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第12話「アビゲイル・クロワ」 - 4

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

トーマスはマリア伯爵の執務室に座り、彼女に向き合っていた。

テーブル越しに見える伯爵の落ち着いた表情が、彼の焦燥感を際立たせるようだった。


「ロジャー・クロワに会いに行きたいんです」


その言葉に、マリアは軽く眉を上げた。


「クロワ家の当主か。どんな企みかな?」


「次女に続いて長女のアビゲイル枢機卿も亡くなった今、彼にもう一度話を聞いてみたいんです」


トーマスはそれ以上多くを語らず、真剣な眼差しでマリアの反応を待った。

伯爵はしばらく考え込むように視線を落とし、そして顔を上げた。


「ふむ。興味深い話ではある」


その瞬間、扉が勢いよく開かれた。


「トーマス!」


アンナが息を切らしながら入ってきた。彼女の顔は怒りと緊張に満ちており、その目には明らかな敵意が宿っていた。


「アンナ?どうしたの?」


彼が驚く中、アンナはまっすぐにマリアを指差した。


挿絵(By みてみん)


「その人を信じちゃダメ!」


突然の叫びに、部屋の空気が凍りついた。マリアは目を丸くし、一拍置いてから苦笑した。


「信じちゃダメ、ね。今日はすこぶる機嫌が悪いようだな、アンナ。私がお前たち姉弟を騙しているとでも言うのか?」


「全てはこの人の思い通りに進んでいる! アビゲイル様もスカーレット様も、この人によって葬られたのよ!」


アンナの言葉に、マリアの目つきが鋭くなった。


「おい、小娘。言って良いことと悪いことがあるぞ…」


その低い声には怒りが込められていた。


「なぜ私が枢機卿たちを葬る必要があるんだ? 国王と王妃を危険に晒すことになるあの場で計画を実行する理由がどこにある?」


アンナは一瞬口を開きかけたが、何も言えなかった。


そのとき、廊下から複数の足音が近づいてきた。レイモンド執事やタリーサが、騒ぎを聞きつけて部屋に入ってきた。


「何事ですか?こんな声を上げて」


タリーサが眉をひそめる。その様子を見て、トーマスは慌てて2人の間に割って入った。


「2人とも落ち着いてください!」


彼は手を挙げて制止し、アンナをなだめるように振り返った。


「アンナ、聞いてくれ。確かにマリア様の行動は豪快で大胆だ。でも誰かを暗殺するようなことをする方ではないよ」


「どうしてそう言い切れるのよ!」


アンナの叫びに、トーマスは冷静に答えた。


「マリア様は自由競争の世界を望んでいる。技術革新が進んで産業が発展することを歓迎しているんだ。でも、王政を崩壊させるつもりはない。むしろテオドール王をサポートして王国を強くしようとしている」


「でも…!」


「それに、もし本当に高位聖職者を狙っているなら、国王や教皇がいる式典よりも、彼らが単独で集まる高位聖職者会議を狙う方が守りも手薄で理にかなう」


その言葉に、アンナは言葉を失った。


その直後、オリビア侍従が控えめな咳払いをした。


「あの…トーマス様、少々物騒なお話ですね…」


トーマスは申し訳なさそうに肩をすくめたが、話を止めなかった。


「でもね、アンナ、君が感じている不安は分かる。あの場の誰かは、もっと大胆な国家崩壊計画を考えていたのかもしれない」


その言葉に、部屋の空気がさらに張り詰める。


「もし凶暴化した村人が、舞台上の要人たち、国王も教皇もマリア様も全員を抹殺していたら、ベレンニア王国は衰退して、数年のうちに隣国に侵略されるか、魔王軍に倒されていただろう」


オリビアが再び咳払いをした。


タリーサが困惑した顔で尋ねた。


「じゃあ、誰が黒幕だというの?」


トーマスは軽く首を振った。


「分からない。全く分からないんだ…」


そう言った後、彼は真剣な目で皆を見回した。


「でも話を聞いてみたい人物がいる。ロジャー・クロワだ」


その名前に、全員が驚いた表情を見せる。


「今回の事件の黒幕は見当がつかない。でも、姉さんは17年前のルーファス父さんの事件の黒幕がアビゲイル枢機卿だと確信しているんだよね?」


タリーサは静かにうなずいた。


「だとしたら、そっちの話は進展するかもしれない。前回はロジャーに全く相手にされなかったけど今度こそ彼を攻略したいんだ」


そしてトーマスはマリアに向き直った。


「マリア様に協力してほしいんです」


マリアは少し考え込んだ後、軽く肩をすくめた。


「良かろう。謹んで協力させていただこう」


トーマスとタリーサは目を見合わせた。他の者もみな伯爵の意外な返答に唖然としている。

マリアはそんな周囲の反応を楽しむように、口元に微笑を浮かべながら軽く髪を払った。


「私の名誉挽回だと思えば、悪くない話だ。こういうのは嫌いじゃない」


そう言いながら、ちらりとアンナの方に視線を向ける。


彼女の軽妙な言葉に、一瞬硬かった場の空気がほぐれた。


「ロジャー・クロワの鉄面皮を剥がせばいいのだろう? 面白そうじゃないか」


オリビア侍従は、マリアを見つめ、そのまなざしにわずかに温かみを込めた。


(マリア様にこんな一面もあるのですね…)


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

アンナがマリアを糾弾するもあっさり跳ね除けられる回でした。

珍しくマリア伯爵がおどけて見せるような反応をしたのは著者も意外でした。


次回、トーマスはマリアたちとともにクロワ家へ。ロジャーと2回目の対峙です。

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