第10話「魔の鉱山」 - 7
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
ロヴァリンが旅の仲間に加わり、馬車は一気に賑やかになった。
「だいたいさ、火竜の巣に行かなきゃ卵なんてないでしょ?」
アンナはそもそもロヴァリンとの出会いに疑問を持っていた。
「そうなんだよねー。あそこの峡谷の洞窟の中を歩いてたら巣に着いちゃったんだよねー。アンナ、一緒に行く?」
「行かないわよっ!!」
「わー、怒られたよー! あははははは」
ヒステリックに怒鳴るアンナを見て、ロヴァリンは陽気に笑った。
彼女の案内で一行は、鉱山近くの宿舎村に立ち寄った。鉱山で働く職人たちが暮らすこの集落は、人間とドワーフでごった返している。
ロヴァリンは馬車から飛び降り、人混みをかき分けて進んでいった。慌ててアンナたちもそれに続く。ハーフドワーフの少女はまるで有名人のようで、すれ違うたびに声を掛けられていた。
「ここにしよっか。アンナだけ来て」
そう言うと、ロヴァリンは酒場の中に入っていった。店内にはドワーフしかおらず、ロヴァリンに続いて入ったアンナに一斉に視線が集まった。
「TAMAGO tha’dum darraan durkhta?」(「たまご」ってドワーフ語でなんて言うんだっけ?)
突然、ロヴァリンが振り返り、ドワーフ語でアンナに尋ねた。
「Eh, torben ghor? Durkht’naaz ven dor-rokh?」(え、「卵」でしょ? なんで今そんなことを?)
反射的にアンナもドワーフ語で答える。そのやり取りに店の客たちは顔をほころばせ、ロヴァリンに話しかけてきた。
「おかえり、ロヴァリン」
「今回の冒険では何か見つけたかい?」
カウンターの奥に座る1人のドワーフを見つけると、ロヴァリンはアンナを紹介した。
「ドルム爺、この子はアンナ。鉱山がどんなところか知りたいんだってー。教えてあげてー」
「初めまして、ドルムさん。リダニウ鉱山の歴史を調べています。ここが『魔の鉱山』と呼ばれてるのは何故ですか?」
飲んでいたグラスをカウンターに置くと、ドルム爺はニッコリ笑って話し始めた。
「もう100年近く前の話だ。鉱山で爆発事故があってな。それがきっかけでドワーフと人間が戦争になった。すぐに戦争は終わったが、双方に死者が出た。そんな悲しい歴史があって以来、ここを『魔の鉱山』と呼ぶ奴がいる。俺の仕事場に失礼な名前をつけてくれたもんだよ」
すると、少し離れたテーブルからほろ酔いのドワーフが立ち上がり、話に加わってきた。
「おいおい、ドルム爺の昔話には気をつけろよ! その話はお嬢さんが知りたい話とは関係ないだろう。時代が何十年もズレてるんだ。20年くらい前か? ここを管理していたセルヴィオラ家が賊に襲撃されて全員殺された。それでここが『魔の鉱山』って呼ばれるようになったんだよ!」
すると、他のドワーフたちが次々に反論し始めた。
「本当かあ? 俺は全然違う話を聞いたぞ?」
「働いても働いても仕事が終わらないから魔の鉱山って言うんだろ?」
次々にドワーフたちが混ざってきて持論を展開し始め、店の中は大騒ぎになってしまった。
収拾がつかなくなり、ロヴァリンはアンナを店の外に連れ出した。
「色んな話で盛り上がったねー。あ、そうだ! あたしのお爺ちゃんにも聞いてみよっかー」
当てにならない話をたくさん聞かされてアンナは疲れた表情を見せた。
「いや、もういいや。なんだかよく分からなくなってきたわ。それよりドワーフ族の長老に会えないかな?」
「だから! それがお爺ちゃんだってば」
「え、そうなの!?」
(第10話 完)
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★あとがき★
リダニウ鉱山近くまで来て宿舎村で聞き込みを行う回でした。
端的に書こうとしたら最初の頃のようなセリフ多めの淡々とした文章になっちゃったかなと後悔。でも第10話はもうこれ以上長引かせられないのでね。
★この世界・物語の設定★
ドワーフは話好き。
次話、アンナはドワーフの長老に会い、鉱山で起きた本当のことを知ります。