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第16話「聖騎士団長グレース」 - 4

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

タリーサ(ターニャ)が聖騎士団長グレースと会っていた頃、ドウヴェイン侯爵家では不穏な動きが起きていた。


◇ ◇ ◇


立派な石造りの館に、一台の優雅な馬車が戻ってきた。

黒く磨かれた車体は陽光を受けて淡い光を放ち、館の前に停まると、御者が素早く跳ね降りて扉を開ける。60歳という年齢を感じさせない軽やかな振る舞いで馬車の中から現れたのは、メーガン・ドウヴェイン侯爵夫人だ。


きれいに結い上げられた彼女の髪は銀色に輝き、纏うダークグリーンのドレスと上質のショールが鮮やかなコントラストを成し、彼女の気品を高めている。


夫人会から戻ったメーガン夫人はドウヴェイン侯爵を見つけると興奮気味に話しかけた。


「あなた、今帰りました。ねぇ、聞いて! イリドリュア子爵夫人が孤児院の運営に協力してくださる事になったわ! これでもっと大勢の子どもたちを孤児院に迎えることができる。ああ、なんて素晴らしいことでしょう!!」


しかし、ルイス侯爵の反応は驚くほど淡白だった。

「あ、ああ、お帰り。それは良かったね。何よりだ」


侯爵は少し動揺しているように見えた。彼は短く答えただけで妻に目を合わすことなく逃げるように自室へと引き返してしまった。


不思議に思ったメーガンは隣に控える老執事グレンに鋭い視線を向けた。


「グレン、私のいない間に何があったの?」


その一言で、グレンの顔は瞬時に強張り、動揺が見て取れた。


「あ、い、いえ、特には何もございません、奥様……」


しかし、その震えた声は嘘を隠しきれていなかった。執事の目はどこか落ち着かず、床を見つめたままだった。


その瞬間、メーガンの表情が冷たく変わった。先ほどまでの穏やかな笑顔は消え、瞳には鋭い光が宿る。彼女の声は低く、冷徹な響きを帯びる。


「グレン、私に隠し事するとはいい度胸ね。その歳で無一文になってこの家を放り出されたいの?」


その威圧的な言葉に、グレンの顔色が一気に青ざめた。


「そ、それはご勘弁ください……奥様……実は……」


グレン執事の話は、にわかには信じられないものだった。


「セルヴィオラ…本当にその女はセルヴィオラと名乗ったの!? どんな顔の女だったの?」


大きな帽子にヴェールで顔を隠した女。そこまで素性を隠して現れ、セルヴィオラ家の紋章を持っていたのであれば、本当にセルヴィオラ家の生き残りに違いない。メーガンは心臓が強く脈打ち、体中が熱くなるのを感じた。あの忌まわしい一族を根絶やしにできていなかった。


メーガンは目を閉じ、深く息をつくと再び穏やかな表情に戻り、グレンに指示した。


「ま、そんなことはどうでもいいわ。それより大工と庭師たちを呼んでちょうだい」


数分後、メーガンの部屋に現れたのは彼女と同年代の男たちだった。

侯爵家に大工や庭師として勤める彼らは、年老いていながらも背筋は伸びていて体もがっしりとしている。この男たちはエルドムイ家時代からメーガンに仕える部下であり、今もなお、彼女の手足となり動く熟練の戦士たちだった。


メーガンは無言で彼らを見つめ、やがて口元にわずかな笑みを浮かべた。


「お前たちの仕事が残っていたわ。探し出してキチンと片付けなさい」


男たちは無言で頷き、部屋を出ていった。


挿絵(By みてみん)


(第16話 完)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

遂に宿敵が登場しました。ドウヴェイン侯爵へ訪問したことで、妻メーガンにタリーサ(ターニャ)の存在がバレてしまいました。このように敵側を描くか迷ったのですが、この後に続く緊張の展開には必要だなと判断。5月に作ったプロットから大きく変わりましたなー


次話、ここから急展開、第二部もラストスパートに入ります。

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