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第14話「エルドムイ」 - 5

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

「そ、それは…分かりません」


なんとか絞り出したその答えを聞き、アンドリューは軽く笑みを浮かべた。


「正直だな。その素直さが気に入ったよ。私には弟2人と妹がいた。両親が亡くなった後、彼らはセルヴィオラ家への復讐を望み、私とは意見が対立した。彼らは家を出て行った。もう何十年も前のことだ。私はエルドムイ家を断絶させ、この小屋に移り、あの魔物と共に暮らしている」


アンドリューの声はどこか寂しげで、その言葉には過去の重荷が感じられた。


「もしかしたら弟たちは、貴女方の父親を狙って復讐したのかもしれない。そうだったとしてももう一度言う。復讐を重ねることには何の意味もない。復讐の連鎖は断ち切らなければならない。もし本当に弟たちが真犯人だったとしても、彼らを許してやってほしい。できるかね?」


その言葉に、ターニャは大きく動揺した。手が震えている。


「うう…私には自信がありません。その時、自分がどうなるか分かりません。ごめんなさい、分からないんです」


ターニャの声は震え、目に涙が浮かんでいた。

彼女の中で、怒りと悲しみ、そして困惑が渦巻いているようだった。


「お姉様…」

アンナは心配そうに姉の手を握る。

アンドリューは静かに頷き、彼女たちを優しく見つめる。彼の目には、理解と同情の色が浮かんでいた。


「自分の心に正直で無垢な娘タリーサ・セルヴィオラよ。貴女の中に復讐の炎が生まれ、それを抑えられない時は再びここに来なさい」


ターニャは驚いた表情で彼を見上げた。

彼女の目は大きく見開かれ、混乱と戸惑いに満ちていた。


「ここで…何を?」


「貴女はここで私を殺す。私はエルドムイ家の家長だ。私を殺せば仇討ちは遂げられるだろう? 弟たちは私はもう死んだと思っている。ここで復讐の連鎖は終わる」


アンドリューの声は穏やかだが、その言葉の重みはしっかりと伝わってきた。


「そんなこと…できません!」


正気とは到底思えない話に驚き、ターニャは必死に首を振る。

しかしアンドリューの目は真剣だった。


「大丈夫だ、貴女は私が解放する。私はどうせもう長くは生きられない。後に残る者たちへの清算を、ここで終えねばならない」


アンナは思わず「アンドリュー様…」と小さな声でつぶやいた。その声には、悲しみと敬意が混じっていた。部屋の中に重い沈黙が広がる。サルの鳴き声だけが、かすかに聞こえてくる。アンドリューは静かに続けた。


挿絵(By みてみん)


「弟たちの行方は分からないが、妹は嫁ぎ先が分かる。覚悟を決めたならば会いに行ってみるがいい。その時自分がどうなるのか、冷静に向き合いなさい」


ターニャは不安そうにアンドリューを見つめた。


「アンドリュー様は妹君を使って私を試すのですか?」


「ああ、そうだ。貴女は妹を殺すことはしない。しかし抑えきれない感情が生まれたならば、それをここに持って帰ってきなさい」


アンドリューの言葉には、厳しさと慈愛が混ざっていた。彼の目は遠くを見つめ、過去と未来を見据えているかのようだった。ターニャは、時を越えた復讐と赦しの狭間にいた。闇と光が交錯する鬱蒼うっそうとしたこのジャングルで、彼女の運命は新たな局面を迎えようとしていた。


(第14話 完)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

この物語を思いついてプロットを考えていく内にどんどん空想広がって、今回の場面に辿り着きました。アンドリュー老人が問いかける「復習の連鎖は終わらせなければならない」という言葉は、平和な国で生きる者が軽々しく言えないものです。それがファンタジー世界を借りれば言える。そんなところからこの物語を書き続ける意欲が湧いているような気がします。真面目過ぎて気持ち悪いw


次話、ターニャはアンドリューに試された道を歩んでいきます。

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