第10話「魔の鉱山」 - 6
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
アンナたちは迫り来る火竜たちとドワーフと対峙…せざるを得ない状況にあった。
宿屋の前では、人々が竜の到来に驚き、騒然となっていた。建物に逃げ込む者、馬で逃げようとする者、峡谷を駆け降りようとする者——その場は大混乱に陥っていた。
ジャイルズたち商人は銃を準備していたが、誰もが竜を見るのは初めてで、不安な表情を隠せないでいる。
アンナとギルバートは急いで対策を話し合った。
「我々の魔法で竜を倒すのはたぶん無理だ。特に火魔法は効かない。アンナ殿の風魔法で竜を飛べなくするしかないだろう」
「わかりました。でも飛べなくなってもこっちに向かってきそう…」
アンナは話しながら自分の手が震えている事に気づいた。かつて姉弟で旅していたときは、どんなに大きな魔物が現れても、姉が先頭に立って守ってくれた。しかし今、その姉はいない。自分自身でなんとかしなければならない。
そのとき、ジャイルズがやって来た。
「銃の準備はできたが、撃てるのはおそらく一回だけだ。撃った後に次の弾を込める時間はないだろう。アンナ、魔法で何とかできそうか?」
「いや、魔法では倒せない。名案を思いついた。竜が追っているのはあのドワーフが抱えてる大きな卵だ。あれを竜に返せば奴らは帰っていくかもしれない。作戦はこうだ」
ギルバートの作戦に従い、全員が配置についた。
アンナは赤土の丘の一番高いところに立ち、詠唱を始めた。目の前の広い空間が一瞬歪んだように見え、次の瞬間大きな風の渦が生まれた。
その渦はどんどん大きくなり竜たちの方へ向かっていく。
忍者の2人が丘を降りてドワーフに向かって走っていく。
アンナの横でギルバートも気を集中させ始めた。氣魔法を使うつもりだ。
風の渦は火竜たちを飲み込んでいく。
空を飛ぶ竜たちはバランスを崩してよろめき始めた。これでドワーフに追いつくことはできないだろう。
アンナは逃げ続けるドワーフに向かって大声で叫んだ。
「Ranghir yaun torben ragish!!」(その卵を竜に返して!!)
ドワーフの少女は走りながら叫び返してきた。
「Eh? Na’raagi? No, ramnogh!!」
その言葉にアンナはカッとした。
「はあ!? 嫌って何よ、あのドワーフ!!」
「話しても無駄か。では私に任せろ」
ギルバートは集中させた気をドワーフに向かって放った。するとドワーフは足をすくわれたように一瞬浮き上がると前のめりになって転んだ。抱えていた卵が地面に落ち、丘を転がっていく。
火竜たちはすぐにそれに反応し、地上に降り立った。
竜が卵に気を取られている間に忍者たちがドワーフを抱えてその場から離れる。
事態はギルバートの思惑通りに進んでいた。
火竜たちは卵を無事に回収すると、こちらには目もくれずに去っていった。
「帰ってくれたか。いやあ良かった。あんなにデカい空飛ぶ竜を見たのは初めてだ。心臓が止まりそうだったぜ」
ジャイルズはカウボーイハットを取り、自分を仰ぐ。嫌な汗が滲んでいた。
ドワーフの少女は忍者たちに脇を抱えられて、丘の上まで連れてこられた。宙に浮いたまま彼女は話し始めた。
「いやー、驚いたー。卵が綺麗だから持って帰ったら、あの火竜たちが怒って追いかけてきて…」
すかさずアンナが噛みつく。
「当たり前でしょ! 自分たちの子供を奪われたら、必死に取り返しに来るに決まってるわ!」
そうだよね、とドワーフの少女はケラケラ笑った。危機意識に大きなギャップがあるようだ。
「ともかく、ありがとうございました! 私はロヴァリン。ドワーフじゃなくてハーフドワーフ。半分はあなたたち人間と一緒よ。あの…もう降ろしてくれる? 皆さんに御礼を言いたいの」
地面に降ろされると、ロヴァリンはみんなに握手を求め、挨拶して回った。どこまでも陽気な性格のようだ。
特にアンナは気に入られたらしく、何度も握手をされ、ハグまでされた。
「ロヴァリン、あんまり無茶な事しないでよ。ところで私たちリダニウ鉱山を目指してるんだけど、どんな所か知ってる?」
するとロヴァリンはニヤリと笑い、こう答えた。
「ふふん、そこで働いてるドワーフは全員知り合いよ。偏屈なお爺ばっかりだけど紹介してあげるわ。私についておいで!」
(続く)
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★あとがき★
この画像のロヴァリン、めっちゃ可愛くないですか?
前回の生成画像とはだいぶ印象違うけど愛おしすぎて採用しちゃいました。
これまで登場してなかったドワーフたちとのコミュニケーションが始まっていきます。
次回、遂にリダニウ鉱山の到着。そこで聞けた昔話がなんだかおかしいぞ!?