第15話「種族間交渉官」 - 6
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
アンナは考え込むように、手を顎に当てて言った。
「行き詰まってしまいましたね。お姉様、エルドムイの他の兄弟の行方を探しましょうか?」
それにはトーマスが即座に口を挟んだ。
「いや、当てのないエルドムイの他の兄弟を探すよりも、今度はベレンニア聖騎士団を当たってみよう。枢機卿もメーガン夫人もダメならここしか無い」
「当たるとしたら団長のグレース様?」
と、アンナ。
「そう、実はグレース団長は遠征から昨日戻ってきたようなんだ。彼女はルーファス父さんが暗殺された時から聖騎士団にいたし、ラルフ団長がアビゲイル枢機卿を襲った事件も当事者だ。マリア伯爵と年齢が近い。カルメサス家の先代の事も何か知っているかもしれない」
トーマスは、グレース団長に活路を見出そうとしていた。
ただ彼女もセルヴィオラ家に因縁のあるオーリンダール家の長女。敵でないとは言い切れない。
少し重い空気が漂う中、トーマスがふと気づいたように声を上げる。
「あれ、ところでエミリーさんはどうしたの?」
ターニャは少し躊躇しながら答える。
「…彼女はある人物の尾行を続けている」
アンナがニヤリと笑い、ターニャをからかうように言った。
「お姉様、ある人物じゃないでしょ。若くて爽やかな美男子の聖騎士様ですよね?」
「なに? 姉さんに恋人がいるの?」
トーマスが楽しそうに目を輝かせた。
ターニャは顔を赤らめ、少し怒ったように返す。
「な、何言ってるの! 違うわよ!」
アンナは笑みを浮かべながら、さらに追及する。
「お姉様はその方とティサネリーで仲良くお茶を楽しんだり、闇市を一緒に回ったりしてるんですよね?」
ターニャは声を震わせながら返す。
「そ、それは狙いがあって・・・アンナに告げ口したのはエミリーね!」
アンナは肩をすくめ、穏やかに言った。
「いいんですよ、お姉様がそういう時間を過ごすのも大切です。お姉様ももういい歳なのですから浮いた話の1つや2つ無いとむしろ私たちが心配しますよ」
ターニャは首をブンブン振りながら声を張り上げた。
「怒るわよ! 確かにフェリックス様には告白されたけど断ったし…お父様のことを調べるために近づいているだけで…」
「告白・・・されたんだ・・・姉さん、良かったじゃん」
「だから違うんだってば!!」
アンナは優しい声でターニャをなだめるように言う。
「お姉様、落ち着いて。私は嬉しいんです。お父様の真実を見つけることだけに人生を費やしてきたお姉様が少し息抜きする時があったっていいじゃないですか。目的は変わりません。でも今この瞬間の人生も味わって欲しいんです。これはお姉様の人生なのですから。ね?」
その大人びた言葉に、トーマスもターニャも一瞬言葉を失った。
しばらくしてようやくトーマスが口を開く。
「なんか…アンナの方がお姉さんみたいだね」
その言葉にターニャが反応して口を滑らせる。
「そうなんだよ、トーマス。だって実際アンナの方が…」
「お姉様!!!」「きゃ!!」
アンナが叫んだ瞬間、ターニャは宙に舞っていた。
床に叩きつけられたターニャは、痛みも忘れて驚愕した。
いつの間にかアンナは無詠唱で魔法を発動させる事までできるようになっていた。
アンナは睨みながら低い声で姉をたしなめた。
「お姉様、私との約束、忘れないでくださいよ・・・」
「・・・はい。すみません…アンナさん」
姉から返事を得るとアンナは表情を一変、満面の笑みを携えて尋ねた。
「それでお姉様。そのフェリックス様はどんな方なのですか? どんな言葉で告白されたのですか?」
(第15話 完)
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★あとがき★
シリアス続きだったので最後だけ少し遊びました。
この時のためにアンナの魔法力は増大していたのです。色々画像を描いてみましたがこれが急に飛ばされた感が出ていて良かったので採用しました。
次話、遠征から戻った聖騎士団長グレースとの対面です。