第10話「魔の鉱山」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
それがドアをノックする音だと分かるのに少し時間が掛かった。私もお姉様と一緒に寝入ってしまっていた。
もう辺りはすっかり夜で外は静か。開いたままの窓からは少し冷えた空気が入ってきていた。
コン、コン。コン、コン。
起き上がろうとして気づいた。あのまま抱き合って床で寝ちゃったもんだから膝の上には静かに寝息を立てて眠るお姉様がいた。
「ターニャ様、アンナ様、大丈夫ですか?」
ドアの向こうの声の主はエミリーさんだった。
えーと、どうしよう。彼女に聞こえるように返事をするとお姉様を起こしてしまう。
黙ったまま悩んでいると、カチャっと鍵の音がすると共にドアが開いて、警戒した表情のエミリーさんが入ってきた。さすが忍者、家の鍵くらい簡単に開けてしまう。
「あ、アンナ様。ご無事ですか? もしかしてターニャ様は負傷されて…」
違う違う!と両手を振って否定する。
「ちょっと疲れて寝てしまっただけよ」と小声で説明した。
「それより明日の朝、とびきり美味しいモーニングを作ってきてくださらない? ほら、私は料理とか全然できないから・・・」
お姉様には美味しい物を食べて元気を出して欲しかった。
意を察してくれたのか、エミリーさんは頷くと足音を立てずに部屋を出ていった。
カチッと音がした。鍵をかけ直したのだろう。
再び静寂に包まれた部屋は、私の眠気を呼び戻し始めた。
それでもなんとか手を伸ばしてベッドから布団を取りお姉様と自分に掛けると、私は滑り落ちるように再び眠りに落ちていった。
◇ ◇ ◇
空が淡い明るさを取り戻し始めた頃、ターニャは頬を撫でる冷えた空気に目を覚ました。
自分はアンナの膝の上で寝ていた。布団が掛けられている。
アンナは膝枕をしたままベッドに寄りかかってだいぶ無理な姿勢で寝ていた。
「あ・・・私、昨日あのまま・・・」
妹に泣きついてそのまま床で寝てしまった事を理解し、恥ずかしい気持ちになる。そっと起き上がり、布団をアンナに掛け直した。
その時、階段を上がってくる足音が聞こえた。
2人来る。無意識に腰に差したダガー(短剣)に手が行く。
「おはようございます!お嬢様方、もう朝ですよ! 起きてください」
ドア越しにエミリーの元気な声が響く。
どうしたんだろうと思いながら開けると、声以上に元気な笑顔のエミリーとジャックがたくさんの料理を持って入ってきた。
寝ぼけながらも起き上がったアンナは料理に駆け寄り「わあ! それはなんですか?」と妙にはしゃぎ始めた。
ターニャが訳を尋ねる間もなく、ジャックがテーブルクロスを広げ、用意してきた料理を次々並べていく横で、エミリーは「ちょっとお借りしますね」と暖炉に火を入れるとスープを温め始めた。
今朝採れたばかりの野菜のサラダ、トマトが混ざった卵焼き、野菜のスープ、ハーブソーセージ、リンゴ・梨などのフルーツとお祭りのように賑やかなラインナップだ。
「さあ、冷めないうちにお召し上がりください。エミリーと早起きして作ったんですから残しちゃダメですよ?」とイタズラっぽく笑うジャックに思わずターニャも愛想笑いしたが、この量、食べ切れるだろうか…
(続く)
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★あとがき★
この回の前半はアンナ視点ですが、第1部の頃の暴走する妄想の語りではなくなりましたね。
自分の死に戻り転生を姉に告白してから変わったのですがちょっと極端だったかなと思いつつもこのまま行きます。
後半は神様視点。ターニャ視点の語りは第3部まではしないつもりです。
次回、満腹になった姉妹は心の内を語ります。
通信環境厳しかったり色々起きてますが何とか更新してますね私。。。