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第5話「イリアーデイの異変」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

夜の王都。冷たい風が吹き抜ける薄暗い路地を一人の少女が疾走していた。小柄な体を厚手のマントに包み、音を立てぬようにして細い道を曲がり抜けていく。その足取りは鋭く、迷いがなかった。


少女が向かったのは、闇市場の奥にひっそりとたたずむ小さな店だった。誰にも見られぬよう中へと忍び込むと、店内の奥で葉巻をふかす粗野な商人がゆったりと待ち構えていた。少女は小さな巻物を手渡し、低い声で告げた。


「お偉い方が、おじさんの報告に興味を持ったって。すぐに動いて」


それだけ言い残し、少女は再び店を後にした。商人は巻物を広げて目を走らせると、薄く笑いながら独りごちた。「お偉方…枢機卿様か。今度はどんなことを考えていなさるのかねえ」


◇ ◇ ◇


翌朝、スカーレット枢機卿の執務室。

重厚な家具が並ぶ部屋の中、スカーレットは祈りの姿勢で静かに手を組み、神に国民の平安を願っていた。その傍らには開いた聖典が置かれており、暖かい光が室内を照らしていた。そんな彼女に、執事がそっと近づき、慎重に言葉を告げた。


「例の商人が、耳寄りな情報があると面会を求めております」


スカーレットは眉をひそめた。

「またか…あの男の話はいつも怪しげなものばかりで、どこまで信用できるかしらね」


しかし執事の報告を受けて、彼女は思案しつつも面会を許可した。


現れた商人の口から語られた話は、王都に潜むドワーフの職人が新しい銃の技術を開発し、小型化と量産化に成功したというものだった。スカーレットは少し考え込み、すぐさま呼び鈴を鳴らして秘書官のアンナを呼んだ。


「アンナ、あなたも同行して頂戴。この件は私たちで直接確かめに行くわ」


アンナは「かしこまりました」と応えたが、執務室を出ると、内心にふと不安がよぎった。


(なぜ、聖職者である枢機卿が武器の視察に行くのだろう?)


疑問を感じつつも、アンナは出発の準備に取りかかった。


◇ ◇ ◇


スカーレットとアンナは、商人に案内されて夜の闇市場へと進んでいった。


2人は変装して身分を隠しつつ、周囲に気を配りながら奥まった建物へとたどり着く。建物の奥には、屈強な体つきをしたドワーフの職人が待ち構えており、商人が片言のドワーフ語で短い挨拶を交わすと、職人は小さく頷いた。


するとアンナが間に入り、彼らの会話を滑らかなドワーフ語で伝えた。職人はアンナの流暢な話しぶりに興味深げに目を細め、自己紹介をするアンナに「ところで嬢ちゃん、銃ってもんを知ってるか?」と尋ねた。


「はい、以前旅の途中で商人たちがライフル銃を使って魔物を撃退しているのを見ました。ただ、その銃は大きくて扱いが難しそうでした」


職人は満足そうに笑い、スカーレットとアンナに対して大きく頷いた。


「さすがだね。あのライフル銃はでかくて運ぶのも大変だ。だが、これを見てくれ」と、彼は展示棚から小型の銃を一丁取り出した。


職人が手にしているのは、手のひらサイズの光沢あるハンドガンだった。彼はそれを見せながら続ける。「この新型はその大きさが違う。しかも、ここに20発もの弾丸が込められているんだ」


アンナがその言葉をスカーレットに通訳すると、スカーレットは興味深そうに銃に視線を向けた。


職人はその反応を見て、試射の準備を始め、銃を的に向けて引き金を引いた。豪快な轟音が工場内に響き、何発もの弾丸が連続して的に命中する。その威力と精度にスカーレットとアンナは思わず目を見張った。


挿絵(By みてみん)


「どうだ?この銃ならほんの少しの訓練で誰でも扱えるようになる。もう剣や槍を振るって命をかける必要なんかないんだ。農家のお母さんだって魔族を仕留められる」職人は胸を張り、得意気に銃を掲げた。


スカーレットは銃を見つめながら考え込んだ。


「ほんの少しの訓練で誰でも…」


彼女の脳裏には、これまでの騎士団や貴族たちの厳しい修行の日々が浮かんでいた。

貴族や武家に生まれた者だけが剣を取り、戦士としての地位を手にしてきた。しかし、この銃があれば、一般市民でも戦える力を持ち得るのではないかという新しい発想が湧き上がってきた。


「面白いわ…この銃があれば、時代が大きく変わるわね…」


スカーレットの目には、興奮に似た光が宿っていた。


一方で、アンナは言葉にできない強い不安を感じ始めていた。

(誰にでもこんな強力な武器が行き渡るようになったら…凄く危険な社会になりはしないかしら・・・)


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

イリアーデイの異変と言っておきながら王都から始まりました。

拳銃まで登場しちゃってこの物語、大丈夫なんだろうか・・・


★この世界・物語の設定★

この世界のハンドガン(拳銃)は20発も弾丸が入る


次回、舞台は城塞都市イリアーデイ近くへ。集結した聖騎士団が作戦を練ります。

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