第10話「魔の鉱山」 - 4
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
赤土が一面に広がる果てしない荒原を馬車隊は進んでいた。草木もまばらで、空には灰色の雲が漂う。私たちの馬車が巻き上げる土煙は遠くからもはっきりと見えるだろう。こんな見通しの良い場所では、襲撃を受けたら守りにくいと、私は警戒心を強めた。
「土煙が上がるのは相手も同じだ。だから全方位を遠くまでよく見ておくのが大事なんだ」
商人たちは望遠鏡を手にし、遠くの景色をじっと見張っていた。その中の一人が、突然、前方の地平線に小さな土煙が上がるのを見つけた。「何か来るぞ!」
私は身を乗り出し、土煙の方を睨むが、土煙が見えただけだった。
「あれはイノシシの魔物ですね。3頭のようです」
驚いた。ジャックさんは望遠鏡もなしにあんな遠くが見えるの!? 忍者の能力、恐るべしだわ。
土煙が少し横に流されている。多少風が出てきた今なら風魔法が使える。
「こちらで対応しますわ!」
私たちの馬車は隊列を離れて土煙のほうへ向かった。
「風の精霊セレティスアよ!大地を巻き上げ天高く投げ放て!」
詠唱にイノシシの魔物たちの周囲の空気が反応して鋭く渦を巻く。その渦は瞬く間に勢いを増し、凶暴な竜巻となって魔物たちを空高く舞い上げた。
イノシシたちは地面に叩きつけられ、失神したところをアーノルドが鋭くとどめを刺す。私たちの連携もだいぶ良くなってきた。
ものの数分でイノシシたちを撃退して戻ると、ジャイルズ商会の方々は拍手で迎えてくれた。
「見事なもんだ。さすが魔法使いだな! 若いお嬢ちゃんだと侮ってたよ、アンナ」
えへへ、魔法を褒められるのはいつでも嬉しい、もっともっと褒めて!
◇ ◇ ◇
イノシシたちを余裕で撃退し、意気揚々としていた私たちの前にさらなる膨大な量の土煙が迫ってきた。
「今度はかなり多いぞ! 俺たちも迎撃準備だ! 馬車を止めろ!!」
ジャイルズさんの号令で一斉に馬車が止まり横に並べられた。商人さんたちが荷物から取り出したのは…なにあれ? 長い棒のような・・・筒?
「初めて見るかい? これは銃だ。俺たち素人でも戦える武器だ。こいつは弓矢よりも遠くの敵を撃つことができる。見ててくれ」
は? そんな遠くの相手を攻撃できるってこの方たち本気なのかしら? 信用できないから大きめの魔法を用意しよう。これだから素人は頼りにならないのよ。
「風の精霊セレティスアよ、我が呼び声に応え、天地の狭間に舞い降りよ。空の囁きと大地の息吹を束ね、その力を…」
ドゴゴゴゴゴゴ!!!
ものすごい音が辺りに響き渡った。商人たちの銃が一斉に火を噴いたのだ。
何が起きたの? 耳がキーンとなってよく聞こえない。
商人たちが笑顔でハイタッチをしている。
終わ…ったの…?
周囲を見渡すと、土煙は消えていて、魔物の気配もなくなっていた。
ジャイルズさんが私の肩を叩いた。
「どうだ!見たか? これが銃の威力だ。イノシシの魔物を跡形もなく消し去ってやったぜ!!」
ジャックさん、アーノルドさんは驚いた表情のままで固まっている。
「なんてすごい武器だ…」
今や特別な訓練が必要な弓や魔法が使えなくとも、一般市民も戦える時代が到来した。そう商人さんたちは勝ち誇った様子を見せた。私たちはぐうの音も出なかった。
(続く)
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★あとがき★
第1部でちらっと会話に出た銃が登場しました。この世界では既に銃が開発されていますが、とても高価なので冒険者などは持っていません。でもしっかり稼いでいる商人は違います。彼らは銃を手に入れ、自分たちで戦えるようになってきている。そんな場面を今回は描きました。
★この世界・物語の設定★
銃は開発されているが非常に高価。
次回、久しぶりの仲間が登場します。これを思いつくとは自分でもびっくり。