第12話「フェリックスの血筋」 - 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
フェリックスは静かに語り始めた。
「ターニャさんは、セルヴィオラ家の生き残りの方だったんですね。さぞお辛い目に遭われたことでしょう・・・」
「ここにいるエミリーが私を救ってくれました。彼女がいなければ、私は生き延びることができなかったでしょう」
フェリックスに対する警戒と不信感を隠すことなく、エミリーの視線は鋭くフェリックスに向けられていた。
ターニャはさらに彼に尋ねる。
「フェリックス様はもう一つの事件のこと、ご存知ですか? 襲撃事件の前に王都で聖騎士団幹部の暗殺事件がありました。どちらも犯人は一緒だそうです。でも誰なのかは分かっていません」
その事件は彼の記憶の中でも特に鮮烈だった。
「第12代の団長・副団長が暗殺された事件ですね。その事件は聖騎士団に入ってから知りました。同一犯の仕業だったのですね」
突然、彼はある可能性に気づき、急に口をつぐんだ。考えが頭を駆け巡る。
「待ってください、ターニャさん。セルヴィオラということは…あなたは…」
ターニャの声はもう震えていなかった。
「はい。第12代聖騎士団長ルーファス・セルヴィオラは私の父です。私は父を殺した者を探しています」
フェリックスは、ターニャがこれまで自分の一方的とも言えるアタックを受け入れてくれていた理由を理解した。現役の聖騎士との繋がりを作り、そこから自分の父に起きた事件の真相を探るつもりだったのだ。しかし、彼はそれでも構わなかった。
フェリックスの記憶では現在の聖騎士団にその頃の団員はもうほとんど居なかった。事件から17年経っていて多くの者が引退している。しかし1人思い出した。
「ハンスさんはもう引退されてますが、グレース団長と同期入団で仲も良く、時々若手の指導をしに来てくださいます。彼なら当時のことを詳しく知っているかもしれません。たしか今は孤児院で働いてらっしゃるはず」
フェリックスはターニャ、そしてエミリーに素直な気持ちを話した。
「私がセルヴィオラ家断絶後に繁栄したマルトゥリック家の者ということで不信に思われるのは当然だと思います。私も何かが実際にあったのかを知りたいと思っています」
フェリックスは一度言葉を切り、自分の想いを確認するように胸に手を当てる。
「しかし、私のターニャさんへの想いは過去の事件とは関係ありません。私は貴女の助けになりたい。どうか私に協力させてください」
エミリーはもうターニャを止めようとはしない。彼女は覚悟を持った眼差しでターニャを見つめている。
ターニャはフェリックスを強く見つめ返し、告げた。
「ありがとうございます。ぜひお願いします」
フェリックスはその言葉に微笑み、わずかな安堵の表情を浮かべた。
「良かった。もっと貴女とお話ししたいのですがそろそろ宿舎に戻らねば同僚に疑われます。明日の昼またここで会いましょう。ハンスさんの孤児院へお連れします」
◇ ◇ ◇
フェリックスが宿舎へ帰ると、少ししてエミリーも立ち上がった。
「エミリーさん、どこへ?」
エミリーは冷たい声で答えた。
「姫様、私はまだあの方を信用していません。当面は彼を監視します。アンナ様にもそうお伝えください。それからもう一つ。フェリックスがおかしな動きを起こしたら・・・彼を殺します。ご承知ください」
ターニャは息を飲んだ。
その言葉は重く響き、彼女の胸に深く突き刺さった。主人が心寄せる人であっても必要とあらば排除する。彼女の忍者としての忠義・使命がその冷酷な判断を行わせていた。
言い終えると、彼女は公園を出て行った。その後ろ姿には、何があってもターニャたちを守るという覚悟が刻み込まれていた。
(第12話 完)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!
★あとがき★
フェリックスは事情を理解した上で協力を申し出てきました。
ターニャはこれに感謝して受け入れましたが、エミリーはまだ信用していません。
なかなか怖いエミリーの画像ができました。。。
次話、フェリックスの紹介でターニャはハンスのもとへ。