第8話「最奥の決戦」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「助けに来てくれたパーティが囮になって壁の奥へと魔物を引きつけてる間に俺らは壁のところまで逃げてきたが、そこでさっきの魔物たちと遭遇して隠れるしかなかった」
ピーターたちと帰っていった冒険者はそう話していた。
まだ間に合うかもしれない。
そのどこかを探すのは容易だった。
道に戦闘の痕跡・血痕がたくさん残っており、俺たちを導いていたからだ。
血痕は部屋のような空間まで続いていた。
バキバキ!グシャ!
嫌な音が聞こえてくる。
松明を照らすと、部屋の奥で4メートルはあろうかという大鬼が棍棒で戦士を叩きつけていた。戦士は盾で受けたまま地面に潰されていた。死んだかもしれない…倒れたまま全く動かなかった。
戦士の後ろには3人の冒険者が傷つき倒れていた。まだ息はあるだろうか。
今にも大鬼がとどめを刺そうとしている。
「2人ともこの部屋を出ろ」
そう言うと姉は猛スピードで大鬼に向かっていった。棍棒を持った腕を狙って高くジャンプし、空中で回転、その勢いで思いきり斬りつけた。
ザックリと腕を切られ、棍棒が大きな音を立てて落ちた。
「グゴォオオ…グガァアアア!!」
大鬼はこちらを向き威嚇するように吠えた。
ギルバートは離れて詠唱を始めた。
次は足を狙って姉が低い姿勢で斬りかかる。
「グゴァ!」
反応した大鬼が姉を蹴り払った。右腕を強烈に蹴られて姉が壁まで転がる。
「お姉様!」
「大丈夫だ!早く部屋から出ろ!」
すぐに起き上がって剣を構えた姉の姿は帽子が脱げ、こめかみ辺りから流血していた。
「火の精霊イシュナリエルの力をとくと見よ!!」
ギルバートが炎の矢を放った。顔に命中し大鬼は二歩三歩と後ろに下がった。
「グゥムムム…」
姉はそれを見て、大鬼の横に回り込み脇腹を斬る。目が見えない状態で攻撃された大鬼は横を向いて腕を振り下ろすが、その時には既に姉は背後に回り込んで斬りつけていた。
苦し紛れに大鬼はめちゃくちゃに両腕を振り回した。
バチーン!
これが運悪く顔に当たり、姉は飛ばされて壁に激突した。脳しんとうを起こしたのか、すぐには起き上がれずにいる。
「姉さん!」
「いかん!」
ギルバートが炎の矢で援護する。しつこく顔を狙って大鬼の視界を奪う。
「静かなる薪よ、私の声を聞き、炎となりて大空へと昇れ!」
俺は閃いて、細い火を大きな炎に変える生活魔法を唱えた。
刺さっていた炎の矢が勢いを増して燃え上がり、大鬼をさらに焼く。
「グアアアアアアァ!!!」
思っていた以上に効果があった。時間稼ぎには十分だ。
起き上がった姉はだいぶ傷ついていた。
こめかみからはドクドクと血が流れ、右腕にも深い切り傷があり、ここからも血が流れていた。
剣を左手で持ち直すが、腕は下ろしたままで地面に引きずっている。姉がその剣を強く握ると淡く光り始めた。
「グギギギギ…」
大鬼も手負いだ。腕、脇腹、背中と深く斬られて黒紫の血が止まらない。顔は焼けただれて元の形が分からなくなっている。
「グゴォオオーー!」
それでも姉を見つけて両腕を振り上げて襲いかかってきた。
ギルバートがいち早く攻撃するが大鬼は炎の矢を喰らっても今度は怯まない。止まらず突進してくる。
姉の目の色が変わった。
大鬼の腕を最小限の動きでよけると、懐に入り下から裏拳を放つように大鬼の喉元を斬り払った。
ブシャアァァ………
喉から血を吹き出して大鬼が倒れた。
「ふぅ…」
姉はその場に座り込み、息をついた。
「見事だ、剣士ターニャ…貴女という人は…」
(続く)
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★あとがき★
これまで無傷のターニャが遂にぶっ飛ばされた回でした。大鬼はAIに描いてもらったんですがこんな奴に思いっきり叩かれたら一発であの世行きだろうなぁ・・・。
あ、あとトーマスが初めて戦闘時に魔法で活躍しました。まだ第3部は詳細まで考えてないけど、たぶん物語を通じて今回だけになるんじゃないかな(笑)
さぁお家に帰るまでが遠足です。次回、町に帰りましょう。