第14話「エルドムイ」 - 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
ジャングルの奥深く、緑の天蓋の下を蛇行する川。
その濁った水面から突き出た木の柱の上に小屋が建っている。小屋の前には大きく平らな岩があり、その上で一匹の白いライオンの魔物が丸くなって眠っている。ライオンは年老いて痩せているが、その身に纏う不気味な気配が、並外れた力を秘めた存在であることを物語っていた。
少し離れた場所から姉妹は、息を潜めて小屋を覗いていた。ライオンの異様な存在感に圧倒されつつも、彼女たちは覚悟を決めて行動を開始する。
アンナは姉の指示に従って魔法の詠唱を始めた。ライオンがこちらに飛びかかってきた時に備え、自分たちを守る風のバリアを張ろうとする。しかし・・・
「え、なんで!? お姉様、風の精霊が反応しません!!」
アンナの驚いた声がジャングルに響いた。
慌ててターニャは彼女の口を塞ぐ。妹の口を塞いだままターニャも聖魔法を唱えてみたが、聖なる祈りと瞑想の守護神キラストリエも同じく無言だった。
「おかしい・・・何も感じない。あのライオンの力なの?」
2人がその場で動けずにいると、ちょうどそこに小屋の中から老人が出てきた。
老人は姉妹を見つけると声を掛けてきた。
「客人か、珍しいな。この子が警戒しないという事はあなた方に敵意はない証拠だ。こちらに来るがいい」
そう言い残すと、老人は再び小屋の中へと引っ込んでいった。
「は、はい。お邪魔いたします」
2人は緊張した面持ちで、ライオンの魔物に一瞥をくれながら、その横を通り過ぎた。ライオンは何の反応も示さず、目を閉じたまま微動だにしなかった。恐る恐る梯子を登り、小屋に入った。
小屋の中は湿気が漂い、古びた家具が雑然と置かれていた。壁には古ぼけた布がかけられ、床には動物の皮のラグが敷かれている。
「1人で暮らしているので、テーブルセットなど無く申し訳ないがそこに座ってください。すまないが私はこの椅子に座らせてもらうよ。腰がどうも良くなくてね・・・」
老人は床のラグを姉妹に勧めると、自分は小さな椅子に腰掛けた。
「姉妹の冒険者かな? このジャングルは暗く深い。道に迷ったかな? それとも泊まる場所に困ってここに来たのかね?」
「いえ、ここを目指してやって参りました。失礼ですがエルドムイ様でいらっしゃいますか?」
一瞬、老人の顔に戸惑いの色が浮かんだが、すぐに表情を引き締め、問い返した。
「この場所を誰に聞いたのかな? ここを目指して来る人なんて何年ぶりだろうか」
「ドワーフの長老ボリン様に、ここにエルドムイ様が住んでいらっしゃると伺いました」
その言葉を聞いた途端、老人の顔に苦々しい表情が浮かんだ。
「あいつ・・・。なぜあいつはこんなお嬢さん方に私の居場所を…お2人すまないが…」
不機嫌そうな態度を見て、ターニャは慌てて口を挟んだ。
「申し遅れました! 私はタリーサ・セルヴィオラと申します。こちらは妹のアンナ・セルヴィオラです」
その名を聞いた瞬間、老人は驚き目を見開いた。しばらく沈黙が続いた後、彼は深く息をついてから、静かに言葉を紡いだ。
「…セルヴィオラの子か。どうりでボリンが。セルヴィオラの子がエルドムイのアンドリュー爺いにどんな用事かな? 昔話をしてやってもいいが楽しいものではないぞ」
(続く)
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★あとがき★
ジャングルの奥には白いライオンの魔物と暮らす老人がいました。
彼が実家セルヴィオラ家と深い因縁を持つエルドムイ家の長男です。
三代くらい前からの因縁がこれから語られます。
次回、アンドリューはターニャに問います。