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第2話「カルメサス家の秘密」 - 3

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

カルメサス伯爵家の館。


マリアは広々とした執務室で椅子に深く腰掛け、鋭い目つきで部屋の入り口を睨んでいた。


彼女の前に座るタリーサとトーマスは、背筋を伸ばして静かにマリアの言葉を待っている。


「…残念な報告だ」


重々しく口を開いた彼女の声に、室内の空気がさらに張り詰める。


「先代の聖騎士団長ラルフの遺族の手がかりは、未だに見つかっていない」


マリアの冷静な声が執務室に響く。

トーマスが息を飲み、タリーサも目を鋭くして身構えた。


「17年前に行方不明になった者たちを探すのは容易ではない。調査は続けるが、正直に言って期待は薄い」


トーマスは拳を強く握りしめ、期待していた証言の手がかりが得られなかったことに歯痒さを覚えた。

タリーサもまた静かにうなずき、その冷静な表情の奥にかすかな悲しみが滲んでいる。


「…わかりました」


姉が静かに答える。

その表情の下には、何かを諦めかけているかのような深い悲しみが潜んでいた。


マリアは二人を一瞥し、報告を終えたことを示すように席を立った。

しかし、執務室を出る前に立ち止まり、思い出したかのように振り返る。


「そうだ、もう一つ。私はこの後、王宮で会合に出る。隣国アルヴァリアス帝国からヒューゴ侯爵がこの館を訪れるそうだ。トーマス、私が戻るまでの時間をどうにかして稼げ。風刺でも披露しておけ」


その言葉に、トーマスは思わず顔を上げ、唖然とした表情を浮かべた。


「風刺…ですか?」


マリアは驚くトーマスを気に留めることなく、さっさと執務室を後にした。

ドアが閉まると、室内に再び静寂が訪れた。


トーマスの脳裏には「風刺でもやって時間を稼げ」という無茶ぶりが駆け巡り、焦りが押し寄せた。


「風刺なんて…初めて会う相手にどうすればいいんだ…」

トーマスは呆然と呟き、途方に暮れていた。


隣に座っていたタリーサが口を開き、「一緒に考…」と優しい声で言葉をかけようとしたその瞬間、別の声が割り込んできた。


「トーマス様、ご安心ください。アルヴァリアス帝国の慣習や侯爵のお好みについて、私がお教えいたします」


侍従のオリビアが、トーマスのすぐそばにいつの間にか近づいていた。

柔らかな笑顔を浮かべるオリビアに、トーマスは「オリビアさーん! ありがとうございます!」と、半ば泣きそうな顔で感謝の気持ちを示す。まるで救いの手を掴むように、彼女を見つめた。


「侯爵は主に政治や風刺の語りを好まれますので、少し具体的な人物を挙げるとよいでしょう」とオリビアが微笑むと、トーマスも少しずつ自信を取り戻していく。


まるで自分の言葉が無かったかのようにオリビアと話し込む弟を見て、タリーサは顔を曇らせ、つまらなそうに席を立った。


その様子を視界の端に見たオリビアは小さく笑みを浮かべたが、トーマスは気づかないままだ。


風刺の目星がつき、安心したトーマスがふと姉の方に目を向けると、タリーサがむくれたような顔つきで腕を組んでいるのが見えた。眉を寄せ、唇を少し尖らせたその顔は、いつもの凛々しい彼女とは違って、明らかに拗ねている。


「あれ、姉さんどうしたの?」


不思議そうにトーマスが尋ねると、タリーサはさらに不機嫌な表情になって「別に!」と言い放った。

次の瞬間、彼女は弟の足をぐいっと踏みつけ、振り返ることなく部屋を出ていってしまった。


「痛ぁぁぁ!」


トーマスが飛び上がるのを、オリビアは静かに微笑みながら眺めていた。


挿絵(By みてみん)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

なぜかトーマスを巡って対立してしまう姉タリーサと侍従オリビアでした。

これはさすがに物語の本筋には関係しないと思うのですが、なぜか対立させたくなっちゃうんです。


次回、天然なヒューゴ侯爵がカルメサス家の秘密に触れてしまいます。

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