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第2話「カルメサス家の秘密」 - 2

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

交渉はひとまず終了し、エルフの王子ティロヴァンは静かに立ち上がり、優雅な仕草で部屋を後にした。


重厚な木製の扉がゆっくりと閉まると、室内に張り詰めていた緊張がふっと和らぐ。スカーレット枢機卿は大きく息を吐き出し、そのままソファに深く腰を下ろした。


「アンナ様、さすがですね!! マリア伯爵の秘蔵っ子というだけあって、ここまでの仕事ぶりとは…感服しました!」

と、突然の大げさな称賛を送る。


アンナは思わずぎこちなく笑った。


さっきまで「アンナ」と呼ばれていたのに、急に「アンナ様」となり、しかも彼女の家名まで強調される。どうやらスカーレットは、今になってアンナの家柄に気を遣い始めたようだ。


スカーレットはアンナに微笑みかけながらも、既に次の計画に思いを巡らせていた。


(アンナがいれば、私の計画は加速するわね。エルフとの交渉はこれでバッチリだし、あのドワーフの工房も訪問できる…これは大チャンスだわ)


枢機卿は満足そうに、目の前の報告書に手を伸ばした。


その仕草はまるで次の一手を打つ将棋の駒をつまむような自信に満ちていた。だが、すぐに彼女はアンナに目を向け、にこりと微笑むと、柔らかい声で言った。


「アンナ様、先ほどのエルフとの交渉報告書なのですが、経緯を一番把握しているのは貴女様ですし、これも良い経験です。貴女様がまとめていただけませんか?」


「えっ…私が?」

アンナは驚き、思わず声を上げた。


報告書を作成するのは本来、スカーレット枢機卿の仕事だ。それを任されるとは思ってもいなかった。


「でも、さすがに素人の私が報告書を書くのは…」と、アンナがためらいがちに口を開く。


「ご安心ください!」

スカーレットは軽い口調で言い、すぐに続けた。


「筆記は下の者にやらせますので、アンナ様は文章をまとめるだけで結構です。すぐに大司祭を呼びますね」


「え、大司祭!?」

(そんな偉い人を呼ぶの…?)


アンナが驚く間もなく、スカーレットは執事に指示を出し、大司祭がすぐに呼び出された。


数分後、扉が開き、威厳のある大司祭が現れたが、その表情は戸惑いを隠せないものだった。

彼はゆっくりとスカーレットの前に歩み寄り、深々と頭を下げた。


「枢機卿閣下、何かご命令でしょうか?」


「よく来てくれました、大司祭。これからこちらのアンナ・カルメサス様が報告書をお作りになるので、あなたが筆記を担当してください」


スカーレットは当然のように指示を出す。


「え、私が…ですか?」

大司祭は驚いた顔をアンナに向けた。

彼は戸惑いながら問いかけたが、スカーレットは微笑みながら、さらに続けた。


「そうですとも。アンナ様が完璧にまとめてくださいますから、あなたはそれを書き取るだけで十分です。このような栄誉ある仕事ができて、貴方も嬉しいでしょう?」


スカーレットの言葉に、大司祭は再びアンナを見つめた。その表情には明らかに困惑の色が浮かんでいた。アンナもまた、自分が大司祭に指示を与えるような立場ではないことに戸惑いを隠せなかったが、場の空気は完全に枢機卿に支配されていた。


「わかりました…枢機卿のご命令に従います」


大司祭が筆を構え、アンナは内心のため息を抑えつつ、頭の中で報告書をまとめ始めた。


挿絵(By みてみん)


スカーレットはその様子を満足げに見つめ、次なる計画を練り始めていた。

(よしよし。アンナがいれば、手柄がどんどん生まれるわ。次期教皇選も有利に進むわね)


その心の声が聞こえたのだろうか。

アンナは複雑な気持ちで、浮かれる枢機卿を見つめていた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

こういうオバサマいるよなぁ・・・と思いながらスカーレット枢機卿を描いていました。

第3部のキーパーソンですので少し長めに登場してもらいました。



次回、舞台は再びカルメサス家へ。ラルフの遺族を探していた伯爵ですが・・・

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