第6話「ヴァーレルソルイの洞窟」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「しかしターニャ殿、貴女の太刀筋は独特ですな。今まで何人もの戦士や剣士と旅をしてきたが見たことがない。騎士っぽい型があり、それでいて最小限の動き・最短の軌道で急所を突く、至極実戦的なものだ」
「魔法使いなのに太刀筋を見てらっしゃるとはギルバートさんも独特ですね」
「私は昔は剣士だったんだ。子供の頃から剣を振るうことが好きで、色々な人の型を研究して取り入れてきた」
「それでお詳しいんですね」
「でも好きなことが自分に向いているとは限らないのが、人生の難しく、かつ面白いところでな。剣士としては全く活躍できなかった」
ギルバートの自分語りに熱が入ってきた。
「そんな時ある冒険で大怪我をして、静養していた。時間を持て余して読んでみた魔導書がするすると頭に入ってくる。魔法の発動も苦もなくできる。ああ、私の天職はこっちだったのかと気づいて転職して今に至るよ。あの時に大怪我をしていなければ魔法使いギルバートは誕生しなかった。不思議なものだな」
そうだ。人生なにがキッカケで自分の生きる道が見つかるかわからない。
いま歩んでいる道はたまたま出会った道であってこのあと分かれ道があるかもしれないし、あってもそれに気づかないかもしれない。
きれいな花が咲いていたという理由程度でもう片方の道を選ぶかもしれない。
この先も延々とつまらない人生が待っているなんて考える必要はない・・・のかもしれない。
まだ12年の人生だけども。
ギルバートに影響されて俺も心の中の語りが過ぎてしまった。
まさに分かれ道に辿り着いた。足跡などの痕跡も見当たらない。どっちに行ったらいいのだろうか。
ギルバートが前に出た。
「私に任せなさい」
そう言うとその場に座り込み念じ始めた。
目を閉じたまま左右の道に顔を向け、難しい顔をしている。
「右だ。奥の方に崩れた壁があり、その近くで何人か物陰に隠れている。見たことのない魔物も1,2,3・・・5匹いるようだ。人間型だな、武器を持っている」
「ギルバートさん、どうやってそれを見たの?」
たまらずダニエラが質問する。
「超人神オルガヴェインの力を借りて、見る力を奥まで飛ばして確認した」
「へ?」
「オルガヴェインってもしかして氣魔法!?」
俺はオルガヴェインを知っていた。暇すぎて町の図書館で本をダラダラ読んでいたら古代神や魔法体系に詳しくなってしまっていた。
「その若さで良く知っているな。ターニャの弟君も只者ではないということか。そう、氣魔法だ」
氣魔法は超人神オルガヴェインを源泉とする魔法で、知覚や筋力など人間が持っている能力を数倍数十倍に高める魔法群、と本に書いてあった。
修道僧が学ぶ魔法と言われていて、魔法使いのギルバートが習得しているのは相当珍しいはず。
精霊魔法に聖魔法に氣魔法を操る元剣士の魔法使い。ギルバート1人でこの洞窟を制圧できるんじゃないか?
「残念なことに私はとても疲れやすい体質なんだ。見てくれ、既に汗だくで肩で息をしているだろう?」
(第6話 完)
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★あとがき★
ギルバートの性格設定は「話が長い、自己顕示欲が強い」です。
そんなギルバートの話を聞いているうちに弟トーマスがいつの間にか感化される回です。
これはこれで意図があるのですが回収するのは第1部の最後か、第2部かなぁ・・・というくらい先の話です。
★この世界・物語の設定(4)★
「超人神 オルガヴェイン」
元々人間だったがあらゆる力を高めた結果、神になったと言われている存在。
氣魔法の源泉となる神。
次話、ターニャたちは洞窟の奥で中ボスとの対決を迎えます。ギルバート大活躍の予感