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第11話「悪夢の式典」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

王国にとって特別な朝が訪れた。


清らかな空気を裂くように、鋭いファンファーレが王宮の正門を貫く。

金管楽器の響きは高く澄みわたり、遠く城壁の上からもその音色が耳に届くほどだった。ゆっくりと重々しい音を立てながら門が開き始めると、民衆の歓声が波のように沸き上がった。


開かれた門の奥、王宮の中庭からは、煌びやかな装飾を施した騎士たちの行列が姿を現した。その姿に群衆の目が釘付けになる。


先頭を行くのは、国王直属の王国騎士団だ。

揃いの鎧は磨き上げられ、朝の陽光を浴びて銀色の波のように輝いていた。


彼らの肩には青と金の王国旗を模した小さな布がなびき、槍の穂先には黄金の飾りがきらめいている。歩みを揃えた騎士団の行進は、威厳と調和の極みだった。


行列が王宮を出発すると、メイン通りの両脇に並んだ民衆が歓声を上げた。


街路には王国の旗がはためき、花々で彩られた飾り付けが陽光を浴びて鮮やかに映えている。窓辺に身を乗り出した人々が手を振り、声を張り上げる。


「万歳!」「国王陛下!」「レオノーラ王妃様!」と、声援は波のように次々と沸き起こった。


鐘楼の鐘が盛大に打ち鳴らされる中、次に角笛が高らかに響き渡る。


音楽隊が列の後ろで行進曲を奏で、子どもたちが足元で小さく飛び跳ねながら踊っている。広場へ向かう行列の後方には、黄金の装飾が施された豪奢な馬車が続いていた。テオドール国王とレオノーラ王妃が穏やかな笑みを浮かべて手を振る姿が見える。民衆は馬車を見上げて歓声をさらに大きくした。


若い王妃は街路に並ぶ民衆に精力的に手を振った。声援に応えるその仕草には気品があったが、親しみやすい柔らかさも漂う。馬車の中で微笑む王の表情は穏やかで、堂々とした王の風格が感じられた。


挿絵(By みてみん)


「テオ様ももっと笑顔を振りまいてよ~」


笑顔を保ったまま、レオノーラ王妃が隣に座る夫へと囁く。


「私はいいよ」と、テオドール国王は苦笑しながら軽く首を振った。


「国民は皆レオノーラの姿が見たいんだ。」


「えー、そーかなー」


王妃は冗談めかしながら肩をすくめたが、その表情はまんざらでもなさそうだ。


広場へ到着した行列がゆっくりと止まると、騎士団は馬車の周囲を警戒するように配置についた。国王と王妃が馬車から降りると、待ち受けた民衆がさらに声を張り上げた。その様子を背後に、国王と王妃は広場に設けられた特設のテントへと進む。


◇ ◇ ◇


テントの中では、すでに貴族たちが集まり、談笑していた。美しい装飾と高級な家具が並ぶ中、和やかな雰囲気が漂っている。


レオノーラ王妃は目を輝かせて周囲を見回し、一人の女性を見つけると、思わず声を上げた。


「あー! マリアちゃん!」


彼女は躊躇なく歩み寄ると、少し拗ねたような笑顔で続ける。


「最近全然私のところに来てくれないじゃない。ひどいひどい!」


その率直な言葉にマリア伯爵は少し驚いた様子を見せたが、すぐに柔らかい微笑みを浮かべて応じた。


「王妃、なかなかお伺いできず申し訳ございません。テオドールは多少は良い夫を務めていますか?」


「相変わらずよー。テオ様はいっつも忙しいって言って……」


レオノーラが少しむくれたような口調で答えると、マリア伯爵は意味深な笑みを浮かべた。

そのやりとりにテオドール国王が割って入る。


そんなやり取りに、テオドール国王が苦笑を浮かべながら割って入る。


「まったく……二人とも、今日はめでたい日だぞ。こんな日にまで私を貶めなくてもいいじゃないか」


彼は肩をすくめ、困ったように眉を寄せた。


マリア伯爵はテオドール王の遠縁に当たり、幼少期から王家との付き合いが深い。王妃と伯爵が国王をいじる構図は王宮ではすっかり恒例となっていた。


貴族たちの間から小さな笑い声が漏れた。テントの一角に立っていた初めてこの場に招かれた若い貴族たちまでもが微笑み、柔らかな空気に包まれていく。この和やかな光景は、式典の厳粛さの中に心地よい緩みを生み出していた。


◇ ◇ ◇


最初に壇上に上がったのは宮廷魔道士だった。


彼の手には輝く杖が握られ、その先端が光の粒をまとう。魔道士は一礼し、低く響く声で魔法を唱え始めた。その声に呼応するように、壇上中央の床が徐々に淡い光を放つ。その光は円を描き、まるで神聖なシンボルのように輝き出した。


「この日、我が国の繁栄を祝し、建国記念の日の開式を宣言します」


彼が杖を掲げると、光が一気に広場全体に広がり、音の壁となった。壇上に立つ者の声を広場中に響かせる魔法が発動したのだ。


挿絵(By みてみん)


続いて、聖職者たちが静かに壇上に現れた。その歩みは緩やかでありながら揺るぎない威厳を漂わせている。純白と金で縁取られた装束が朝の光に映え、その中に立つ教皇の存在感が場を支配した。


教皇の後ろには、紅色の装束を纏った三人の枢機卿が続く。スカーレット枢機卿が先頭に立ち、力強い足取りで壇上へと進む。その登場に合わせるように、広場のあちこちから歓声が上がった。


「スカーレット様!」「枢機卿万歳!」


広場に集う民衆の中には、特に彼女に向けた熱狂的な声援を送る者が多く見られた。彼女の革新的な政策や慈善活動は広く民衆に支持されており、その人気は絶大だった。


スカーレットは、その声援を受けて満足げに微笑み、壇上から手を振る。長い袖口から見える指先の動きさえも優雅で、自信に満ちている。民衆に視線を巡らせながら、彼女はさらに深く頭を下げ、声援に応えた。その様子に、さらに大きな拍手が沸き起こった。


アビゲイル枢機卿は一歩遅れて登壇しながらも、冷徹で理知的な表情を崩さない。最後に、ウォルター枢機卿が他の二人に遅れないよう歩を進めたが、どこかその表情には緊張が見え隠れしている。


聖職者たちは壇上の中央に集まると、揃って天を仰ぎ、祈りを捧げ始めた。彼らの唱える神への感謝の言葉は、広場全体に静かな敬虔さをもたらした。


儀式が中盤に差し掛かると、テントに待機していた貴族たち、国王と王妃が壇上に現れる。民衆の歓声が再び広場を揺るがす。聖職者たちは神の祝福の言葉を彼らに捧げ、正式に国民の前へと導いた。


聖職者たちは一斉に彼らへと向き直り、頭を垂れた。そして、教皇が一歩前に進み、厳かな声で言葉を発した。


「テオドール陛下、レオノーラ王妃様。この神聖なる日を迎えたことを、神に感謝いたします。そして、この日を祝うすべての民に、神の加護がありますように」


祝福を受けた国王と王妃は壇上の中央に立つ。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

だいぶ引っ張った建国記念式典が始まりました。だれないようにしたいのですが、説明しないといけないものも多くて大変です。


次回、国王の演説に無礼にもスカーレット枢機卿が割り込みます。

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