第16話「聖騎士団長グレース」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
ターニャは張り詰めた面持ちで木陰で待っていた。
もう頼らないと決めていたのに、聖騎士団長グレースを呼び出すにはフェリックスの力を借りねばならなかった。彼は頼られることに喜びを感じ、快く団長との面会を取り持ってくれたものの、ターニャの胸にはどうしても気まずさが残っていた。
ベレンニア王国第14代聖騎士団長グレース・オーリンダール。
彼女は生前の父ルーファスをよく知り、そして死の真相を知っている可能性が高い人物の1人。彼女と話すことができれば、ターニャの抱える疑問の多くが解け、物事が大きく前進するはずだ。だが、真実を知りたいという焦りと、その内容がどれほど恐ろしいものになるかという不安が、彼女を包んでいた。
やがて待ち合わせ場所に紫の鎧を纏った女性の騎士が姿を現した。
ゆるやかに波打つ漆黒の長髪、透き通るような白い肌、強い意志を映し出す瞳。だが最も目を引くのは、彼女の美しい顔立ちに刻まれた左頬の深い刀傷だった。
歴戦の猛者の体に傷痕は多い。顔など目立つ場所の傷を魔法で消すことができる中、彼女はあえてそのままにしている。それがなぜかは誰にも分からないが、その容貌が聖騎士団長グレースの名をさらに有名にしていた。
「お待たせしました。グレースです。私との面会を求めたのは貴女ですか?」
グレースは大きな帽子に顔を隠すベールを着けたターニャに少し警戒しながら声を掛けた。
低く落ち着いた声にターニャは振り返ると深く頭を下げた。
「遠征からお戻りのところ、お呼び立てして申し訳ありません。グレース団長、初めまして。私はタリーサ・セルヴィオラと申します」
セルヴィオラ…その名が告げられた瞬間、グレースの表情が変わった。
「…タリーサ様! 本当にタリーサ様ですか!? 生きていらっしゃったとは…よかった。本当に…よかった」
彼女は目に涙を浮かべ、感極まった様子でタリーサ(ターニャ)の手を握りしめた。
「私たちは、初めてではありません。私はタリーサ様がルーファス団長に連れられて訓練場に来ていた頃、あの場におりました! ああ、こうして再びお会いできて嬉しいです」
感情をストレートにぶつけてくるグレースに圧倒されながらも、タリーサはこの人ならば父の話を話してくれると確信した。
「父が亡くなり、セルヴィオラ家が滅んでから長い年月が経ちました。ようやく私は王都に戻ってくる事ができ、当時何が起きたのかを調べ始めています。グレース様、どうかご協力いただけませんか?」
グレースは間髪入れずに答える。
「もちろんです。あの事件は一応解決したことにはなっていますが、釈然としないことばかりです。私もルーファス団長に何があったのか知りたいのです」
(続く)
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★あとがき★
第1部で王都に凱旋した時に一瞬登場したグレースをようやくちゃんと登場させることができました。
異端な存在にしたかったので傷痕をくっきり入れました。AIで描いている時にはどんな経緯の傷なのか考えてなかったのですが、こういうのが後からエピソードを生んでくれるんですね。実際生まれました。
次回、グレースは自宅にタリーサ(ターニャ)を誘います。