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第13話「ハンスの回顧」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

次の日の昼、ターニャとフェリックスは再び公園で落ち合った。

姿は見えないが、エミリーもどこかから監視しているのだろう。


公園には日差しが差し込み、木漏れ日が地面に影を描いている。フェリックスはベンチに座り、周囲を見渡していた。ターニャが公園の入り口から現れると、彼はすぐに立ち上がり、手を軽く挙げて挨拶した。


「孤児院はここから少し歩いたところにあります。さぁこちらへ」


以前のように、にこやかに話しながら歩くことはなかった。2人の間にはぎこちない距離が保たれ、どちらも顔を合わせようとはしない。まるで偶然、同じ方向に向かうだけの他人のようだった。足元の砂利が音を立て、木々の葉が風に揺れる音が2人の間に漂う沈黙をさらに際立たせていた。


挿絵(By みてみん)


やがて孤児院が見えてきた。

使われなくなった修道院を改装したという石造りの建物は、時の流れを感じさせる風情があり、ツタに覆われた外壁が歴史の重みをさらに強調している。玄関には古びた木製の扉があり、その前には小さな花壇が設けられていた。


「この孤児院はドウヴェイン侯爵によって運営されています。侯爵夫妻にはお子様がいらっしゃらず、その代わりなんでしょう、孤児に対する支援を幅広く行われているんですよ」


間を持たせる為にフェリックスは孤児院の説明をするが、ターニャの反応は鈍かった。


「そうですか」

ターニャは素っ気なく答えた。父の死の真相を知るかもしれない男、ハンスにこれから会うと思うと、自然と緊張が高まる。無意識に緊張していた。


フェリックスはその反応が気になったようだが、気を取り直して話し続けた。


「大変失礼だとは思ったのですが、ターニャさんは私の部下ということにさせていただきました。ハンスさんには身の上を話さない方が良いと思いまして、余計なことをしてすみません」

ターニャは彼の言葉に少しだけ顔を向けたが、何も言わずに頷いた。


ハンスは、若手のフェリックスが仕事場に現れたと聞いてすぐに出てきてくれた。


「おお、フェリックス。こんな所まで来るとは珍しいな。どうしたんだい?」

40代前半の彼は、白髪混じりの髪と深いシワの刻まれた顔で、実際の年齢よりも老けて見える。


「ハンスさん、いつも顔を出して我々若手の指導をしていただきありがとうございます。今日は新しい部下を連れてきました。そういえばボクも昔の聖騎士団のことを知らなくて教えられないなと思い、2人で教えてもらおうと」


「俺が聖騎士団にいたのはほんの数年だぞ? そんなのでいいのか?」

ハンスは不思議そうな顔をする。


「第12代団長ルーファスさんの話が聞きたいんです」

フェリックスの言葉にハンスの顔が一瞬硬くなった。


「…お前がルーファス団長のことを知るってのは、自分の家の痛い腹を探ることになるかもしれないのは分かって言ってるんだよな?」

彼の声には警戒が含まれていた。


「どう受け取られてもいいです。ルーファス団長に何があったのか教えてください」


フェリックスの眼差しは真剣そのものだった。

ターニャはその言葉に少し驚き、彼の横顔を見つめた。自分のためにここまで強く出るとは思っていなかった。


ハンスはしばらく沈黙していたが、やがて重い口を開いた。


「孤児院の仕事が終わってからにしよう。一杯付き合え。そのお嬢ちゃんも連れて」


ハンスの目はターニャに向けられていたが、彼女はその視線をまっすぐに受け止めた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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★あとがき★

フェリックスとターニャは微妙な状態のまま、ハンスが務める孤児院に行きました。

ここを運営するドウヴェイン侯爵はそのうち登場しますが覚えてなくていいです。


次回、ハンスは行きつけの酒場へ2人を連れていき、そこで昔の記憶を語り始めます。

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