第17話「襲い来るメーガン」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「お姉様、行ってらっしゃい!」
姉を稽古に送り出すとアンナは部屋の掃除を始めた。前世の時は家事は全て侍女たちがやってくれていた。それゆえアンナは家事が大の苦手だったが、今ではだいぶ様になってきた、とアンナ自身は思っている。
「さて、出かけますか」
なんとなく綺麗になったので、アンナは窓から向かいの建物の窓に合図を送ると家を出た。合図を受けてジャックは目立たないように隠れて護衛をしてくれる。
今日は教会に行って枢機卿たちの経歴を調べるつもりだ。トーマスはカルメサス伯爵から枢機卿を探るのを禁じられたので、自分が別ルートから動くのだ。
アンナと少し時間を空けてジャックも教会に入っていく。その様子を建物の陰から覗く男たちがいた。
数時間後に疲れた顔でアンナが教会を出てきた。
「話が長いっ! でも噂好きの神父様で助かったわ。今の教皇はどっちつかずで支持がない。保守派のアビゲイル枢機卿と革新派のスカーレット枢機卿が実質のトップ。ルーファスお父様とアビゲイル様は信条が近くて仲良くしていたというのは新しい情報ね。じゃあやっぱり敵視してくるとしたらスカーレット様のほうかしらね」
ぶつぶつと神父から聞いた話を振り返りながらアンナは帰り道をゆく。
夕方になり、家路を急ぐ人たちで大通りは混雑していた。
ジャックもその後ろからついて行く。
アンナを監視していた男たちもその後ろから用心深く歩いてくる。
混雑がひどく、思うように進めない。「このままじゃ時間がかかりすぎるわ……」アンナはふと気まぐれに、普段は通らない細い路地に入った。建物が密集して立ち並ぶこのエリアは、通りが極端に狭く、両脇の壁が迫ってくるように感じられるほどだった。
「もしかしたらこの道が近道だったりして。少し街の探検って感じで」と独り言をつぶやき、薄暗い道を進んでいく。
雑踏の中、急にアンナが細い路地に入ってしまい、ジャックは彼女を見失う。
「アンナ様、どこだ!?」
路地の奥に進むにつれ、光がさらに薄れ、周囲の建物が作る影が長く伸びる。背後にはジャックが距離を置いて護衛についているはずだが、この場所ではその気配すら感じられないほど、街の喧騒は遠のいていた。
背後に足音が近づく。ジャックではない。
アンナは反射的に身を硬くしたが、振り返る前に、前方にも影が現れた。
無言のまま近づいてくる2人の男。ローブをすっぽりと被り、顔だけが辛うじて見える。老人だが、その目つきは冷たく、鋭い視線がアンナを射抜いていた。彼らは、じりじりと距離を詰め、逃げ場を与えないように動いていた。
「お爺ちゃんたちにモテるのは嬉しいけど……そういう歓迎は嬉しくないかな・・・」
冗談を言ってみたが、アンナのその声には焦りが滲んでいた。
彼女は瞬時に状況を理解した。
これまでの聞き込みで黒幕に当たってしまったのだ。
小声で風魔法の詠唱をする。しかし、風の精霊の反応は鈍かった。周囲を見回して気づいた。
両脇を壁に囲まれて風が吹き込む余地がほぼない場所だ。
「これはまずいわ・・・」
腰に手をやるが、もちろんそこに剣は無い。
どんな事態にも対応できるように常に帯剣しろと姉から言われていたが「重たいからまた今度」と適当に受け流していたバチが当たった。
アンナは壁に背を押し付け、周囲を見回す。やはり逃げ場はない。
ローブの中から出てきた男たちの両手には短刀が握られていた。
「お姉様の言うことはちゃんと聞かなきゃダメね・・・」
もう一度、詠唱をする。少し風の精霊が反応した。
(続く)
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★あとがき★
全員忘れてると思いますが、アンナは死に戻りしていて前世は貴族令嬢でした。
そんなことより大ピンチです。アンナが得意とする風魔法の反応が悪く、武器も持っていない。
護衛の忍者、ジャックともはぐれてしまった。
次回、アンナ決死の戦い!ジャックはやく~