかった。


(何か…何か手がかりがなければ…!)


彼女の額に汗が滲む。ロジャーの声は次第に荒々しさを増し、語調には苛立ちと動揺が混じり始めた。


「お前たちは…! まるでクロワ家が犯罪者の巣窟であるかのように振る舞う!」


その叫びは、一行全員の耳に異様な響きを残した。


「そんなことをする暇があれば、この国の本当の問題に目を向けるべきだ! クロワ家は…クロワ家は名誉を汚された!」


その時、アンナの声が響いた。


「お姉様! これを見てください!」


一行が駆け寄ると、アンナはある部屋の壁を指差していた。そこには、何かを隠すための細工が施されているように見えた。


タリーサがその壁を睨みつけると、ロジャーが激しく動揺した。


「そこに触れるな!」


怒声とともにロジャーがタリーサに向かって突進した。


だが、その突進はグレースによって瞬く間に封じられた。彼女は体をわずかに横へとずらし、その勢いを利用して腕を掴むと、力の流れを断つように軽やかに体を回転させた。


ロジャーの体は制御を失い、床に倒れ込む。その瞬間、彼の腕は後ろ手にねじ上げられ、動きを完全に封じられた。


「その慌てよう、ここが正解ということだな」


冷静な声が部屋に響く。ロジャーは抵抗しようとしたが、彼女の力に逆らうことはできず、押さえ込まれたまま動けなかった。


「ううう…お姉様…」


ロジャーの声が震え始めた。


彼の顔が、次第に歪んでいく。やがて瞳が潤み、涙がぽろりと零れ落ちた。彼は唇を震わせながら言葉を絞り出し、最後には嗚咽を抑えられなくなる。


「ごめんなさい、ごめんなさい…! ボクがうっかり話してしまったから、こんな事に…お姉様ぁ!!!」


肩を震わせ、ボロボロと涙を流すその姿は、これまでの毅然とした態度とはまるで別人のようだった。


「お姉様…ボクがもっと慎重にしていれば…あああ、なんてことを…」


「ロジャー卿…」


グレースが静かに呟くが、彼の耳には届いていないかのようだった。


やがて、タリーサは気を取り直して前を向くと、部屋の中を改めて調べた。すると、細工された壁の中に地下室への入口が隠されているのを発見する。


扉の向こうから漏れ出す冷たい空気が、一行全員の肌を刺した。


「行きましょう」


タリーサが静かに告げたその言葉に、一行は覚悟を決め、ゆっくりと地下室への階段を下っていった。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

いよいよ最終盤、生きていると思われるアビゲイルを探して再びクロワ家への訪問。

ロジャーが姉への依存を思わぬところで漏らす事になりました。


次回、最終決戦。第13話は2回で終了です。

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