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第2話「カルメサス家の秘密」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

朝、アンナを乗せたカルメサス伯爵家の馬車が、スカーレット枢機卿の執務室に到着した。

窓越しに王宮の広大な敷地が見え、アンナの胸は高鳴り、胃のあたりに重苦しさが広がる。


「結局、何も準備できなかった…」


アンナは馬車を降りると、迎えの者に導かれて王宮の中へと進んだ。緊張で顔が熱くなり、頭を抱えたくなる思いだった。


部屋に入ると、既にスカーレット枢機卿が待っていた。

彼女はアンナに穏やかな微笑を浮かべたが、その目は冷静で鋭かった。


「おはよう、アンナ。さっそく仕事よ、こちらに来て」


「えっ、もうですか?」


まだ挨拶もしていないのに、と内心で叫びたくなるが、スカーレットは一切気に留めず、部屋の奥にアンナを案内した。そこには、優雅な服装をまとったエルフの男性が座っていた。


「このエルフ、どうやら貴族か何か偉い立場らしいけど、急に1人で来て何を言ってるのか全く分からないのよ。貴女が話を聞いていただける?」


スカーレットの言葉に、アンナは目を見開いた。


「ええっと…こういう場合、種族間交渉官を呼ばないと、国家間の問題に発展するかもしれませんよ…?」


「この件は私に一任されているから大丈夫よ。私と貴女で進めるわ」


(何の件かも分からないのに一任されてるわけがない…めちゃくちゃだわ)


アンナはため息をつきたくなったが、スカーレットの視線を感じて覚悟を決めた。


エルフの方を向くと、彼は冷たい目でこちらを見つめていた。冷ややかな空気が部屋に漂い、彼がゆっくりと口を開いた。


「私はエルフ王の3男、ティロヴァンだ。今日はいつもの交渉官ではないのか?」


(ちょっと・・・この人、王子様じゃないの・・・)


アンナは一瞬焦ったが、微笑みながら冷静に答えた。


「申し訳ございません。本日は交渉官が不在のため、この件は私が任されました。枢機卿秘書官のアンナ・カルメサスと申します」


彼女の言葉に、ティロヴァンはしばらく考え込むように彼女を見つめたが、やがて口元に少し柔らかさが戻った。


「君のエルフ語はなかなかのものだな」


アンナは内心ほっとしたが、油断はできない。


挿絵(By みてみん)


「さて、通訳がいるなら、話を進めよう。ベレンニア王国による森林伐採がここ最近急速に進んでいる。我々の森をこれ以上破壊されては困る。伐採を即刻停止してもらいたい」


「伐採をやめろ? 時代の流れが分かっていない王子様ね…」


スカーレットはアンナに目を向け、エルフの王子に向けた強気の言葉を口にした。


「こう伝えて! 私たちは伐採を止めるつもりはない。産業発展のために必要だから、エルフの森も多少の犠牲を払ってもらうことになる。補償については検討するので、それで納得してもらうしかないっ!!」


スカーレットの強気な言葉に、アンナは心の中で悲鳴を上げた。


(ちょっと、このまま伝えたら紛争になるわ…)


アンナはとっさに言葉を選び直し、ティロヴァンに優しく説明した。


「枢機卿様は、産業発展を重視しつつ、エルフの大切な森にも配慮したいと考えています。共存の道を模索し、双方にとって最善の解決策を見つけることが重要だと…補償についても話し合いの余地があると仰っています」


エルフの王子は一瞬黙り込んだが、やがて頷いた。


「ふむ、我々は人間の発展を完全に拒絶するつもりはない。助けられている面もあるからな。しかし、これ以上の伐採は許すわけにはいかない。伐採をやめた先に共存の道があると心得ていただきたい」


スカーレットは苛立たしげにアンナを見つめた。


「彼、何て言ってるの?」


「伐採の停止が共存の条件だと」


「物分かりの悪い亜人ね…アンナ、あなたももっと強く出ていいのよ! 見てなさい!」


「!」


スカーレットが強い口調でエルフに向かって声を上げた瞬間、アンナは咄嗟に風魔法を使い、彼女の声を遮った。


挿絵(By みてみん)


少し驚いた表情でティロヴァン王子がこちらを見つめる。


「ほう…アンナは風の精霊セレティスアに祝福されているのか…だが、枢機卿の声を聞こえなくしたところで、彼女が攻撃的に怒鳴っているのは分かるぞ」


ニヤリと笑う王子に、アンナは冷や汗を流しつつ微笑み返した。


「で…ですよね」


ティロヴァンは向き直ると、静かに言った。


「しかし、君が風の加護を持つ者なのであれば、この交渉は信頼できる。我々はどうすれば合意できる? 君の考えを聞かせてくれ」


「あ、ありがとうございます。エルフの文化と自然を尊重することが、我々にとっても重要です。枢機卿は補償は検討すると申していますので、それを使って…」


スカーレットは2人の間で進んでいく交渉に少し不満を持ちながらも、エルフの王子がアンナの話に耳を傾けていることに気づき、安堵の表情を浮かべた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

枢機卿のもとで秘書官の仕事が始まったアンナ。

スカーレットはなかなか感情的で強引なキャラになっちゃいました。

しばらくアンナは彼女に振り回されるでしょうw


次回、交渉を上手く進めたアンナにスカーレットは・・・

10/26(土) 9:30に更新します。

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