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第14話「エルドムイ」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

数日後、アンナたちは無事にリダニウ鉱山から戻ってきた。


「お姉様、セルヴィオラ家にはかなり古くからの因縁がありました。ルーファスお父様の事件にも関係しているかもしれません。エルドムイ家というセルヴィオラ家によって没落した貴族がいます。既にこの家は断絶して散り散りになっていますが、ドワーフの長老に長男の居場所を教えてもらいました」


妹の報告に驚くが、ターニャも別の重要な情報を掴んでいた。事件の核心に近づく手がかりになりそうだ。


「私も教会関係者が絡んでいるかもしれない話を聞いたわ。トーマスと相談して次の作戦を練りましょう」


アンナとターニャはカルメサス家へ向かいながら、互いの情報を共有した。石畳を踏みしめる足音が静かに響く。周囲は整った庭木が並び、涼しい風が木々の間をすり抜けて肌を撫でる。二人は次第に重厚な門が見えるカルメサス家の前に到着した。


館の前には何台かの馬車が停まっている。

装飾も立派で、重要な客が来ているのは明らかだが、館の中はひどく静まり返っていた。二人は門の外で待つが、トーマスが出てくる気配はなかった。


鳥のさえずりや、馬の鼻息がかすかに聞こえるだけで、館の扉は閉ざされたままだ。時が経つにつれて、静寂がじわじわと不安を呼び起こす。何度か門越しに館を覗き込んだが、変わらない状況にアンナがぼそりとつぶやいた。


「どうしたのかしら……」


その時、やっと館の扉が静かに開き、数人の集団が姿を現した。二人はその中に黒人の男性を見つけて驚く。


挿絵(By みてみん)


「ん? あれはピーターさん?」


「え? あ、ダニエラ姉様もいる! 月明かり団の方々だわ!」


アンナは嬉しそうにジャンプしながら手を振った。それに気づいたダニエラが驚きながらも笑顔で駆け寄ってきた。


「わ! なんでターニャもアンナもここにいるの?」


ピーターやステファン座長たちもターニャたちの存在に気づいて笑顔で歩いてくる。


少し遅れて、トーマスも館から出てきた。

彼はやや疲れた様子だったが、どこか満足げな表情を浮かべていた。実は彼、マリア伯爵に「道化師として仕事をしろ」と叱られたばかりで、王都に戻ってきた月明かり団を呼び、宴で芸を披露したところだったのだ。


「ようやく終わった……」


◇ ◇ ◇


月明かり団との再会を喜んだ後、三姉弟は定例の打ち合わせを始めた。

オリビア侍従が少し離れた場所から、いつものように監視している。トーマスは疲れを感じつつも、姉妹が持ち帰った話に驚き、すぐに集中力を取り戻した。


「100年以上前から続く因縁に、政略戦争……。かなり慎重に動かないと危ないね」


「そうね。お父様の死の真相に一番近そうなのは、アビゲイル枢機卿よ。彼女とお父様は事件直前に何か話し合っていたらしい。トーマス、枢機卿について調べてくれる?」


姉妹は実家の古い因縁を調べるため、エルドムイ家の長男の元へ向かうことに決めた。


「セルヴィオラ家を代表して私が話すわ。今回は私も行く」


ターニャの声には、決意が強く込められていた。


◇ ◇ ◇


その日の夜、トーマスは夜這いしてきたマリア伯爵にそれとなく枢機卿のことを探り始めた。


「以前、伯爵は枢機卿たちを『必要だがムダな存在』と仰ってましたよね。本当にそうですかね? アビゲイル様もスカーレット様もみんなに尊敬されていて、国政を担う存在として期待されているみたいですよ?」


こう言えば彼女が不機嫌になるのは分かっていた。だが、この方に話を聞くにはこれが近道だ。痛みを伴うが・・・。


予想通り、いや予想を超えてマリアは襲いかかってきた。


ガブリ!


トーマスは耳を噛まれた・・・割と強めに・・・


「い、いたぁぁぁ!!!!」


「お前は本当にどこまでも下らない奴だな。あんな奴らはいてもいなくても関係ないんだよ。私から話を引き出したいんだろうが、枢機卿はやめとけ。アビゲイルもスカーレットもだ」


いつものようにトーマスに強めな「かわいがり」をするマリアだったが、今回は彼女の言葉に一層の真剣さがあった。


「あいつらの組織は大きくて信者はそこら中にいる。一度目をつけられたらお前ら姉弟は街中から監視されるぞ。中には狂信的な奴らもいる。何をするか分からん。教会の奴らを突つく時は十分な証拠を押さえてからだ。何をしたいのかは興味ないが何にしても時期尚早だ。一旦諦めろ」


それはトーマスたちのことを思いやっての言葉のようだった。

だが、彼もそこまで無垢でも従順でもない。姉からカルメサス家も何かしら関わっているかもしれないと聞かされた今はマリア伯爵が枢機卿に近づけたくない理由があるのかもしれないと考え始めていた。


「わかりました。やめておきます」


口ではそう答えつつも、枢機卿に当たることができないのであれば先代のカルメサス伯爵を調べる方向に思考を切り替えていた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

三姉弟が再集合して作戦を話し合いました。

教会関係者はトーマスが調べることになったが、マリア伯爵には止められました。

それは忠告なのか、はたして・・・


次回、ターニャはアンナたちと共に旅に出て妹の成長を目の当たりにします。

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