表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/259

第9話「失われた家族」 - 4

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

感傷的な反応がロジャー侯爵からは得られない。そうした反応が少しでも見えればそこから切り崩していけると踏んでいたのに。


「それは大変失礼いたしました。人づてに聞くのはダメですね。やはり関係者に直接話を伺わないと真実は分からないと改めて思いました。次の質問です。リリー様が亡くなられた事件の後にもう一つ事件が起きました。もう一人の姉君、アビゲイル枢機卿がラルフ聖騎士団長に襲われた事件です。この襲撃は他の聖騎士団員に阻止されて未遂に終わりましたが、危うくアビゲイル様も殺されてしまうかもしれませんでした。この事件について何かご存知ですか?」


ロジャーはこの質問にも表情を変えず、よく撫でつけられた髭を触りながら淡々と答えた。


「貴殿が調べられた事と同じように私も記憶しています。姉は今も枢機卿の責務を全うしております」


アビゲイル様が健在なのは知ってるよ! そうじゃなくて殺されかけた姉に対する心配とか当時の話とか無いのかよ!!


心の声が思わず口を突いて出てきてしまいそうになった。落ち着け、トーマス。


「アビゲイル様が襲われた理由が気になっています。あの方の性格や周囲の評判・世間の噂などから何か思い当たりませんか?」


評判や噂などには興味ないだろうと分かっていたが、あえて変な質問にしてみた。


しかしロジャーには全く通用しなかった。


「姉アビゲイルはベレンニア王国と教会の為に身を賭しています。その使命を果たす過程において時には危険な目に遭うこともあるでしょう。姉もその覚悟はできています」


暖簾に腕押し。そんなことわざを思い出した。

彼にとっては全ては必然、そこに嬉しいも悲しいも怒りも不安もない。


落胆が顔に出たのだろうか。初めてロジャー侯爵のほうから話しかけてきた。


「聞きたかった話を手にすることができませんでしたか。私から一つ申し上げるならトーマス殿、あなたはクロワ家を全く分かっていない。あなた方のように数年、数十年といった視野で生きている訳ではないのです。ましてや姉個人の人生がどうあって欲しいか等という矮小な思考など当家の人間は誰も持ち合わせていません。当家が代々聖職者を輩出しているのはそれが伝統だからではないのです」


「そ、それではクロワ家は一体どんな使命を背負っているのですか?」


なんとか聞けた質問はこれだった。


「それを知りたいと思ったのであれば是非とも国教会の聖書をお読みください。聖書が示す世界の実現の為にクロワ家はあります」


圧倒されて何も言葉を返すことができなかった。ロジャー侯爵は無表情のまま立ち上がる。


「玄関までお送りします。またいつでもお越しください」


そう言うと自ら部屋のドアを開けて俺を外へ促した。出ていくしかない。ロジャー・クロワからは一切情報を引き出すことはできなかった。

分かった事といえばクロワ家は普通の貴族とは全く違う異質な存在だということ。


俺は悔しさと無力感に押し潰されたまま、クロワ侯爵邸をあとにした。


俺が門を出て視界から消え、玄関を閉じながらロジャー・クロワはこう呟いていた。


挿絵(By みてみん)


「トーマス、あなたは姉上の崇高な志を一生理解することはできないですよ」


(第9話 完)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

2話に渡るロジャー・クロワとの会談でしたが、17年前の事件に関する事は分かりませんでした。最後のロジャーの台詞「姉」とは誰を指してるんでしょう?作者も決めてるような決めてないような部分ですw


家族との別れは2つの家で大きく違うものでした。

次話、主人公は妹アンナに移り、事件の元凶とも言えるリダニウ鉱山に踏み込んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ