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第5話「イリアーデイの異変」 - 2

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

ペネロペ隊を先頭に、聖騎士団は荒れた山道を進みながら城塞都市イリアーデイへ急行していた。


隊の中には、顔に喪失感を浮かべたシェリルの姿があった。

彼女の脳裏には、先日北東の森でアンデッドとの戦いで散っていった親友イーサンの最後の姿が焼き付いている。


「イーサン…救えなかった…私にもっと聖魔法の力があれば・・・」


その失意の言葉は風にかき消され、誰の耳にも届かない。


やがて、背後から山道を駆け上がってくる馬群の蹄の音が聞こえ、グレース団長とバーニーの一番隊が追いついてきた。


グレースとペネロペが蹄を揃えて並走する。

「グレース様! 王都からの部隊は我々より少し先を進軍してるそうです!」


「もう食料が尽きかけている。王都の部隊と早めに合流したい。タリーサ!」


呼ばれたタリーサはグレースの横まで馬を進める。


「先行してる部隊に追いついて引き留めろ!」


「承知しましたっ!」

力強く答えるとタリーサは馬の腹を軽く蹴って速度を上げ、前方へと駆け抜けていった。


タリーサが一騎で先行部隊へ向かうという指令を受ける様子に、ペネロペとシェリルは驚きを隠せなかった。二人は思わず視線を交わし、ペネロペが小声で呟く。


「グレース様が…タリーサをここまで信頼しているとは…」


◇ ◇ ◇


全部隊が合流した聖騎士団はさらに行軍を続けてイリアーデイに向かう。険しい道のりで疲労の色は濃いものの、戦士たちの目には戦いへの意志が宿っている。


「開戦は5日前、今日で3度目の本格的な合戦です。戦況は膠着状態が続いています」


丘の上で、グレースとペネロペは斥候部隊からの報告に耳を傾けていた。


眼下にはヴァリンドール公爵が山を下り、平原に広大な陣を敷いている光景が広がっている。公爵の軍勢と魔王軍が激しくぶつかり合い、戦場は轟音と怒号が渦巻く激戦の様相を呈していた。


挿絵(By みてみん)


「…大規模な戦争だな。このまま進めば、我々は魔王軍の左側面を突けるだろう」とグレースは短く言った。鋭い視線で戦場を見つめる彼女の隣で、ペネロペが不安げに口を開く。


「団長、騎馬たちは長旅でかなりの疲労が溜まっています。突撃をさせるには負担が…」


その言葉を聞いたグレースは一瞬考え込んだが、やがて決断すると指示を下した。


「騎馬たちに魔法を施し、体力を回復させるんだ。我々がここで魔王軍に打撃を与えれば、戦局を大きく動かせる。全員に伝えろ」


◇ ◇ ◇


「キラストリエ様が我らを守ってくださる!存分にその力を示せ!行くぞ!!」


グレースの号令とともに聖騎士団の騎馬隊が土煙を巻き上げて丘を下り、一斉に魔王軍に向かって突撃していった。


その轟音に気づいた魔王軍は、急いで闇の魔導士隊を前線に配置した。魔導士たちは手をかざし、闇の力で蛇のようにくねる炎を次々と聖騎士団に向けて放ち、空は火炎で赤く染まった。


だが、聖騎士団の騎士たちは一瞬も怯むことなく、炎の嵐を突き進んでいく。

彼らの体を包む白い粒子が聖魔法の防護を強化し、激しい火の洗礼をものともせずに前進を続けていた。


シェリルは祈るように詠唱を重ね、仲間たちにさらなる防護を施しながら、魔王軍の陣地へと迫っていった。


タリーサもまた、全身からオーラを放ちながら剣を振るい、次々と敵を薙ぎ倒していく。その力強さは戦場の混乱をものともせず、隊員たちにとっても希望の光となった。


「ぐ…この!」


やがて乱戦になり、老騎士マクスウェルがリザードマンの騎士たちに囲まれて3対1の不利な状況に陥っていた。


敵が同時に斬りかかり、絶体絶命かと思われたその瞬間、タリーサの騎馬がリザードマンたちの背後を駆け抜けた。彼女の剣が黄金の光を放ち、リザードマンたちを一瞬で斬り伏せ、彼らは落馬して霧散するように消えていった。


「マクスウェルさん!大丈夫ですか?」

タリーサが振り返り、声をかける。


「ああ、助かったよタリーサ…」

マクスウェルは安堵の息をつき、汗を拭いながら微笑んだ。


北東の森以来、タリーサは見違えて輝いていた。もはや指導することなど何もないな、とマクスウェルは目を細める。


やがて聖騎士団は、魔導士隊を突き破り、魔王軍の中央に切り込むことに成功した。その光景を目の当たりにしたヴァリンドール公爵は、全軍に突撃の命令を下す。


「王都の聖騎士団が打開してくれた!よし、前線に取り残された敵軍をすり潰せ!俺も前へ出るぞ!!」


公爵の軍勢がさらに魔王軍の内部へと突撃を仕掛け、戦場は勝利への一歩に近づきつつあった。


聖騎士団の騎馬隊も再び反転し、次々に突撃を繰り返して魔王軍を崩壊の寸前に追い込んでいく。

立て直しを図っていた魔王軍は再び混乱に陥り、隊列が崩れ始める。


魔王軍は騎馬が一向に疲れずに突撃を繰り返す聖騎士団に恐れをなして後退を始めた。


挿絵(By みてみん)


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

大規模な戦闘を初めて登場させました。キングダムのような風景をイメージして書こうとしましたが、文字数使いまくるわけにもいかないのでほどほどで。


次回、魔王軍を撃退し、祝勝に湧く城塞都市イリアーデイに新たな知らせが。

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