第8話「最奥の決戦」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
最後のパーティは盗賊1人しか助けることができなかった。
その彼女も瀕死の状態で、魔力が残り少ないギルバートが失神する寸前まで回復を行なってなんとか一命を取り留めた。
帰りも魔物に遭遇したもののなんとか撃退して、俺らは洞窟を脱出し、ヴァーレルソルイの町に生還した。
◇ ◇ ◇
姉の傷はギルドの僧侶に治してもらい、顔もキズ物にならずに済んだ。
その後、なんと姉は夜の舞台に何事も無かったように出演してしまった。
洞窟の魔物を倒し、多くの冒険者を救った女剣士が舞台に出るとあって、領主を始めとする町中の人々が集まっていた。
「私たちは無事に洞窟から帰ってくることができましたが、それは先に救助に向かった冒険者たちのお陰です。次にお送りするのは『勇者よ、安らかに眠れ』、この地方に伝わる鎮魂歌です。皆さん知ってるよね? 我々の平穏の為に命を賭した彼らに歌ってあげてください」
ミハイルのリュートが悲しくも厳かな曲を始めた。
観衆はターニャの呼びかけに応じて厳かに合唱した。その中にはかろうじて命を救われた盗賊の姿もあった。静かに泣く彼女の周りには彼らに救われた冒険者たちがいた。
俺は舞台袖で呟いていた。
「姉さん…さっきまで死にかけていたのに、どうしてこんなに落ち着いて歌っていられるんだ・・・」
後ろから声を掛けられた。ギルバートだ。
「お姉さんはまだまだ本気を出していませんでしたよ。呼吸を見れば分かります。傷つきはしたがまだ余裕があった。剣士ターニャは評判以上の実力者でした」
ちょうど歌が終わり、会場中からの拍手に姉が深く頭を下げて答えているところだった。
「大鬼を一閃した最後の太刀に私は震えましたよ。剣士を目指した自分を恥じた。それにあの剣に宿る魔力。あれに目を奪われてましたが、あの方はもしかしたら…」
「もしかしたら?」
「トーマス!早く上がって!あいさつ、あいさつ!」
ダニエラに呼ばれて会話を終えざるを得なかった。
焦って舞台に上がるトーマスを見届けながらギルバートは呟く。
「また会おう、道化師ターニャ。今度は貴女の冒険に連れていってくれ。楽しみにしている」
舞台挨拶を終えて周囲を探したが、もうギルバートの姿はなかった。
(第8話 完)
読了ありがとうございます。
☆☆☆☆☆の評価をぜひお願いします。
星1個でもいいんで♪
★あとがき★
洞窟を脱出して無事ヴァーレルソルイの町へ帰還。
ターニャは舞台で鎮魂歌を歌います。今どきのAIは作曲もできますが、作ったところで披露の場がないのでやめました。
そしてギルバートとはお別れ。次に彼が出てくることはあるのか・・・乞うご期待。
次話、舞台は2年後に移り、第1部一番の山場となる町に向かいます。