第12話「フェリックスの血筋」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
ターニャは膝から崩れ、地面にぺたんと座り込んだ。
フェリックスは驚いて手を差し伸べたが、ターニャはその手を取らず、声を震わせて尋ねた。
「フェリックス様…フェリックス様のご実家は鉱山の管理をされている、あのマルトゥリック家なのですか?」
フェリックスは目を見開き、少しぎこちなく答える。
「え、よ、よくご存知で。我が家がリダニウ鉱山の管理をしています。でもどうしてそんなことを…」
彼の声には疑念がにじんでいた。どうして一介の踊り子がそんな事を知っているのか。そして鉱山は彼が最も気にしている話。ターニャは一体何者なのだろう?
震える声でターニャは尋ねる。
「フェリックス様はセルヴィオラを…」
その時突然、場の空気を裂くように高い声が響いた。
「ターニャ!! いけませんっ!!」
2人が振り向くと、そこには公園の木陰に立つエミリーの姿があった。彼女はアンナの指示でターニャを密かに見守っていたのだ。エミリーは急いで駆け寄り、ターニャを強く抱きしめる。
「ダメです!」
フェリックスは戸惑いながら口を開く。
「あ、あの…貴女はターニャさんの…?」
「黙って、エミリー! フェリックス様、セルヴィオラ伯爵家という貴族をご存知ですか?」
その名前にフェリックスの表情は硬くなる。
「は、はい…リダニウ鉱山の以前の管理者はセルヴィオラ伯爵でした。しかしセルヴィオラ家は断絶となり、当家に役目が移ったと聞いています。ターニャさんはセルヴィオラ伯爵と関係があるのですか?」
恐る恐る聞くフェリックスだが、なんとなくその答えは予想がついていた。
「ターニャ…答えないでください。彼を信用できるのかまだわかりません」
その言葉を聞くことなく、ターニャはエミリーを振り解くと小さな声で答えた。
「セルヴィオラ伯爵は…私の祖父です…」
フェリックスは苦悶の表情で目を閉じた。
◇ ◇ ◇
フェリックスの心は過去の記憶に引き戻されていた。
彼がまだ幼い頃、鉱山の管理が移った時は3歳だった。
家中の者たちが何故か話題にしない鉱山の話。そのことに疑念を抱いた彼は、大きくなってから1人で調べ始めた。
そこで彼は過去に起きた凄惨な事件と、その後に繁栄を手に入れた実家の歴史を知った。
現在マルトゥリック家の当主は年の離れた兄ニール。父チャールズは事件の後に引退し、今は隠居生活を送っている。この世代交代が起きたのも事件のすぐ後だった。何もかもこの事件を契機に変わっていた。
フェリックスは家族の裏にある何かを探ろうとしていたが、証拠は何一つ見つからなかった。
彼は考えすぎだと自分に言い聞かせた。しかし、家族がその話題を避けるたびに、彼の胸の中の疑念は再び蘇るのだった。
そして今、賊に皆殺しにされたと聞いていたセルヴィオラの人間が目の前に現れた。しかもその人は意を決して愛を伝えた相手だった。
(続く)
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★あとがき★
ラブストーリーに割って入ったのは妹アンナが残しておいた忍者エミリーでした。
だいぶ過激な画像になってしまいましたが、ターニャが身元を明かすことはとても危険な為、すごい形相で割って入ってきたわけです。
次回、ターニャとフェリックスの会話はルーファス暗殺事件の話に及びます。