第10話「魔の鉱山」 - 5
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
馬車隊はその後も大群の魔物に遭遇したが商人たちの銃のお陰で難なく排除していった。
やがて現れた峡谷を指差してジャイルズは提案した。
「一番上に見晴らしの良い宿がある。あそこで鉱山の位置を再度確認しよう。イノシシたちと戦っているうちに予定のルートから逸れてしまったみたいだ」
乾いた大地を踏みしめ、馬車隊は峡谷をゆっくりと登っていく。巨大な岩壁が両側にそそり立ち、赤茶けた岩肌が太陽の光を反射して輝いている。車輪が砂と岩を噛みしめる音が静かな峡谷の中で響き渡る。
数時間後、馬車隊は最後の岩場を乗り越え、頂上に辿り着いた。振り返ると険しい峡谷が遠く下に広がっている。高地に吹き抜ける風は、下界の焼けつくような暑さとは異なり、心地よい涼しさを帯びていた。
視線を前方に戻すと、そこには小さな宿屋がぽつんと建っていた。
石造りの建物は、長年荒原を吹く荒々しい風に耐えてきた事が窺える。その周囲には数本の木々が風に揺れていて、宿屋の外には旅の休みを癒すカフェが設けられていた。
建物に沿って置かれた木製のベンチでは旅人たちが長旅の疲れをお茶と甘味で癒していた。
ジャイルズ商会の面々はここの常連のようで、店主や旅人たちに挨拶をして回っている。アンナたちも馬を休ませてカフェに立ち寄った。
アーノルドが急に鋭い目つきになってある旅人を睨んだ。その動きに気づいたジャックはアンナを自分の後ろに隠す。2人ともマントの中で短剣に手を掛けている。
「どうしたの?」
「あそこの者が先ほどから姫様をじっと見ています」
教えられた方を見ると、ちょうどその旅人が立ち上がってこちらに歩き出したところだった。
2人がさらに警戒を強める。
「数年ぶりだな。剣士ターニャも一緒なのか?」
「あなたは…ギルバートさん?」
話しかけてきたのはボロボロのローブを纏った魔法使いギルバートだった。彼はここから遠く離れたヴァーレルソルイの町の冒険者ギルド参謀にも関わらず、ギルドに何も言わずに一人で旅に出てここに行き着いたのだという。
「あの時の妹さんが姉弟と分かれて旅をしているとは見上げたものだ。よし、私が着いていってやろう」
「いえ、お申し出は誠にありがたいのですが遠慮いたします。今回は少々込み入った事情の旅なので」
ギルバートの魔法は確かな戦力として頼りになるが実家の過去の話を聞かれたくはない。
「そう言うな、アンナ殿。ほら、こちらに火竜が向かってきている。力を合わせないとこの宿屋も我々も生き残れないぞ」
ギルバートはアンナたちが登ってきた峡谷とは反対側の空を指さした。赤土に覆われた丘の上をこの距離でも大きく見える赤い竜が2頭、こちらに向かって飛んできている。
「げ」
火竜に気づいた旅人たちが慌てふためき宿屋の中に逃げ込んだ。しかしギルバートの言う通り、火竜に襲われたら宿屋ごと木っ端微塵にされかねない。
「何かを抱えてこっちに走ってきている、あれはドワーフかな? あいつが火竜に追われてるようだな」
この緊急事態になぜそんなに冷静なのか。
「こっち来ないでよ!! あのドワーフなんなのよー!!!」
アンナの悲痛な叫びが峡谷に響き渡った。
(続く)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!
★あとがき★
第1部以来久しぶりのギルバートさんとともに今回はファンタジーっぽく竜やドワーフが登場しました。
次なるキーマンがトラブルを持って乱入してくるという王道ストーリー展開はこれまでやって来なかったのですが話の最後にもオチがついて次に繋がって、王道だけあっていい感じの構成になりますね。
★この世界・物語の設定★
空を飛ぶ竜が存在する
次回、火竜に襲われた一行をギルバードが奇策で守る!