第16話「聖騎士団長グレース」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
「ここは目立つので私の家に行きましょう」とグレースはタリーサを誘い、歩き出した。
「ルーファス団長は伝説の人でした。圧倒的な強さと指導力。そして国民から愛された聖騎士です」
グレースは憧れの人とその彼についてきていた少女を思い出しながら話を続ける。
「あの頃のタリーサ様は、小さいのに団長たちに鍛えられて剣技も聖魔法も見事な腕前でしたね。可愛らしいお嬢さんがひとたび剣を持つとクルクルと舞って、あっという間に相手の背後を取る。将来どんな有望な剣士になるかと皆で話していたのですよ。今も剣を続けていらっしゃるのですね」
タリーサが腰に下げた剣に目をやり、グレースは微笑んだ。
「はい…この剣は父の形見なんです。今は踊り子をしていますが、王都に来るまでは仲間の護衛をしていました」
「タリーサ様が踊り子を!? 待ってください、いま話が繋がりました。風刺巧芸杯でカルメサス家の近衛騎士を圧倒した女道化師がいたと部下から聞いていましたが、それはタリーサ様のことだったのですね!」
グレースの前では隠し事は無意味だ。タリーサは素直に認めた。
◇ ◇ ◇
グレースの家は聖騎士団長にしては控えめな石造りの一軒家だった。
この界隈は同じような家が多く並んでいる。彼女は望んでこうした家を選んでおり、ペネロペ副団長他オーリンダール家から遣わされた騎士たちは隣近所に住んでいるという。
「修行中の身ですから、使用人や客間は不要と言ったのですが、警備の都合上平屋では困ると言われ、この家にしました」
と、彼女は苦笑いしていた。
たしかに一人暮らしには少々広すぎる家だ、とタリーサは思いながら中に招かれる。しかし中に入り、彼女は驚いた。
一階は広間になっていたが、舞踏会を開くような場所ではなく、訓練場になっていた。床は硬い木材が敷かれ、周囲の壁には剣や斧、槍、鎧、盾などの武具が掛けられている。広間には、人形の戦士や馬上訓練用の木馬が並び、何とも無骨な光景だった。
「ご覧の通り、1階にはくつろげる場所がありません。どうぞ2階へ」
奥へ進むと、人が一人通れるかどうかの狭い階段があった。それを上ると、タリーサは再び驚くことになる。
2階の端に1部屋ある以外は壁に沿って作られた回廊。その壁には剣や槍に加えて弓矢が多く掛けられている。そしてその異様さで目を引くのが多数のロープ。本来広間があるべき中央の床を無数のロープが上から吊っていた。
「これは…一体なんですか?」
「いざという時の迎撃システムです。そこのロープを切ると天井が崩れて1襲撃者を一網打尽にします。崩れた後は回廊から弓矢で残党を射るわけです。くれぐれもロープは触らぬよう気をつけてくださいね」
唖然という言葉以外に見つからなかった。
狭い階段も吊られた天井も2階の回廊も全て戦う為の設備になっていた。
(続く)
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★あとがき★
自分の幼少の頃を知るお姉さんキャラで登場したグレースでしたが、家に行ってみるととんでもないことになっていました。次回の挿絵でその異様な内装をビジュアルでお伝えします。生成してみたらとんでもなかったw
次回、グレースはタリーサにどうしても頼みたいことがありました。