第4話「キラストリエの祈り」 - 5
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「 こ、このままでは…総崩れに!!副団長!!」
隊員たちの叫び声がペネロペに届くが、今この巨人ゾンビに背を向けるわけにはいかない。
巨人がまたも腕を振り上げると、ペネロペは力強く足を踏みしめ、金棒を横に振り抜いた。その一撃は巨人の膝を砕き、粘つくような腐敗臭と共に膝が崩れ落ちる音が響いた。
だが、巨人は倒れず、痛みも感じないかのようにすぐさまペネロペに手を伸ばしてきた。巨大な手に握られそうになる瞬間、彼女は咄嗟に体を反転させて距離を取った。
「お前に構っている暇はない、土に還れ…」
ペネロペは自らを鼓舞するように唸り声をあげ、巨人を睨みつける。
その頃、タリーサは遠くから仲間の叫び声と苦悶の声を耳にしていた。
風に乗って届くその声に迷うことなく剣を握り直し、後方へと馬を駆けた。
「おい、タリーサ!どこへ行くんだ!!待て!!」
バーニー隊長の制止を聞くことなく、タリーサは馬に強くムチを入れる。
冷たい空気に混じる血の匂いが鼻を突き、遠くから聞こえる隊員たちの叫びが彼女の焦燥をさらに煽った。タリーサの剣に金色の光が灯り、心の奥に燃え上がる決意と共に力を増していく。
巨人ゾンビとの果てしない応酬が続く。ペネロペの消耗は激しかった。
額に汗が浮かび、手元の金棒は土と血にまみれてる。巨人はペネロペの攻撃で肉体が破壊され何度も倒れるが、それでもまた立ち上がってくる。
一騎打ちはペネロペが完全に優勢に立っていたが、未だ決着がつきそうに無い。
「しつこい骸骨め、今度こそ倒す……」
ペネロペは立ち上がり、再び巨人に立ち向かおうとするが、その時、タリーサが輝きを纏った姿で戦場に飛び込んできた。金色の光が一瞬にして視界を埋め、隊員たちはその光景に目を奪われた。
「副団長、下がってください!!」
ペネロペの答えを待たずに、タリーサは巨人ゾンビとの間に割って入ると馬から飛び降りた。
巨人ゾンビが咆哮を上げてタリーサに向かって腕を振り下ろす。
太い腕が地面に叩きつけられ、土埃と共に激しい衝撃波が広がった。しかし、タリーサは一瞬の間に横へと跳び、巨人の攻撃をかわした。
続けて剣を高く振り上げ、光の刃が空を裂くように振り下ろされると、巨人の腐敗した腕を切り裂いた。
膝をつきながら見守っていたペネロペはその光景に息を呑んだ。
「グレース様?……いや、違う……」
巨人の腕は切断面から煙を上げながら崩れ落ち、腐臭が広がった。痛みを感じないはずの巨人も、一瞬動きを止める。
タリーサはその隙を逃さず、魔力を剣に集中させて突進する。タリーサの攻撃はまるで戦場を舞う光の踊り子のようだった。彼女が舞うたびに巨人ゾンビは切り刻まれ、傷口から煙を上げていく。
「はああああああ!!!!」
とどめの剣先がさらに強い光を放ち、巨人の胸に深々と突き刺さると、その光が全身に伝播し、巨人は痙攣を始めた。内側から光に包まれ、その大きな体が徐々に崩れていく。
やがて、崩れた巨体は砂のように地面に散り、消滅した。
ペネロペたちは目の前の信じられない光景を見つめた。そして、静寂が一瞬流れた後、歓喜の声が上がった。
「タリーサだ!」「巨人ゾンビを討ったぞ!」「これで、これで助かったんだ!」
ペネロペは驚きの表情を浮かべながらタリーサを見上げ、何か言おうとしたが、喉が震えるだけだった。
(続く)
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★あとがき★
ようやくタリーサが主人公モードに入りました。
ここから才能を開花させていくことでしょう。
次回、タリーサの救援でペネロペ隊は持ち直し、終結へ。