第12話「フェリックスの血筋」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
ドワーフ族の長老ボリンが教えてくれたエルドムイ家の長男が住む場所は、王都に近い森だった。次は間違いなく重い話になると考えたアンナは、先に王都に戻って姉ターニャと訪問することにした。
この決定にギルバートは意外な反応を示した。
「う、王都ルオハンジェに行くのか? それは厄介な話だな…私は王都の手前で離脱するとしよう」
アンナは何度も理由を尋ねたが、ギルバートは頑なに口を閉ざしたままだった。
「姉に会わなくていいのですか? さらに腕を磨いて強い剣士になっていますよ? ギルバートさんとお姉様の華麗な連携がまた見れると思って楽しみにしてましたのに・・・」
ターニャのことが気になるギルバートだったが、この誘い文句でも動かなかった。きっと、王都で何か問題を起こして近づけないのだろう。一体何をしでかしたんだか・・・
結局、ギルバートとはここで別れることになった。
◇ ◇ ◇
王都ルオハンジェ
王宮近くにある聖騎士団の訓練場そば。
突然現れたターニャを連れ出し、フェリックスは高まる心臓の鼓動を感じながら歩いていた。
銀色の鎧はガシャガシャと音を立て、まるで心臓の鼓動が音となって響いているかのようだった。
その音の中、ターニャは一言も話さず突き進むフェリックスが少し怖かった。怒っているのだろうか。
やがて王宮のはずれにある小さな公園に着くと、彼は立ち止まった。
その公園は夕方で薄暗く、人気もなく、大きな木々に囲まれていた。ここなら、誰にも聞かれることなく話せる。
フェリックスは振り返ってターニャをしばらく見つめると口を開いた。
「なぜ、なぜ、急に現れたのですか、ターニャさん? 前回、貴女が急に帰ってしまい、何か機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだと自分を責めました。もう会うことはできないとも思っていました。それが今になって急に!?」
彼は怒りとも混乱ともつかぬ複雑な顔をしていた。
ターニャはその言葉に彼の目を見ることができず、深く頭を下げた。
「その節は本当に申し訳ありませんでした。あの時、私は混乱していて…」
彼女は父の不審死を探る為に聖騎士に近づいているにも関わらず、フェリックスと過ごす時間をとても楽しく感じてしまった自分に気づき、焦り、動揺して立ち去ったのだった。
「あの状況? 何でもいいです。また会いに来てくれてとても嬉しいです。それがどんな理由だったとしても…」
そう言うとフェリックスはターニャの前にひざまずき、彼女へ心からの想いを伝えた。
「突然で、貴女の気持ちも考えておらず、失礼極まりないことは承知です。私、フェリックス・マルトゥリックは貴女のことを愛しています。好きで好きで仕方ありません。会えなかった時間が私に覚悟を問いました。でも気持ちは変わりません。どうかこの告白を受け入れてください!!」
ターニャは何を言われたのか、全く分からなかった。いや、それは嘘だ。理解している。しかし余りにも突然で予想しなかった告白にどうすればいいのか分からなかった。
「ま、待ってください!!」
それしか言えず彼女は頭の中で今の状況を必死に整理し始める。そこである言葉が引っかかった。
マルトゥリック
膝の力が抜ける。なんという運命のイタズラなのか。実家セルヴィオラ家が滅んだことで最も利益を得たマルトゥリック家の御曹子がここに居たのだ。
(続く)
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★あとがき★
遂にこの物語に愛の告白が登場しましたよ、と他人事のように思ってしまう著者です。
しかしその相手はもしかしたら父親を暗殺し、実家を襲撃した黒幕かもしれない、マルトゥリック家の息子でした。ロミオとジュリエット展開になってしまうのか、これは?
次回、まだ信じられないターニャは・・・