第3話「タリーサの決意」 - 4
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
聖騎士団の先輩2人の視線には、先ほどまでの優しげな態度が微塵も残っておらず、明らかな敵意が滲み出ていた。
「さあ、タリーサ・セルヴィオラ。団長推薦というその確かな実力を見せてもらおうか」
イーサンが冷え冷えとした口調で挑発し、シェリルも冷ややかに微笑みを浮かべてタリーサを睨みつけた。
「まさか、前団長の娘の名を頼りに、実力もなくここに来たわけじゃないでしょう?」
タリーサはその言葉に一瞬怒りを覚えたが、胸に湧き上がる感情を押し殺し、ゆっくりと剣を構えた。
彼女の決意を示すように、その目には揺るぎない光が宿っていた。
「…もちろん、そのつもりです」
その言葉を合図に、イーサンとシェリルが容赦なくタリーサに襲いかかってきた。
2人の攻撃は苛烈で、寸分の隙もなかった。
イーサンの鋭い太刀筋が彼女の肩を掠め、続けざまにシェリルが腰を狙って剣を繰り出す。
タリーサは必死に受け流し、反撃の機会を窺おうとするが、次々と容赦なく振り下ろされる剣撃の嵐に防戦一方となっていた。
「おいおい、これが英雄の娘の実力か?」
イーサンが挑発するように冷たく笑う。
「これじゃ、ただの見せ物ね。あなたが私たちと同じ聖騎士だなんて、恥ずかしい!許せないわ!」
シェリルも言い放ち、容赦なくタリーサに追い討ちをかける。
イーサンの剣が彼女の腕を強打し、次の瞬間、シェリルの剣が彼女の背に深く打ち込まれた。
「がはっ……!」
タリーサは思わず声を漏らした。痛みが走り、体が硬直する。
だが、2人は構うことなく攻撃を重ね、彼女の太ももにイーサンの一撃が鋭く入り、タリーサは短い悲鳴を上げた。
「…ああっ!」
シェリルの冷たい視線が彼女を追い詰めるように見つめ、無情に言葉を浴びせかけた。
「この程度で悲鳴を上げるの? これが英雄ルーファスの娘だなんて笑わせるわ」
タリーサはこの組手がいじめだと理解していたが、自ら選んだ道なのだと心を強く持ち、2人の攻撃に懸命に応じた。
だが、彼らの実力は高く、剣撃は無情に続き、やがて彼女の動きは限界を超え始めていた。
「ハァ、ハァ……」
体力も尽きかけ、全身に痛みが広がる中、タリーサは一瞬の隙を見せてしまい、シェリルの剣が重く彼女の胴に叩き込まれた。その衝撃で彼女の膝が崩れ落ち、視界が薄れていく。
「……っ!」
痛みと疲労が限界を超えたその体は重く、意識が遠のいていった。
やがて彼女は地面に倒れ込み、そのまま動かなくなった。
その時、マクスウェルが練習場に戻ってきた。
ふと視線を巡らせ、倒れているタリーサの姿を見た瞬間、彼は目を見開き、慌てて駆け寄った。
「タリーサ! 一体、どうしたんだ?」
マクスウェルがタリーサを支え起こしながら振り返ると、イーサンとシェリルが淡々とした表情で彼を見ていた。マクスウェルは苛立ちを抑えきれず、2人に詰め寄った。
「これはどういうことだ? いくら訓練とはいえ、新人にここまでするのはやり過ぎだろう!」
シェリルは大袈裟に驚いた表情を見せ、肩をすくめる。
「待ってください、マクスウェルさん。彼女の実力が無さすぎてこちらが驚いたくらいです。これくらいの稽古で倒れるのなら、早く辞めてもらったほうがいいよ」
イーサンも淡々と続ける。
「団長の推薦であっても、使えない者を聖騎士団に置いておく余裕はない。タリーサにこの団は分不相応だったのでしょう」
その冷淡な言葉に、マクスウェルの顔には怒りが浮かんだ。
しかし彼は2人とこれ以上話しても無駄だと悟り、深く息をつきながらタリーサに向き直った。
タリーサの肩を抱き起こし、彼女の疲れ果てた表情を見つめた。
彼は静かに手をかざし、口の中で穏やかな声で詠唱を始めた。彼の掌から柔らかい光が溢れ出し、タリーサの体を包み込むように輝きが広がる。
「よく耐えたな、タリーサ……」
タリーサの身体がその光に包まれ、やがて微かにまぶたが動き始めた。
彼女はゆっくりと意識を取り戻し、ぼんやりとした瞳でマクスウェルを見上げた。
「気がついたか。無理をしなくていい、そのまま寝ていろ」
マクスウェルは優しい声で囁き、微笑んだ。
タリーサが小さく微かに頷くのを見届けると、彼は彼女を抱き上げ、看病のために練習場から運び出した。
その背中に、イーサンとシェリルは冷淡な呟きを投げかけた。
「こんなもので終わると思うなよ、タリーサ。お前はグレース様の聖騎士団には不必要だ」
(続く)
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★あとがき★
露骨なイジメ回でした。ペネロペは過敏にタリーサ入団を警戒しています。
しばらくこの状況は続きそうですね・・・
次回、タリーサの聖騎士団入団は他の場所にも波紋を広げます。