第17話「襲い来るメーガン」 - 5
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「観念しろ・・・」
男は冷たく呟くと、タリーサの肩を無情にも踏みつけ、剣を無造作に引き抜いた。
鋭い痛みが彼女を襲い、傷口から溢れ出る血が石畳に染み込んでいく。
「ぐああああ…」
傷口を踏まれた痛みに、タリーサは喉から絞り出すように叫ぶ。
視界が一瞬暗転し、痛みに意識が遠のきそうになる。
しかし彼女はすぐに意識を取り戻した。
男が再び剣を構える間に短い詠唱を唱えた。
空気が震え、ズンとした衝撃波が鎧を超えて男の腹をえぐる。
「くっ…小賢しいことを」
男はよろめき、姿勢を崩しかけたが、耐えた。彼の目には憤怒の光が宿り、再び立ち上がる。
バキッ!
男は思い切りタリーサの顔を蹴り上げた。
「ううう…」
抵抗する力を奪われ、タリーサはもう動けない。
体は重く、視界は狭まり、歪んでいく。
「今度こそ、これで終わりだ・・・」
男はタリーサの腹を踏みつけ、狙いを定めて剣を振り下ろそうとした。
その時、男の首に黒い太いひもが絡みついたかのように見えた。
次の瞬間、そのひもは鋭く動き、男の首を切り裂いた。血しぶきが高く上がり、男は驚愕の表情を浮かべたまま後ろに崩れ落ちた。
続いてもう1人の騎士の首にも黒いひもが絡むと、同じように斬り裂かれ、騎士は絶命した。
「ううう…」
タリーサはぼんやりと目を開けた。
霞む視界の中、黒い影が近づいてくる。そこには、忍者アーノルドが立っていた。
黒いひもに見えたのは彼の腕とその手に握られた黒い刃だった。
「姫様、起き上がれますか?」
彼の声が、タリーサの意識を現実に引き戻す。
◇ ◇ ◇
一方、ジャックは暗闇の中、街を流れる小川を辿っていた。
足跡を消しながらアンナを背負い、ようやく自宅近くまで戻ってきていた。
彼の呼吸は荒く、深手を負った体は限界に達している。最低限の止血を施したが、ジャックの視界は夜以上に暗く霞んでいた。
アンナにも止血をし、秘伝の薬を患部に塗った。ティレタルの忍者に代々伝わるその薬は、回復魔法に匹敵する癒やしがあるはずだが、アンナの意識はまだ戻らない。
「タリーサ様に・・・診てもらわねば・・・」
彼のこの想いだけがボロボロの体を今なお突き動かしていた。
タリーサの聖魔法なら、アンナを救えるかもしれない。
しかしタリーサが住む部屋には、まだ明かりが灯っていなかった。
もうだいぶ遅い時間のはずだが、もしかするとタリーサの方にも襲撃があったのかもしれない。
アーノルドは無事に姫を守れているのか? 不安は尽きない。
ジャックはそこではたと気づく。
襲撃者はアンナを仕留められなかった。
それならば、奴らは必ず自宅で待ち伏せている。迂闊に戻るわけにはいかない。
それはタリーサたちも同じだ。なんとかして彼らにこの事を伝えねば。
(続く)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!
★あとがき★
タリーサのピンチは忍者アーノルドによって救われました。
一方、ジャックは瀕死のこの状況の中で苦難がまだ続きます。
今回は本当にみんな死にそうだ・・・
次回、そしてジャックは・・・