第15話「種族間交渉官」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
100年かそれ以上前、セルヴィオラ家とエルドムイ家はリダニウ鉱山の権益を争った。鉱山の共同管理者はドワーフ族。坑道爆発事件をきっかけに3者の争いが起き、結果としてエルドムイ家は不遇な処分を受けた。
セルヴィオラ家への復讐を訴えていたエルドムイ家の長女メーガンは対ドワーフ交渉官のドウヴェイン家に嫁ぐ。数十年前のことらしい。
その後、今から17年前に父ルーファスが暗殺され、さらにセルヴィオラ家の鉱山における不正会計が明るみになり、セルヴィオラ家は断絶となった。不正会計に対してはドワーフ族からの強い抗議があった。
全てが繋がったようにも見える。
17年前の事件はメーガンが暗躍して不正会計を明るみにしたり、ドワーフ族を扇動したりしたのではないか。しかし、そんな事が本当にできるのだろうか。
「交渉官の夫もグルかもしれない。それでも本命のメーガンに当たる前に夫に当たってみて。もしグルじゃなければ何かを聞き出せるかもしれない」
しばらく考えた後、トーマスは姉にそう告げた。その目は真剣だった。
ターニャは大きく頷くと「うん、わかった」と返した。
それは貴族界隈に素性を明かすという不退転の決意だった。
◇ ◇ ◇
ドウヴェイン侯爵夫妻はちょうど王都ルオハンジェにいた。運営する孤児院の視察に定期的に王都に来るのだそうだ。
夫人会が定期的に行われていることをトーマスが掴み、侯爵訪問のタイミングは決まった。
「私が一人で行く。万が一拘束された場合に備えて忍者たちには待機してもらう。トーマスとアンナは無関係を装っていて」
ターニャは王都のドウヴェイン家宮廷を訪れた。
今日だけは貴族らしい衣装を着ている。
とはいえ、大きな帽子とベールは相変わらずなので門番には警戒された。
「ごきげんよう。ドウヴェイン侯爵に会いに来ました」
「この時間、来客予定はございませんが…お名前を伺えますか?」
「セルヴィオラ。タリーサ・セルヴィオラが来たとお伝えください。それで伝わります」
数分後、ターニャは謁見の間に通されていた。
現れたのは執事だった。
「ただいまご当主様は外出しており不在でございます。代わって執事の私がお話を伺います。セルヴィオラを名乗られていましたが、あの家は断絶し既に存在しません。本当にセルヴィオラ家の方ですか?」
ターニャは帽子とベールを取って答える。
「はい。私はダグラス・セルヴィオラ元伯爵の孫でございます。断絶された時は10歳でした」
そう言いながら懐からセルヴィオラの家紋が入ったネックレスを取り出し、執事に差し出した。
「これは確かにセルヴィオラ家の家紋です。ただ大変申し訳ないのですが、先ほど申し上げました通り…」
「もうよい。私が話を聞こう」
奥からドウヴェイン侯爵が出てきた。
執事は静かに下がり、部屋を後にする。
「セルヴィオラか、懐かしい名前だ。そしてあの時の物悲しい気持ちが蘇ってくる」
侯爵は、遠い記憶を呼び起こすかのように眉間に深い皺を寄せていた。
(続く)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!
★あとがき★
よくない癖が出て、またプロットを考え直してしまい、更新に時間を要しました。
更新遅くなって申し訳ありません。
次回、侯爵は種族間交渉官のプライドを語ります。