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第15話「種族間交渉官」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

ターニャは覚悟を決めてアンドリューに尋ねた。

「わかりました。アンドリュー様の妹君に会いに行きます。どちらに嫁がれたのですか?」


「メーガンはドウヴェイン侯爵家に嫁いだ。王都近くに館がある。そこに行ってみるがいい」


姉妹は礼を言って小屋を出た。

帰るときも小屋の前の白いライオンの魔物は、丸くなって眠ったまま彼女たちを気にする素振りを見せなかった。


メーガン・ドウヴェイン。このエルドムイ家の長女は弟たちとともにセルヴィオラ家への復讐を訴えていたという人物。現在は侯爵夫人となっており、強い権力の持ち主だと思われる。


ジャングルの中を川に沿って帰っていく道すがら、アンナは不安になり姉に尋ねた。

「お姉様、本当にメーガンさんに会いに行くのですか? その方はセルヴィオラ家に恨みを持っています。本当に17年前の事件の黒幕かもしれませんよ」


問われたターニャに迷いはなかった。ぬかるんだ地面を気にすることなく足早に来た道を戻っていく。

「会わなければならない人だと思うの。真実を知っている人かもしれない」


アンナは姉の腕を掴んで引き止めた。

「待ってください、『その通り。私がお前の父親を殺したよ』と言われたらお姉様はどうなさるおつもりですか?」


「わからない。さっきアンドリュー様に答えたのは本心だよ。自分でもどうなるか想像がつかない。でも、でも会わなきゃいけないんだ」


「・・・」

アンナは姉が自分で自分自身を追い込んでいる気がして、とても不安だった。

自分にも問いかける。親の仇を前にした姉を自分はどうするのだろう。復讐に協力するのか、必死に止めるのか。先ほどアンドリュー老人は自分にも問い掛けていたのだと今頃になって気づいた。


「復讐の連鎖は断ち切らねばならない」


アンドリューの言葉がアンナの頭の中を駆け巡る。


◇ ◇ ◇


ジャングルを抜けて、アーノルドたちと合流すると、ターニャたちは王都へ戻った。

アンナは、すぐにもドウヴェイン家を訪問しようとする姉を引き留めて、トーマスの元へ連れて行った。

自分では姉の早まる気持ちをこれ以上止めることができない。双子の兄を頼るしかなかった。


いつものようにカルメサス伯爵家の館の門の前で3人が揃い、相談を始める。

伯爵家の宮廷道化師を務めるトーマスは、貴族たちにも詳しくなっており、ドウヴェイン家のことも知っていた。


「ドウヴェイン侯爵は、たしか種族間交渉官だね」


種族間交渉官は、名の通り種族を越えた交渉ごとを担当する外交官だ。

人間同士とは違い、言葉や文化が違うだけでなく根本的な能力や体格、さらには寿命差による時間感覚までもが違う相手との交渉は高度な能力を必要とする。


種族間交渉官は、対エルフ、対ドワーフのように各種族に特化して担当する。各種族があまりにも違うからだ。また、種族間交渉官の家系が存在し、代々この仕事を担っている。


それは一生を賭けた仕事になる。


対エルフ交渉官の家に生まれた者は、幼少の頃にエルフの部族に預けられ、一緒に生活を送る。そして一定の年齢になると人間社会の交渉官学校に入学し、エルフの教官や現役交渉官から教育を受ける。人間社会に戻ってからも定期的にエルフとの交流を続け、やがて種族間交渉官に就任する。現役の間も退官後も後進の育成に身を賭す。


挿絵(By みてみん)


種族間の交渉は、人間の国家間と同等かそれ以上に重要と位置付けられ、交渉官家系は全て王家の近縁の侯爵家で固められている。


「ドウヴェイン家は代々、対ドワーフの種族間交渉官を務める家系だったはずだよ」


トーマスはそう答えながら、やはりメーガンは黒幕かもしれないと考え始めていた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

前の話に続き、実家セルヴィオラ家と因縁のあったエルドムイ家の子孫たちを辿る展開です。

ジャングルに住んでいたアンドリュー老人の妹メーガンは、ドウヴェイン侯爵夫人となっていました。

ちなみに、ドウヴェイン侯爵は第13話で出てきた元聖騎士のハンスが務める孤児院のパトロンです。


次回、トーマスは話を整理し、種族間交渉官のドウヴェイン侯爵に会いに行くことを勧めます。

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