第4話「キラストリエの祈り」 - 4
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
森の中、ペネロペ副団長の率いる隊は最後尾を進んでいた。
アンデッド対策に必須な聖魔法。これを得意とする隊員が少ないペネロペ隊は今回の作戦では緊急時の応援部隊だ。アンデッドとの交戦は前線部隊がやってくれるので、隊員たちは気楽な行軍をしていた。
しかし、彼らは運悪く狙われてしまった。
霧が濃くなり、足元の落ち葉を踏む音さえ不気味に響く中、突然、森の頭上から低く唸るような音が響き渡った。
空を覆う木々の枝が激しく揺れた次の瞬間、腐臭と共にアンデッドたちが雨のように降り注いできた。骸骨が白い影を引き裂くように現れ、その牙のような骨が不規則に輝いた。
「うわああああ!」「上から敵襲だ!!」
「焦るな!陣形を整えろ!!」
ペネロペは指示を出しながら前へ出る。巨大な金棒を高く振り上げると、一気に振り下ろして骸骨の群れを薙ぎ払った。
金属が骨を砕く音が響き、破片が宙を舞う。
しかし、地面に倒れた屍たちはすぐにまた立ち上がり、歪んだ笑い声を立てながら前進を続けた。
ペネロペ隊は混乱の中、なんとか陣形を立て直す。
大盾で壁を作ってアンデッドたちを押し返し、その隙を突いて首をはねる。
しかし、首をはねたところで敵の勢いは止まらない。
「く……無限に蘇ってくるなんて!ふざけんじゃねえぞ!!」
イーサンが叫んだその瞬間、アンデッドの冷たい手が盾の間から彼の肩を掴んだ。
「や、やめろっ!あああああ!!」
抗う間もなくイーサンは引き倒され、アンデッドの群れに飲み込まれてしまった。
「ああ!イーサン!!!」
隣にいたシェリルは急いで詠唱を始めた。彼女の両手に聖なる光が集まり始める。
「キラストリエ様……どうか、どうかイーサンを助けて……!」
シェリルの声は震え、涙がこぼれ落ちる。
全身を駆け抜ける恐怖を抑えながら、必死に祈りを込めて聖魔法を唱え、攻撃を放つ。しかし、彼女の放つ光はアンデッドの群れの前ではあまりに弱々しく、焼け石に水だった。
シェリルの祈りをあざ笑うかのようにアンデッドたちは無数の腕を伸ばし、イーサンの体を引き裂いていく。
「やめて……お願い、やめてっっ!!」
シェリルはなおも祈りの言葉を重ねるが、彼女の声も聖なる光も、アンデッドの渦に虚しく食い潰されていった。
他の隊も同様に崩され始めていた。あちこちで悲鳴が響き渡る。
「まずいな…守っているだけではダメだ。私が突破口を開く!」
ペネロペは、防御陣形の前に飛び出した。
金棒を豪快に振り回して屍たちを叩き潰す。
「さすがペネロペ様!いけるぞ!!」
部下たちが湧き立ったのも束の間、道を切り開こうとする彼女の視線の先、大木の陰から異様な影が動いた。
現れたのは腐敗した筋肉が露わになった巨人ゾンビだった。その片目が長身のペネロペを見下ろし、腐った唾液を滴らせながら低く唸る。
「な、んだと……」
ペネロペは唇を引き締め、金棒を握り直した。
だが次の瞬間、巨人ゾンビの腕が一気に振り下ろされ、避ける間もなくペネロペは吹き飛ばされた。地面に激しく叩きつけられ、胸元に鋭い痛みが走り、血が口元に滲んだ。
「副団長っ!!」
隊員たちが叫ぶ声が遠く響いた。
彼女は視界が揺れる中、巨人ゾンビが再び腕を振り上げるのを見た。咄嗟に転がって避け、地面の土埃が舞い上がる中、必死に立ち上がる。
その間にも防御陣形の部下たちはアンデッドの群れに飲み込まれていった。
(続く)
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★あとがき★
突然、壮絶なアンデッドとの交戦になりました。ウォーキング・デッド的なサスペンスになってれば幸いです。その中でタリーサをいじめてたイーサンが戦死・・・
★この世界・物語の設定★
アンデッドは聖魔法が効きます。
次回、ペネロペ副団長の怪力を持ってしてもアンデッドを退けることができない・・・